「私、赤丸が羨ましいな」

ふわりふわり、頭を撫でる手の温かさに浸っていると、ヒナタが唐突にそんな事を呟いた。ヒナタもたまには冗談を言うんだなぁ、と意外に思って、僕は気持ちよさにつむっていた目を開く。するとそこには、何故か思い詰めた顔をしたヒナタが、じっとこちらを見つめていた。

「くぅん…?」
「ごめんね。びっくりしちゃったよね、変な事言って」

あんまり悲しそうな顔をするので心配になるけれども、忍犬の僕は悲しみの理由を聞き出す事も、慰めの言葉を掛ける事も出来ない。せめてもの思いでそっと身を寄せれば、ヒナタはありがとう、と言って抱き締め返した。

「…赤丸みたいに、キバ君の近くに居られたら、良いのになぁ」

ぽつりと零れた言葉は、僕を酷く拍子抜けさせた。なあんだ、そんな事だったのか。だったら、僕が心配する必要なんてない。
だって、ね?

「――おい」
「きゃっ!」

振り向けば、居心地悪そうにしているキバが佇んでいた。僕は静かにその場を立って、二人から離れる事にする。それでも、小さな物音まで聞き分ける僕の耳は、その後の二人の会話をしっかりと聞き届けていた。

「――あの、キバ君…?」
「俺も…赤丸が、羨ましい」
「え…?」
「だから、何つーか…お前と同じって事だよ」

人って、恋って、不思議だなぁ。面白いなぁ。
僕はいつにもなく愉快な気分になって、わぉん、と空に向かって一吠えした。


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