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キミはボクをアイシすぎてル。
【あらすじ】
編入生が同室になってから始まったストーカー行為に、精神の限界を感じた未智(ミチ)は親友に助けを求めるが…


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「ひっ!?」

 朝学校へ行くと、僕の上履きに何か入れられていた。
 それはバラバラと散って床に落ちる。

「未智、おはよう。…未智?」
「友也っ」

 僕はクラスメイトであり、親友でもある友也に泣き付いた。

「まただ!また“アイツ”がっ!」

 友也は床に散ったそれに気付くと、一枚を手に取り眉間に皺を寄せた。

「クソッ、一体どこのどいつなんだ!?」

 友也の手に取られた一枚の写真。そこには盗撮としか思えない、僕の姿が映し出されていた。床に散ったどの写真にも僕が写っていて、中にはどう考えても部屋の中に侵入したと思われる物まで混ざっている。

「もうヤダッ、もう嫌だよぉッ!」

 このストーカー行為が始まったのは、三ヶ月ほど前からになる。
 入学してから数ヶ月で同室者が転校してしまってからと言うもの、二年に上がるまで一人部屋として過ごしていた。
 だが、二年に上がった時に編入生が入って来たのだ。そして僕の同室者となったのだが…それから突然ストーカー行為が始まった。

「落ち着けよ未智、な?」
「でも、友也ぁ」
「俺が絶対に何とかしてやるからさ」

 誰もが見惚れるその微笑みに、僕は状況も忘れて思わず見惚れた。




「なぁ、加賀山」

 話しかけてきたのは例の同室者、丹羽くん。
 丹羽くんは入学して早々、生徒会役員達から求愛を受けていて引っ張りだこ。
 部屋にいることが殆んど無く、同室者と言ってもあまり関わったことも話したことも無かった。

「な、なに?」

 友也の話によれば、もしかすると僕へのストーカー行為は丹羽くんと同室である事を妬んだ生徒会役員達の仕業ではないか、との事だった。
 また、もしくは丹羽くん本人か。
 どちらにしても要注意人物である彼の存在は、僕を大いに脅かしていた。

「なぁ、お前って九条友也と仲いいんだろ?」

 何故、丹羽くんがそんな事を気にするのだろうか。

「あのさ…お前、大丈夫なの?」
「え…?」
「何か変なこととか、されてない?」

 何で急に友也のそんな話になるのだろうか?この人は、友也の何を知ってると言うのだろうか?
 僕は思わずカチンと来た。

「急に、何なの…?」
「いや、あの、」
「失礼なこと言わないでよ! 友也は僕を守ってくれてる! 君たちの嫌がらせからもね!? もしかして君、友也のことまで欲しいの!?」
「え!? ち、違ッ」
「もう僕達に関わらないでっ!」
「加賀山っ!!」

 気付けば走り出していた。
 この数ヶ月の間で、とんでもなく怖い思いもしたし、何度も身の危険を感じた。
 けど、何時だって友也が駆け付けて来てくれて、助けてくれたのだ。
 そんな友也を悪く言うなんて…、いや、やっぱり僕から友也を奪うつもりかもしれない。

 僕は悔し涙で顔を濡らしながら、寮の自室へと戻った。
 そして、再び恐怖へと落とされる。

「ひっ、な…なんで…」

 荒らされた自室。
 部屋の中に充満する独特な臭い。

 物は薙ぎ倒されぐちゃぐちゃで、臭いはベッドから発されていた。
 朝出る前に整えたはずのシーツは、白濁した生臭い液体に濡れている。

「いやっ、嫌ぁあぁあっ、友也ぁ!!」



 ◇



「ほら、未智…泣き止んで?」
「ひぅ、えぐ、えっ、え」

 友也の腕の中は酷く安心出来た。
 優しく撫でられることで余計に涙は溢れ、友也の服を濡らしている。

「未智、この部屋はもう危ないし、こんな事された部屋には居たくないでしょ?」

 穢された部屋。
 綺麗にしても、まだ何か残っている気がして吐き気がする。

「嫌…嫌ぁ…」
「うん。ねぇ未智、今日から俺の部屋においで?一人部屋だから広いし、何よりずっと側で助けてあげられる」

 その方が未智も安心でしょ?と笑う友也に、僕は安堵の涙を流した。

「うんっ、行く。友也と住むッ」

 よしよし、と再び撫でて貰えた僕は、更に友也へ強くしがみ付いた。
 だから僕は知らない。
 友也の瞳が、まるで獲物を丸呑みにしようとする蛇の様に光ったことに……





【SIDE:加賀山】


 同室者が消えた。

 あまり話したことは無かったけど、人の良さそうな加賀山のことは割と気に入っていた。
 だから、つい焦ったんだ。
 いつも加賀山の側にいる男の悪い噂を生徒会の連中から聞いて、俺が思わず声をかけたのがいけなかった。
 でも、まさか自分の存在を利用されているなんて知らなくて…

 人が一人消えたのだ。
 勿論総出で捜索にあたり、一番怪しかった九条友也の部屋も強制的に探したが…加賀山の姿は何処にも見つけられなかった。
 あの時、直ぐにでも追いかけていたらと…学園を卒業した今でも夢に魘される。
 部屋の捜索で成果を上げられず、悔しさを滲ませた俺に向けて笑った、あの九条の笑みが未だに忘れられない。

 そして何年も経ってから見つかった、九条が使用していた部屋の上の屋根裏部屋。
 綺麗に片付けられてしまっていたけれど、そこには僅かに人の使った形跡が残されていた。
 でも、分かったのはそれだけ。
 何の進展にも繋がらなかった。

 誰もがお前の存在を忘れて行く中で、ただ、俺だけがお前を忘れられずにいる。
 罪に…囚われて逃げ出せないんだ。
 
 お前は今、
 無事に生きているのか?



 なぁ、加賀山……


END



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