どんなに優秀でも、人間一つくらい弱点があるものだ。数学の問題集を前に、困り果てた顔をする彼女を見ながら、そんな事を思う。

「どうしよう、全然分からない…」
「どれが?」

逆に言えば、どんなに駄目な人間でも、一つくらい得意な事があるもので、俺の場合はそれが数学だったという訳だ。

「これ、さっきの公式使うんじゃねぇの」
「え、え…何で?どうやって解くの?」

それにしても、他の教科に関しては教えてもらいっぱなしの立場の自分が、彼女に勉強を教えているというこの状況は、何だか面白い。それに、お手上げとばかりに眉を下げている彼女は、とんでもなく可愛らしかったりする。

「教えてやってもいーけどさ、報酬が欲しいよな」
「え…?」

ずっと数式に向けられていた顔が上がって、大きな瞳がこちらを見つめる。言葉の真意を悟られない内に、素早く触れるだけのキスをした。

「キ、キバくんっ!」
「よっし、じゃーまずこの式を展開してー…」

先生役ってのも、たまには悪くないもんだ。


▽キバは意外と数学のセンスありそう。感覚で問題解けちゃう


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