彼と居る時常に意識しているのは、自分が幸せそうに見えているかという事。私は慎重に幸福を口ずさみ、周到に愛を囁く。そうでもないと、いつか暴かれてしまいそうで怖いから。彼に、アイツに、そして、私自身に。


「結婚、するんだってな」

久し振りの休暇の夜、同期との飲み会に珍しく姿を現した幼馴染みは、開口一番そう切り出した。

「良かったな」
「ん、ありがと」

私の隣に腰を下ろすと、その男──シカマルは、私の徳利に日本酒を注ぎ入れた。続いて、自分の分も手酌する。普段なら、上司から無理矢理勧められでもしない限り、進んで飲もうとしないのに。何時にもない、珍しい光景だった。

「…それにしても、あの親父さんが良く賛成してくれたな」
「まぁ…結局、パパは私に甘いから」

娘は誰にもやらん、と公言して憚らなかった父が、今回の結婚に関して何一つ口出しをしなかったのは、他の誰よりも私を一番に理解してくれているからだ、と思っている。幸せになりなさい。父が私に言ったのは、唯一この言葉だけ。咎めもせず嘆きもせず、ただ静かに微笑む父は、私に対して本当に甘いのだ。

「それに、山中の婿として申し分ないもの。寧ろ勿体無いくらいよ」
「おーおー、早速のろけか」

まるで何かに追い立てられるように、目の前の男は次々と杯を空ける。ちょっと、大丈夫なの。余りに乱暴な飲みっぷりに、流石に心配になって声を掛けると、不意に視線がかち合った。細められた黒褐色の瞳は、アルコールのせいか少し潤んでいる。ざわざわと、寒いような暑いような気味の悪い感覚が、背筋をひた走ってゆく。
シカマルが、ゆっくりと口を開いた。


▽これ以上続かないし続いたとしても鬱展開しかないシカいの未来捏造系



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