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 俺の周りには沢山のミステリーが溢れている。

「もうっ! 俺また振られた!!」

 まず一つ目は、俺が兎に角よく彼女に振られるってこと。付き合っても大抵一週間持たないのだ。

「しかもまぁた何か様子が可笑しかったんだよな」

 そして二つ目は、俺を振る彼女達の様子がいつも変だってこと。
 どこか怯えてる様な、怖がっている様な…妙な態度を取られる事が多い。

 そして三つ目が、

「ま、いーじゃん? そんなん放っておけば」

 そう、コイツのことだ。
 金髪の前髪をちょんまげして俺の部屋の床に寝転がり、オシャレな音楽雑誌を読んでいるチャラ男イケメンな俺の幼馴染。

「お前、他人事だと思って適当なこと言ってんだろ」
「だぁって〜、実際他人事だしぃ?」
「もうっ!」
「痛ッ」
「お前は焦んないワケ!? 俺たちもう高2になるんだぜ!? 思春期真っ只中だぜ!?」

 そう、このチャラ男イケメンは、見た目がチャラ男イケメンな癖に俺の知る限りではまだ彼女を作ったことがないのだ。……嫌味なほどモテるのに。

「ん〜、だって興味無いし」
「そんな事言ってて卒業するまで童貞だったらどうするんだよ!」
「え〜? だって俺、もう童貞じゃないし〜」


 なっ、なんですと!?


 幼稚園から高校までずーーっとベッタリで、今まで何もかも一緒に歩んできたはずの幼馴染が。
 知らぬ間に一歩先を歩いていたなんて知って焦り、俺は再び適当な彼女を作った。

 え? 彼女が出来るのが早すぎるって?
 そこにはちょっとした仕掛けがあったりするんだな。それはまだ秘密なんだけど。
 それに実は、彼女を作る理由にも少し思惑があったりするのだ。

 アイツには彼女が出来たその日直ぐに、“俺だって即!脱童貞★”なんてメールを入れておいた。
 俺だってお前になんて負けやしないかんな! と、そんな意気込みを込めたメールだった。でも…

「ご、ごめん…やっぱり付き合うのやめる」
「なんで!?」

 もう何度目か分からない別れのセリフと、その謎の表情。正直悲しみよりも先に気持ち悪さが湧いてくる。
 例え傷付いても良いから、もういっそ俺の悪い所を教えて欲しい。幾ら俺にも裏があるとは言え、付き合って数日程度しか持たない理由は何なんだ!?

「ねぇ、何で急にそんな事言うの?」
「そ、それは…」
「昨日まで普通だったじゃん?」
「その、だから」
「やっぱり俺なんかじゃ役に立たなかった?」
「ちっ、違うの! 怖いの! 怖いのよ! だからお願い、許して!?」

 叫ぶ様にして言った彼女に目を見開く。
 目には涙まで浮かんでいる。

「怖いって、俺が?」
「ち、違っ…」
「ねぇ、お願いだから隠してる事話して?」










「お前、また来てたんだ?」

 相変わらず部屋の主よりも先に寛いでいる幼馴染。

「お前こそ帰り遅かったじゃん。例の彼女?」
「……まぁね」
「で、何だって?」

 いつもなら雑誌から上げない視線を俺へと向ける。その口元は既にニヤついていた。

「また振られたよ」
「あははっ!」
「お前の事が怖いんだってさ」
「……へぇ?」

 全然驚きもしない。寧ろ「だろうね」とでも言いたげな笑みを見せた。

「今までの相手にも、連絡つく限りで話聞いてきた。お前さ、何してんの?」

『怖かった』
『脅された』
『殺されるかと思った』

 話を聞けた元カノ達からは、こんな言葉ばかりが出てきた。俺と別れなきゃ殺す。そうこの金髪のチャラ男イケメンに脅されたと言うのだ。

「俺になんか言うべきこと、あるんじゃないの?」
「……別に無いけど?」

 俺の質問に不機嫌になった幼馴染は、プイっとそっぽを向いてしまう。そんなソイツに溜息を吐き、もう話し合いは終了だと俺も諦めた。でも…。

「ああ、言うべきこと、あったわ」

 背けたはずの顔がこちらを向いていたが、その顔は笑っていなかった。



「次彼女作ったら、殺すから」








「え、どっちを?」
「気にするとこはそこなの?」

 毒気を抜かれたのか、幼馴染がいつものように笑う。

「お前、俺のこと好きなんだ? だから邪魔してた?」
「はっ! そんな今更」

 嫌味に笑う幼馴染。俺はまたフッと息を零した。

 俺の周りのミステリーは、その殆んどが今解明した。
 俺が彼女と続かないのも、その彼女達が見せる表情も、そしてイケメンな幼馴染に彼女が出来ないワケも。

「まさか本当に声掛けてたとはね」
「は?」



『俺と付き合わない?』

 それだけを告げても、平凡な俺に彼女が頻繁に出来る訳がない。そもそも俺は別に彼女なんて欲しくないのだ。
 だって、ずっと昔からただ一人だけを見ているんだから。

『キミ、アイツのことが好きなんだろ? だったら俺と付き合ってみなよ、きっと直ぐキミに声を掛けてくるよ。アイツ、すっごい負けず嫌いだからさ』

 そう言ってアイツを見てる沢山の女の子に声を掛けた。少しでも俺の不安が減るように、少しでも俺のライバルが減るように…って。
 それがまさか、ねぇ?

「俺の努力は無駄だったワケだ」
「……なに?」


 何故、俺に直ぐ彼女が出来るのか。
 何故、俺がやたらと女と付き合いたがるのか。

 そんな俺からの種明かしは、もう少し先にしようか?

「なぁ〜んでもない!」


END



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