形の良い彼女の唇が、他の男の話で忙しなく動いているのをぼんやり眺めていると、くすり、と彼女が唐突に笑みを零した。
「何だよ、急に」
「それ」
その指が示すのは、俺が手にしているコーラの入ったグラス。それがどうしたと聞き返すより先に、彼女がグラスからストローを持ち上げた。
「ほら、ぐにゃぐにゃになってる」
「あー…」
噛み過ぎて飲み口が潰れたストローは、最早本来の役割を果たせない程になっている。
「癖なんだよなぁ、昔っからの」
「ふふっ…何だか、キバ君らしいね」
そしてまた、彼女はこの場にはいない男の話を始める。俺はそれに適当に相槌を打ちながら、気が付けば再びストローに齧り付いているのだった。
▽ストロー噛む癖って、あれは何でなっちゃうんでしょうかね