じんわりと汗を浮かべて、苦しそうに肩で呼吸する彼の姿は、風邪を引いた幼子を連想させる。何時の事だったか、珍しく熱を出した小さな妹を看病した記憶が、不意に蘇る。

「キバくん」

触れた彼の頬は、あの時の妹と同様に、炎に照らされたかのように熱かった。冷たくて気持ち良い、と手のひらに唇を寄せて、彼が言う。

「ふふっ…」
「何で笑うんだよ」
「ううん、何でもない」

ハナビも同じ事を言ったから、とは言わなかった。その実とても良く似ているのに――いや、だからなのか、全く反りが合わない二人はきっと、酷く嫌がるだろうから。これは、私だけが知る小さな小さな秘密。この先も、知っているのは私だけいいと思った事も、私だけの秘密だ。


▽雰囲気だけえろ


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