花の蜜に似た甘い匂いの中に、苦く燻るような臭いが混じっているのに気が付いた。

「…誰かと、居たのか?」
「えっ、どうして?」
「臭いがする」

キバくんにはすぐ分かっちゃうね、と微笑むその穏やかさが、今は憎たらしくさえある。こっちは嫉妬心でどうにかなりそうだってのに。

「さっきまでね、シカマルくんと話してたの」

聞けば、俺達が待ち合わせる場所に来る途中、偶然シカマルと会ったという。そのまま待ち合わせ場所まで歩きながら、たったさっきまで世間話をしていたらしい。

「臭いってことは、煙草かな?話してる時も吸ってたから」

相変わらず朗らかな様子の彼女を引き寄せて、ぎゅうと抱き締めた。一瞬呆気にとられたようだったが、やがて腕の中でもがき出す。

「キ、キバくんっ!誰かに見られちゃうよ…」
「少しじっとしてろって」

長い髪に鼻を寄せれば、独特の焼け焦げた臭いが一層強くなる。どんだけ接近してんだよ、あの野郎…後でぶっ飛ばす。

「今、移してる途中だから」
「え…何、を?」
「俺の匂い」
「…っ!」

爆発しそうな程顔を真っ赤にして、それきり黙り込んだ彼女の身体からは、既に煙草の臭いが薄れ始めている。それを上書きするかのように強く香る自分の匂いに、思わずにやりと笑みを零した。


▽嫉妬深い犬塚ネタ+においネタ=どうしてこうなった



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