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願掛け***


攻受両方柔道部員。
攻めはスマート、受けはガッチリ系。
攻めによる無理矢理行為あり。
受けが過去有り。


☆゚+.☆゚+.☆゚+.☆゚+.



 くそっ!

 くそっ!!

 くそっ!!!

 あんなに美しかったのに!
 あんなに憧れていたのに!
 貴方だけを見てきたのに!!

 貴方は全てをぶち壊したっ
 俺の気持ち全てを!
 こんなっ、こんな最低な行為で!!



 ◇



 ギッ、ギギッ、ギッ

 目を覚ました豊(ゆたか)の耳に届いたのは、どうやらベッドの軋む音だけでは無かったようだ。身体が軋んでいる。
 両腕は背中で一括りに纏められ、うつ伏せ上げさせられた尻は、後ろから貫かれていた。

「うっ、ぐっ…」

 無理な繋がり方に全身が悲鳴を上げている。
 今の体制では自分が誰に貫かれているのか知ることは出来ない。
 豊はただ、早くこの行為が終わることだけを願い力を抜いた。




 二人は向き合っていた。
 と言うより、豊の向きが変わっただけで未だ目の前の男に貫かれたままだ。

「眞尋(まひろ)、お前……何してんの」

 不思議な光景だった。
 貫かれているのは豊。
 貫いているのは眞尋。
 だが涼しい顔をしているのは豊。
 ボロボロと泣いているのは眞尋。

「貴方が…貴方がいけないんだ! こんなっ、こんなこと俺はしたくなんてっ!」
「だぁから、お前なに言ってんの?」

 中高一貫の男子高校。
 豊は柔道部のエース。眞尋はそんな豊の後輩だ。

「中学の頃から、貴方を見てた。全国を取った時の貴方の試合は、本当に美しかった……全く向いてない柔道部へ入部を決める程に、惚れ込みましたよ」

 けど、
 けどけどけどっ!!!

「怪我をしてからの貴方ときたら、投げやりでめちゃくちゃで! その上何ですか……来る者来る者っ、全てとセッ、セッ…!!」
「セックス?」
「うるさいっ! そんな言葉聞きたくないっ! 汚らわしい汚らわしい汚らわしいっ! 昔の貴方はっ、貴方はそんな人ではっ!」

 そう言って人の身体の中に入ったまま再び泣き崩れる眞尋を見て、豊は馬鹿みたいだと溜息をついた。

「俺にどんな幻想を抱いてきたかしらねぇが、いい事を教えてやるよ。お前が心酔したっつーテッペンとったあの時な、その一週間前に俺は先輩たちに廻されたんだ」

 つまり、お前が心酔したっつー時は既に、俺の身体は十分汚れてたんだよ。
 何でもないことの様に豊はさらっと言ったが、眞尋は余りの驚きで目玉が飛び出そうになった。

「そ、それって…」
「あ? だから、レイプされたんだって。四人……五人だっけな」
「豊さんっ!!」
「いーんだよ、お陰で俺はテッペン取れたしな」

 エースの座を奪われたと、下らない妬み僻みに囚われた奴らのやったことだ。
 身体は痛んだが、心は強くなった。
 絶対見返してやる、見てやがれ畜生とガムシャラになった結果、気付けばトランス状態。
 そうして豊は見事優勝したのだ。

「だからって、何でその後までっ」

 豊にとって、忌むべき行為になったはずだ。

「まぁ、願掛けみたいなもんかな?」
「願掛け!?」

 セックスなんて呼べるものじゃなかったけど、あれがあったからあの時勝てたんだ。
豊はそう思っている。
 いや、そう思い込んだのかもしれない。

「だから怪我なんか関係ない。お前が知らなかっただけだ」

 いつも同じ神社の御守りを持つ様に、カレーしか食べないスポーツ選手の様に、豊は試合の前になると男に抱かれる様になった。
 本人はそう捉えていないが、眞尋には痛ましいトラウマにしか見えなかった。
 豊は、その愛無き行為が強さを与えてくれると信じ切っている。

 だったら、
 だったら……


「愛ある行為がどれ程強さを与えてくれるか、」





 ―――分からせてあげます





豊の中の眞尋は、哀しみではなく、深き愛で肥大した。



END


↓↓☆おまけ☆↓↓

「あっ!? 馬鹿っ、テメェ何デカくしてやがんだよっ! ぁっ、あっ!」
「愛がっ、どれだけっ、強…いかっ!」
「ぁうっ! んんっ」
「俺がっ、貴方をっ!」
「あぁっ、ァッ…眞尋っ」
「連れてってやるっ!!」
「あぁぁあっ」


 後に、豊が背にJAPANを刻む事になるが…。


 それはまだ
 もう少し先の話。


END



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