がぶり。
本当にそんな音を立てて、首を噛まれた。犬やら猫やらではない、人間に、だ。しかも女。つーか、幼馴染に。

「まずい」

痛みにこちらが声を上げるより先に、相手の方がそう言って舌を突き出したものだから、すっかり抗議するタイミングを見失ってしまった。

「…美味いとでも思ったのかよ」
「だって、こんな変な味だと思わなかったんだもの」

じとっ、と恨めしそうにこちらを睨む。どうして俺が責められなければいけないのか。ますます訳が分からない。

「あ、」
「今度は何だよ…」
「血が出てる」
「マジかよ」

噛まれたのは背中に近い部分なので、いくら首を曲げてみても、自分からは見えない。

「平気よ。ほんのちょっとだし」
「お前なぁ…」

その後に続く筈の言葉は、溜息と共に呑み込まれた。生温かい感触は一瞬で肌をよぎり、それでいて、いつまでもじりじりと傷口を焦がす。

「舐めとけば治るでしょ、それくらい」

絶対にそういう問題ではない。そうではないが、今となっては最早どうでも良い話だった。腕を取って、鼻先が触れ合う距離まで引き寄せる。くるり、と翡翠色の瞳が閃く。

「あら、その気になっちゃったー?」
「…やられっぱなしは、趣味じゃねえからな」
「ふふ、何それー」

酷く愉快そうな囁き声が、耳を擽る。それに構わず抱きすくめて、一際白い項に狙いを定める。さっき自分が噛まれた所と同じような場所に口付けると、手加減もなく歯を立てた。
がぶり。


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