「消しゴム貸して」

唐突なキバの頼みに、特に何の疑問も持たずにヒナタは自分の消しゴムを差し出した。まだ買ったばかりの、真新しい消しゴムだ。
それを受け取ったキバは何故かくるりと背を向けて、何やらごそごそと作業をし始める。不思議に思ったヒナタが手元を覗き込もうとするが、しかしキバが再び振り返る方が先だった。

「ちゃんと、最後まで使い切れよ」

それだけを言い残して、礼の言葉一つもなくキバは去っていったのだった。
手のひらの上の消しゴムを眺めながら、ヒナタは首を傾げる。結局、今のは何だったのだろう。疑問は疑問のまま、それからしばらくが経った。
後日、たまたまカバーを外した消しゴムにでかでかと『犬塚キバ』とマジックペンで書かれていたのを発見したヒナタが、それを使い切った頃にキバに告白をしたのはまた別の話である。


▽好きな人の名前を書いた消しゴムを使い切ると…っていう例のおまじないのアレです何かすいません


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