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クマとヘビイチゴ***

※ご注意

攻めが過去アリの為、スタートは受×攻の逆転状態でスタートします。
しかも攻は襲い受けです。
後は完全にガチムチ受で固定になりますが、最初を入れるとリバになります。
リバが大嫌いな方は要注意です。

☆高山遙(タカヤマハルカ)受
高校三年 柔道部部長
とても穏やかな性格でおっとり系

☆西荻 穣(ニシオギジョウ)攻
性的虐待過去あり。
穏やかと言うより諦め感の強い感じ。遙にのみ積極的
中性的美人



*・゜゚・*:.。..。.:*・゜*・゜゚・*:.。..。.:*


【SIDE:J】

 入学してから一年が経ち、どの生徒もこの学園生活に慣れた二年目の春。
 入学式で忙しい役職持ち以外は暇な在校生。
 皆それぞれ休みを満喫したり部活に勤しむ中、ふらりと暇を持て余しやって来た花盛りの学校。

 満開の桜の中で、俺はハルを見つけた。

 真っ白で清潔に保たれた道着が眩しかった。
 トレーニングで走ってきたのだろうか、キラキラと光る汗を肌に浮かべ桜を見上げていた。

 ハルがしていたことは“桜を見上げる”、ただそれだけだった。
 だがその光景は妙に神々しく俺の目に映り、その場から彼が立ち去るまでの数分間。
 俺は、微動だにすることが出来なかったのだ。



「ハル」
「あ、穣くん」

 タオルで汗を拭きながら、ニコニコと笑顔で此方に向かって歩いてくるのは、高山遙。
 柔道部部長で、俺の恋人。
 拝み倒して必死こいて一年かけて手に入れた、俺の宝物。

「待たせちゃったね、退屈だったでしょう?」
「そんなことない。今日も格好良かったよ」

 ハルを部活が終わる時間帯に迎えに来ることは、付き合う前からの日課となっている。
 桜の木の下で見かけたあの日から、美術部である俺はスケッチブックを片手に毎日道場へと通った。
 スケッチブックを持って行ったのは当然口実の為。
 表紙すら開かずにひたすら部活の様子を見ている俺は、柔道部員からすればさぞかし気持ちが悪かっただろう。
 だけど、ハルは一度も嫌な顔をしなかった。むしろハルが俺にかけた言葉は労りの言葉だった。

「こちらに入っておいで? もう春とは言え、外はまだ冷えるから」






 この学校に通う生徒達は幾つかの種類に分類することが出来るが、大抵の生徒が裕福であることは共通している。
 そしてその裕福な家庭の実態によって、生徒自体の本質は中々に見えやすい。
 昔からの名家等で昨日今日金を持った訳では無い者、または成金である場合は顕著に違いが現れる。

 簡単に言えば、育ちの違いだ。

 端から見たその違いで見極めれば、ハルは明らかに前者であり、育ちが良いことが窺い知れた。
 物腰が柔らかく、品が有り、気配りも良くできる。
 俺とは生きる世界の違う相手なのだ、本来は。

「ハル、今日は何の日か覚えてる?」
「…うん、ちゃんと分かってるよ」

 照れてタオルで顔を隠してしまった彼の顔は、きっと熟れた林檎の様に赤く染まっているだろう。

「早く帰ろう」
「うん」



 今日は俺たちが付き合って、三ヶ月の記念日。
 重要なのは、三ヶ月前の約束。
 恋愛マニュアルから引き摺り出してきたその鎖で、今日と言う日からハルを逃げられないようにした。

『三ヶ月の記念日に、ハルと結ばれたい』

 あからさまな約束では有るが、俺にとっては重要なことだった。
 俺とは違い、ハルは穢れを一切知らない綺麗な身体だ。
 俺に対する周りからの評価はあまり知らない。だが、ハルの様に綺麗ではない事は確かだから、自分の本気や誠意を何かしらで示す必要性を感じたのだ。

 軽い気持ちではない事をどうやって分かってもらおうかと考えた末に、ネットで恋愛マニュアルを見たことで知った“三ヶ月”という括り。
 いつの時代の話だと言われるかもしれないが、俺にはこれしかなかった。

 簡単に言えば、直ぐに手を出さない様に三ヶ月頑張るから、約束が守れたらその時は俺を抱いてくれ、という話。
 ハルは凄く奥手なタイプだ。
 その上まだ女とも、勿論男との経験も無いという話なので、こういった事は案外やる日を決めておいた方が先に進みやすいとも思った。

 そして今日、ついに約束の日が来たのだ。





 ハルとは部屋が違うのだが、今日は同室者にも協力して貰い俺の部屋で明日まで過ごす事になっている。

 誰にも邪魔はされたくないので夕食も部屋でとった。
 しかし、ハルの緊張具合ったらない。
 ソワソワと落ち着きがなく何処と無く目も泳いでいる。

 ハルは初めてだから、ゆっくり流して行った方がいいのか。
 はたまた、激流の如く押し流し経験させてしまった方がいいのか。

 自分にとっても初めて“好きな人”とする行為なので適当にはしたくないが、むしろ三ヶ月待ったせいで飢えていることも事実。

「ご、ごめんね穣くん…僕、どうしたらいいのか分からなくて…」
「謝らなくていいんだよ? そぉだな…じゃあさ、ハル。一緒にお風呂、入ろうか」
「へっ!? 一緒に!?」
「イヤ?」
「あ……恥ずかしい、だけで…」
「じゃあ、行こう?」

 変な汗までかき始めたハルの手を取り、強引に引っ張っていく。
 いきなり押し倒して気絶させてはまずい。取り敢えず、風呂で裸に慣れさせてみよう。


 ◇


 不味いことになった。

 ハルをこの状況に慣れさせようと思った試みが、まさか自分自身を追い詰める羽目になるとは。
 今まで男の身体に興奮した覚えなど一度もなかったことで失念していたが、恋い焦がれ一年間かけて口説き落とした相手の裸体なのだ。

 平気なはずがない。

 今目の前には、何とも美しく鍛え上げられた肉体が惜しげも無く晒されている。
 部活で屋外での走り込みなどがあるにしても、基本は室内競技であることから彼の身体は日に焼けておらず、お湯を弾く白い肌が妙に艶かしい。

 思わずゴクリと喉がなった。

 自分の欲情した目線を誤魔化すためにポーカーフェイスを決め込み、湯せんを張っている間にシャワーで互いの身体を洗い合う…ハズが…。

 ついつい可愛らしいハルの反応を見ていると心が疼く。
 我慢出来ず、時折スポンジで胸元の二つの飾りをワザと掠めてやると、流石に意図を読み取ったハルは身体を羞恥で赤く染める。
 声が出るのを必死で抑えながらアワアワとしている姿を見て、得体の知れない何かが腹の中でドロリと蠢いた。


 遊び人と言われるほど沢山の経験をした訳ではない。
 だが、自分の容姿のせいで同性からも性的対象として見られることは多く、そして過去幼くして穢れた自分への諦めもあり、誘いの相手をすることに抵抗はなかった。

 そんな適度にこなして来た経験の中でも、男を格好いいとも可愛いとも思ったことなど一度も無ければ、自ら触りたいと望んだ事も無かった。
 今までの相手の殆んどが、見た目だけで言えば“美形”と称される者が多かった。
 だが、そんなものは関係ない。
 自分の気の向いた時に、ただ相手の望む様に身体を開いてやってきただけだった。

 ハルは何処からどう見ても立派な男だ。いや、漢、と書いた方がしっくりくるほど立派な体躯をしている。
 身長こそ普通だとは思うが、柔道部らしい筋肉が身体を覆っている。

 そんな容姿も間違え様もないほど男らしいく、筋骨粒々なハルを俺は…可愛く思う。
 恋に落ちたあの日から、ハルに触れて欲しくて仕方がなかった。
 それと共に一瞬頭に浮かんだ願望に、自分でも驚いて急いで奥底に押し戻した。
 だが、思わぬところに落とし穴があることに、この時はまだ気付くことが出来なかった。




「ぃあっ」

 風呂場に響いた甘い声にハッとした。
 余りに悶々と考え事をしていたものだから自分の行動を把握していなかったのだが、どうやら無意識にハルの飾りに愛撫を与えていたらしい。

 少し掠れた甘い声に当てられた俺の脳は、完全に臨戦態勢に切り替わった。
 身体を洗い終えたハルを、少なめに湯を張ったバスタブの中に座らせる。

「ごめんねハル。ちょっと我慢出来なくなった。重いと思うけど、我慢してね」
「?」

 普通に風呂に入るだけだと思ってるハルには、俺が何をしようとしているか想像もつかないだろう。
 湯せんに足を伸ばして座らせたハルの上に跨ると、驚いた顔をして固まったその口を素早く塞ぐ。

「んむっ!? ンっ、はっ…ぁむ…んんっ」

 後頭部に手を回し、逃げられないように頭を固定しキスをする。
 キスも俺とのが初めてだったハルは未だに慣れておらず凄く苦しそうで、息をするタイミングを逃して目に涙を浮かべた。
 こぼれ落ちる前にそれを舐めとり、用意しておいたジェルを手に取ると俺は自ら後ろを解し始めた。

 早急過ぎて何が起きてるのか分からず、全くついて来れてないハルはひたすら目をパチパチと瞬くばかりだ。
 そんなハルが可愛くてクスッと笑みを零すと、空いている手で彼の反応し始めた場所を直に刺激する。

「ひゃっ! あっ、穣くんダメ! 何か来るかっあむっ、ンんっ…んふ」

 何か抗議しようとした口をもう一度塞ぎ、口内を激しく掻き回す。
 獲物を貪るように、荒々しく。
 上も下も刺激を与えれば、ハルは呆気なく一度目の絶頂を迎えたが…
 休む間も与えず、お湯から少し頭を出しまだトロトロと涙を流して震えるハルのソレを握る。

「んぁあっ!」

 達したばかりで敏感になっている彼は、触っただけでまた硬さを取り戻した。

「はっ、挿れるよ、ハル…くっ」

 そつなくほぐし終えた自身の後孔に、ハルをあてがう。

「ぁあっ、あ…あっ、あっ!」

 抱かれているのは俺のはずなのに、ハルの喘ぎ声を聞くと彼を抱いている気分に陥る。
 全てが初めての体験で刺激に翻弄される彼の身体は、絶え間ない快楽に未知への恐怖を感じているのか小刻みに震えていた。
 ハルを全て自身の中に埋め込むと、ワザと力を込めて締め付ける。

「ぃやぁっ! キツッ、ぃっ、いっちゃうよぉ、あっ、ぁぁあ」

 力を入れたまま軽く腰を揺すっただけで、二度目の絶頂を迎えそうなハルを更に追い込んで、今度は上下に激しく揺すり、たまに腰を回して刺激を与える。

「ぁ、ふっ…ハル、んっ、俺の中…気持ちいい?」

 何時もの俺なら、直ぐにでも自分の感じるポイントで快楽を得ようとするのに、この時は何故か自分の事は頭からスッポリと抜け落ち、ハルの表情を追うことに必死だった。

「あっあっ、んぁっ、は…ぁあっじょ、くん…ぁ、キモチッひぁ!」

 与えた刺激は激しくハルの顔を歪ませ、俺の腕に爪を立てる。

「くっ!」
「ぁぁああぁあっ!」

 俺はハルの表情と立てられた爪の痛みだけで達してしまい、無意識にハルを締め付けた。
 その締め付けに耐えきれなかったハル自身も絶頂を迎えるが、初めてにしては強すぎる快楽に、若干ハルが飛んでしまった。

「ぁ、ぁっ…」

 いつまでも止まない射精感に、俺の両腕に爪を食い込ませたまま、涙を流しながらピクピクと震えている。

“パチンッ”

 その時、そのハルを見た俺の中で何かが弾けたのが聞こえた。
 ズルリとジェルと精液で濡れそぼった彼を抜き取ると、まだ力が入らずクタリと湯に浸かっているハルを抱き起こす。

 そのまま担ぐ様にして風呂から上がり、床が濡れるのも構わずに自分のベッドへと連れて行き、殆んど投げる様にしてハルをベッドに突き飛ばした。





【SIDE:H】

 気付けば濡れたままの身体でベッドに投げられていた。
 ベッドに落とされた衝撃で我に返れば、そのまま力任せに肩を押さえつけられ覆い被さられる。
 反射で穣くんを押し返そうとするが、幾ら普段から鍛えているとはいえ自分より背の高い男にのし掛かられては簡単には退かせない。
 これは柔道とは違うのだ。

「いっ!?」
 
 上手く抵抗することも出来ずにいると、首筋に顔を埋められシクリとした痛みを与えられた。
 それは少し場所を変えては繰り返され、胸元へと辿り着く。

「あっ…あっ、ひっ!? 嫌ぁあっ!」

 ベロリと嘗めたかと思うと強く吸い付き、そして噛まれる。
 余りの痛さについに叫び声を上げると、穣くんは漸く正気を取り戻したのかハッとして僕の顔を見た。

 今までやってきた行為が自分でも信じられないのか、目を大きく見開くき、覆い被さっていた大勢から僕の腰に跨いで座る形に起きあがる。
 そして、彼は自分の両手を見ながら、次第にカタカタと震え始めた。

「ごめん…ごめんハル…ごめん…」
「じょ、穣くん?」
「どうしよう…どうしようハル…おれ…俺はあいつらと…同じだ…」

 震えは酷くなる一方で、どうも正気に戻ったのとも違う。
 寧ろ悪化している気がする。
 一体彼に何が起きたのか分からないが、状況が芳しくない事だけは分かった。

「穣くんっ、穣くん! しっかりして!? どうしたの? ほら、怖くない、怖くないよ」

 押し倒されたままの格好から漸く起き上がり、ガタガタと酷く震える彼の背中をさする。
 触る度にビクつく様子は、まるで僕に触れる事が禁忌であるかの様だった。

「おれ…あんなに怖かったのに…あんなに嫌だったのに…ハルに…ハルに同じことっ」

 過去、彼の身に何があったのか。
 詳しくは分からないが、単語単語を拾えば恐ろしい予測が浮かび上がる。

 穣くんは“あいつら”に何かをされた。
 それが一体何なのか。
 彼がおかしくなった状況を考えてみれば、一つしか思い浮かばなかった。

「穣くんは、同じじゃない」

 詳しい事など全く分からないが、少しだけ予測出来た彼の過去に悲しみと怒りが沸き起こる。

「ねぇ、僕が好き?」
「…え」
「答えて。穣くんは、僕が好き?」
「ぁ…当たり前、だよ」
「うん、知ってる。一年もかけて、僕に気持ちを伝えてくれたもの」
「ハル…?」
「どれだけ僕を思ってくれてるか、ちゃんと伝わってるよ。好きな人に触られて、嫌なわけない。穣くんと“あいつら”は全然違う」

 どうして“あいつら”と一緒だなんて思うの。
 君は何もかも綺麗だと言うのに。

「で…も、いやって…ハルがいやって…言ったのに…おれっ、」

 そうか。
 君がどれだけ嫌だって叫んでも、“あいつら”は君を…

「好きな人に触れたいと思うことは悪いことじゃない。僕も、穣くんに触れて欲しい。だけど、僕は経験が全く無いから……急すぎて、少し怖かったんだ。ごめんね? 言葉を間違えた。いやだって言ったのは、拒絶じゃない。少し…待ってほしかっただけ」

 震えが少しずつ、治まってきている。
 冷え切ってしまった肩をさすってやりながら、出来るだけゆっくり、気持ちが届くように話す。

「怖がらなくていいから、正直に答えてね。穣くんは、僕を抱きたいの?」

 ビクッと穣くんの身体が跳ねた。

「僕が悪かった。君に愛されることが心地よくて、甘え切ってた。好きだよ、穣くん。僕は君が好きだよ」

 濡れたままだった互いの肌は、いつの間にか乾いていて冷たい。
 それを引き寄せて、必死で温めようと抱きしめる。

「好き。穣くんが好き。だから僕は、穣くんに触って欲しい」

 僕の言葉に反応して、おずおずと伸ばされた腕がそっと背中に回された。
 近寄ったその距離を少し離して、目の前にある唇にそっと自分のものを重ねた。
 ちゅっ、ちゅっ、と何度も重ねるうちに、彼の唇に再び熱が帯びてきたのがわかった。

 それを確認するように一度離そうとしたら、それは穣くんの手によって妨げられた。
 後頭部を固定され、唇を深く合わされる。

「ぁんっ、ん…はっ、んむ…ちゅ、はふ」
「んっ、ハル…好き、…すき」

 そのままドサリとまた後ろに倒される。
 だけど今度は、先ほど感じた恐怖を感じる事は無かった。

「ぁ…あっ、んん、ぁっ…」

 噛みつかれて血が滲んでいた胸の突起を、ねっとりと何度も何度も舐められ、もう片方は強弱をつけて捏ねられる。
 痛みしか無かったその場所は、時間とともにピリピリとした妙な感覚をもたらし始めた。

「ぁあ、っ、ど…しよぉ…穣くん、何か…変っ、あっ!」

 上ばかりに気を取られていたら、今度は下半身に硬く猛ったものをゴリュゴリュと当てられる。

「ぅあっ! ぁっ…ぁうっ、あぁっ」
「ハルっ、ハル!」
「ぃあんっ、あ! 出ちゃっ、あっ、あぁあっ!」
「はっ、お…れもっ、ん!」

 手を使わず擦り合わせただけでお互いに達する。
 穣くんは、たっぷりと僕の腹の上に出された液を手で絡めとると、それをペロリと舐める。

「ちょっ、ダメだよそんな汚いもの!」
「汚くない…ハルのだもん」

 そのセリフには、流石に呆気に取られてしまった。




【SIDE:J】
 
 ハルの膝の裏を抱えれば、難なく膝が顔につくほど反り返る。
 そうして俺の目の前に曝け出された秘所へと口を寄せた。
 ハルは一見触り心地が固そうに見えるが、その身体はしなやかだ。
 怪我をしないようにとストレッチも丹念に行う為、全身柔らかい。

「ひゃあっ」

 先ほど放った互いの欲望の証を舌に絡ませ、後孔に滑り込ませ塗りつける。

「んあっ…ぁ、あっ、んんっ」
「ふ、可愛い。ハルのここ、ヒクヒクしてる」
「はぁ、ぁ…あっ、やぁん!」

 ぐりゅぐりゅとねじ込んでいた舌を抜き取り指先で後孔をつつけば、ハルからは砂糖菓子に蜂蜜をかけた様な甘い声があがった。
 その声に誘われつぷりと指を差し込めば、まだ潤いの足りない中は引き攣れハルの眉間にはシワがよる。

「ハル、痛い?」
「ぁっ、はぁ…んん、す、少し…」
「ちょとっ待ってて」

 痛みなど与えたい訳ではない。

「冷たいかもしれないけど、少し我慢してね?」
「?……わっ、あっ!」

 差し込んだ指に力を入れて少し穴を広げると、そこへ風呂場から持って来たジェルを流し込む。
 たっぷり注いだジェルを満遍なく内壁へ塗り込むように指をぐるりと動かすと、突然ハルの腰がビクンと跳ねた。

「ぃあっ!?」

 少しぷくりとふくれた部分を僅かにかする。

「案外早く見つかった…」

 掠めた部分をもう一度探してこすると、今までの甘さなど比ではない声があがった。

「んぁあっ、あっ! ひゃぁあっ」

 余りの直接的な強い刺激に耐えきれなかったハルのソレは、びゅくびゅくと勢い良く蜜を吐き出した。
 そのまま射精と共に弛緩した身体の隙を狙って指を増やすが、敏感になった身体は痛みよりも快感を拾い始める。

「はぁっ、ぁっ…んん」

 たっぷりと溢れていたハルの蜜もプラスされた後孔は、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てて解れていく。

「ハル、いま指三本入ってるの、分かる?」

 そう言うと中に入れた指を広げ、クパリと穴を広げる。

「やぁっ、わ…かんなっ、ひんっ!」

 内壁が冷たい外気に晒され妙な感覚を呼ぶ。
 それは恐怖に近かったようで、ハルは涙を流しながら俺の目の前に手を差し出した。

「はやっくぅ…怖…からっ、はやくきてぇ、ひっ、ひぅぅ」
「え…でもハル、初めてだし、よく解さないと痛いよっ?」

 初めてならどんなに頑張っても痛みを感じない訳には行かない。
 だったら出来るだけその痛みを緩和してあげたい。
 でも…

「やっ! ぁ、はぁ…早くっ、近くにきてぇ、んっ、ふぅ…中にぃ、入ってぇ…?」

 ただただ恐怖しか感じられなかった、自分の初めての時とは大きく違う反応に戸惑う。
 もっともっと近づきたいと手を伸ばされている。

 ハルの秘部を掻き回していた指は、いつの間にか止まってしまっていた。



【SIDE:H】

 ぐぽんっ

「んぁんっ」

 とてつもなく卑猥な音を立てて抜き取られた指の刺激に声が出る。

「はぁっ、はっ…穣くん」

 ピタリと動きを止めてしまった彼を呼んで、涙で滲んだ目で必死になって様子を伺えば、穣くんはポロポロと涙を流していた。

「はぁ、はっ、穣くん…ほら、おいで?」

 あまり力の入らない手を伸ばして彼を誘う。
 彼は僕の手を取ってその手にキスを落とした。

 『好き』

 互いの声が重なったその瞬間。
 僕の身体は開かれる。

「ぁああっ、ァ、ぁあぁあっ!!」

 生まれて初めて感じる痛みと衝撃に目が眩む。

「ハル…遙!遙っ!!」
「ぁんっ」

 早急に開かれた秘部は痛みを訴えたが、心がそれを許容した。



 ――痛みすらも、愛しさへと変わる


 
「ふっ、くっ…んっ、はぁ、ハルっ」
「じ、じょっくん! ひぁっ、ぁんっ! ぁあっ、ぁあぅっ」

 掠められていただけのあの場所を執拗に強くこすり上げられ、そのまま奥深くを突かれる。
 互いの腰と尻がぶつかりパンパンと鳴り響き、その合間には自分と彼の腹で擦られ涙を流す自身のソレがぬちゅっ、ぐちゅっ、と粘着質な音を立てて耳まで犯されているようだ。

 絡めた指が相手の甲に食い込むほどに強く握りしめると、同じように強く握り返された。

「すきっ、すっ…あっ! すきっ穣くっん!」
「はっ、はっ、好き…はぁ、俺も、遙が好きっ、遙っ、遙!」
「んんっ、んっ! んぅあぁああぁっ!!」
「ふっ、んっ!! くぅうっ!!」

 再び互いの唇を合わせた時、しこりを刺激しながら一際強く奥深くまで突き上げられ、腹の間にある高ぶりの先端を爪で引っ掛かれれば。
 恐ろしい程の快感に絶頂を迎えた僕の意識は、奥に放たれた熱と一緒に花火の様に闇へと散った。





 俺は四歳から十歳まで施設で育ち、その後今の西荻家の老夫婦に引き取られた。
 しかしその時点で既に俺の身体は穢されていた。
 前は女に、後ろは男に。
 施設での生活はそう言ったもので、それは他の子供も例外では無かった。

 穢れきった自分には、ハルは高値の花だと分かっている。
 自分には、あの光は強すぎると。
 だけど、闇の中に指した光に、希望に、恋い焦がれずには居られなかった。





「ハル…」

 互いに精を吐き出した後、ハルはそのまま気絶してしまった。
 意識のない彼の体を抱き上げ風呂場へ連れて行き、丁寧に処理を済ませた後清潔に整えたベッドへと移した。
 それから同じベッドへ横になり眠り、ふと目が覚めると外が少しだけ明るくなって来ていた。
 でも、まだハルは目覚めない。

 何だか嫌な予感がしてハルの呼吸を確認するが、彼からはとても穏やかな寝息が聞こえてくるばかりで、予感は単なる杞憂となった。

 暫くハルの顔を見つめていると、少し短めの睫毛がふるふると震え、固く閉じていた瞳がふわりと開かれた。
 目覚めたばかりの瞳は少し潤み揺れて、まだ状況をよく把握出来ないでいる。
 しかし直ぐに目の前にいる俺を確認すると、まるで光り輝く女神のようにハルは笑った。



 ◇


「あらやだ! 穣ったら、帰るなら連絡くらい入れてくれれば良いのに」

 顔を見せるなり婆ちゃんが驚いて腰を抜かしかける。

「ゴメンね」
「はじめまして、高山と申します」
「あらあら、穣のお友達?いらっしゃい」
「婆ちゃん、爺ちゃんは?」
「もうすぐ帰るわよ、あ、ほら噂をすれば」

 婆ちゃんの笑顔からは、文句を言いつつもなかなか帰って来ない自分の帰りを喜んでくれてることが伝わってくる。

「何だ、帰ったのか」

 手に沢山の野菜を持った爺ちゃんが、少し驚いて、でもやっぱり婆ちゃんと同じ笑顔を見せる。

「急にごめんね? どうしても会わせたい人が居て」

 そうして俺は、ハルの手を握った。




 ◆



 穣くんは僕のことを、一生を共にしたい大切な相手なのだと紹介してくれた。
 その話に二人は当然驚いた顔をした。けど、すぐに笑顔になった。
 それはそれは、素晴らしい笑顔。

 みんな幸せそうだった。
 お爺様も、お婆様も、穣くんも。

 僕の存在でこの人達が笑顔になるなら、どんなことがあっても側に居たいと思った。




「早くお嫁に来てちょうだいね?」
「っ!?」

 流石にこのお婆様の言葉には
 顔から火が出るほど恥ずかしかったのだけど…


END



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