魔神襲来!(王道if)


注・この話は王道if、『もしサトが佐土高に転入してきたら』という年齢設定無視話です。(本編年齢では高校卒業すみ)便宜上サトは三年生で編入してきたことになっています。



――その日はもう、朝からすでに佐土高内は妙な雰囲気に包まれていた。



『……でね、もう、すっごいかっこよくて、……』
『信じられないくらいきれいで、』
『マジでびっくり!はっきりいって芸能人より華やかっていうかー!僕、あの人になら何されたって構わないよ――!』



「……」



さざめくような、しかし妙にうわついた雰囲気の生徒たちは寮内、そして校舎に続く並木道でも興奮したように噂話をしている。そんな異様な雰囲気を横目にしつつ、俺と爽、そして伊代と石川は少し肩をすくめる。特に爽はこの雰囲気の原因不明さに肩を竦めながら周囲を見回した。



「……おい、なんだよこの、妙な空気は。今日、学内で何かあるのか?」



爽がそう言うと、伊代は少し目を丸くしながら言った。



「あれ?沢谷くん知らないの?今日、転校生が来るんだよ、三年生に」
「へえ、こんな時期に、しかも三年が?そりゃ珍しいな。……ああ、だからみんな、妙に騒いでるのか」



伊代の言葉に、爽は得心したように頷く。そんな爽に、伊代は苦笑しながら言葉を続けた。



「まあそうなんだけど、……そんな事だけじゃそんな噂にはならないよ。たまたま見た子が言ってたけど、その転校生、帰国子女で編入テスト満点だったとか、スッゴいお金持ちの家の人だとか色々華々しい人らしくて。それに何より、モデル並みにスタイルがよくて、芸能人なみにイケメンだって話だよ。だからみんな浮き足だってるんだよ」
「へえ。そりゃスゲェのが入ってくるもんだな」



伊代の言葉に、爽は適当に相槌を打つ。そんな爽を見やった後、石川は少し目を細めながら俺の方を見た。



「は、前評判なんていい加減なもんじゃないの?ウドが来る時だって、みんな『スゴい美形が来るのかも!』なんて期待してたのに、実際はこんなダサダサなオタクだったし!そいつだって期待ハズレで終わるかもしれないよね」
「……石川くん、そんな事言ったら澪汰くんに失礼だよ」



したり顔の石川に、伊代は少しため息をつきながら言う。それに同調するように背後から声が聞こえてきた。



「河相くんの言う通りだよ、石川。名倉くんに対し失礼じゃないか。そんな事を言うものじゃない」
「あ、守くん、……門田くんも」



声をかけられ俺たちが背後を振り返ると、そこにはいつもの面々、マモリと門田の姿がある。伊代が声を上げると、マモリは伊代に頷いた後、俺に向かい微笑を向けてきた。



「おはよう、名倉くん。石川の言うことなど気にしなくていいからね、君の美しさは誰より俺が一番よく知っているから」
「ったく、……このウドフェチが……相変わらず呼びもしないのに出てくるんだから」



マモリの言葉に石川は小さく毒づく。それを見やりつつ俺はマモリに尋ねた。



「珍しいな、お前たちにこの時間に会うとは。今日は英語の指名日だから早出したんだが」
「ああ、それなら所用があってね、今日来る転校生の事で。俺も門田も、その件で生徒会と風紀の合同集会に出席していたんだ」
「へえ、生徒会と風紀が合同なんて珍しいな。よくわかんねぇが転校生が来るってのは大変なんだな」



爽が少し目を丸くしながらそう言うと、マモリの横にいた門田は少し眉をしかめながら首を横に振った。

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