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「では、僕らはこれで。とりあえずそこの三人はおいていきます。風紀で尋問するなりご自由に」
「……、」


西條は何か言いたげにしていたが俺はそれを制す。そしてパタン、と扉が閉められ鮎喰たちが出ていったのと同時に、俺はみんなに礼を言った。


「いや、風紀ズありがとねー、俺チョーピンチだったよー」


俺は爽やかに笑う。しかし西條はさっぱり笑いもせず俺を見た。


「……市東、話がある。今、いいか」


いつになく硬い表情で西條は俺を睨む。俺は肩を竦めた。


「………オーライ。じゃ、君ら、悪いけど」
「お前たち、ご苦労だったな」


西條の言葉に、風紀たちはうなずきぞろぞろと出ていく。そして後には、腕を組み俺を睨み付ける西條が残った。


「………じゃあ市東。説明しろよ」


みんながいなくなった途端、西條は俺を睨み付けながら低く尋ねる。それに俺はわざと笑いながら尋ね返した。


「説明ー?なにを」
「とぼけんな。なんで鮎喰を見逃した」
「見逃してはいないよー?万が一の時のカードは用意してあったし」
「?カード?」


俺の言葉に西條は眉をしかめる。それに眉を上げつつ、俺は隠していたICレコーダーのスイッチを押した。


『…もういい!お前ら、どうにでもしろ!』


そこには先程の、制裁モードの鮎喰の声。それを聞き、西條はますます眉間に皺を刻んだ。


「そんな罠貼っときながら、なんで無防備に一人でここにいた。親衛隊の何人かはここに詰めさせるべきだろう。何かあったらどうするつもりだった」
「親衛隊なんて当てにならねぇよ、影で俺をナニのネタにしてる野郎なんざな。そんな奴ら、近くに置いてるだけで危ねえったらありゃしねぇ。……それに」


俺は西條に近づくと、そのネクタイを引っ張りつつ顔を覗きこんだ。


「……情に弱い風紀委員長様は、健気な生徒会長さんのピンチを見過ごさないだろうって、思ってたからさぁ」
「……」


西條はため息をついた。


「……毎回毎回、わざとらしく隙を作られればこちらも手を回さざるを得ねぇだろ。何かあったら、と思ったら気が気じゃねぇんだよ、こっちは」
「……へー。……つれないくせに、やっぱ気にしてくれてたんだ」
「当たり前だ。……ともかく、もういい加減、教えろ。いちいち俺にお前がちょっかいを出すのは、俺に何か協力させたいからだろ。生徒会の役員たちのボイコットの件はお前からだけじゃなく、他の方からも聞いてる。もしお前がその件で、」


いつになく真面目な顔で西條は俺に言い募る。が、その言葉が全部紡がれることはなかった。なぜなら、俺が、


「……、」


……妙にかさついて見える、西條の唇。不意にそれを食ってみたくなって、つい俺は奴の唇に噛みついてみる。男だからどうかなー、とも思ったがやはり唇だ、なんだか柔らかい感じ。しかも西條からは妙に爽やかな匂いがする。意外と体臭気にしてんのかな、と思ってると、すごい勢いで俺の体は引き剥がされた。


「……!お、おま、」
「んー、ニンニクの臭いはなし、ね。西條、お前、今日餃子定食じゃなかったのかよ」


くんくん、と鼻をきかせながら俺がそう言うと、西條は真っ赤になりながら俺を怒鳴り付けた。


「……お前な、……人が真剣に話してる時に……!」
「だーって、お前妙にマジになってるからさー。さっきも言ったじゃん、俺はお前の気を引きたいんだってー。だからちょっかい出してるに決まってんじゃん?つーかお前だって俺が気になるから毎度助けに来てくれちゃってんだろ、そーなんだろ」
「……!」


……せっかく西條の方から食いついてくれたのに、俺はついこんな事を言ってしまう。……あーあ、マジメ一途な奴になんてことを、なんて心の底では思うが、これも偽らざる本音だと自分でわかっているから軽口が止められない。すると案の定、西條はわなわなと肩を震わせると猛然と扉の方にずかずかと歩み寄った。


「……てめぇはもう、俺に金輪際話しかけるな」
「えー、なに、怒っちゃったー?」
「当たり前だ!……もう、二度と助けないからそう思え!」


そう言うと、西條はバタン、と荒々しく扉を閉める。それを見ながら俺はちょっと悪い笑みを浮かべながら呟いた。


「……けど、お前はまた俺を助けに来ちゃうんだよなぁ、……西條」


お前ってば、そーいう奴だし。その時に浮かべるだろう表情を思うとなんだか笑えてきて、……俺はちょっと楽しい気分になりながら、さっき噛みついた西條の唇の感触を思いだしつつ、自分の唇をベロリ、と舌で舐めたのだった。


・END・

隙だらけ(でも強いよ)会長と振り回される風紀委員長。

とりあえず会長はチート気味であります。

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