白昼夢のサトリくん(王道)


注・こちらモブが主人公ですのでご了承ください。



「……っ、ああっ、今日も守くん格好いい……!もう、歩く目の保養……っ!さすが一年一番人気だけあるよねぇ、見とれちゃう!」
「守くんもいいけどさ、やっぱ関賀くんじゃない!?何やってても格好いいしモデルみたいで……もう、関賀くんにならどんなコトされてもいいっ!」
「守くんや関賀くんって、みんなミーハーすぎぃー。やっぱ今は門田くんでしょー?あのストイックで武士みたいなトコ、サイコー!顔も結構素敵だし!」
「それ言ったら沢谷くんだって!どっから見ても完璧なスタイルだし誰にでも優しいしさー!」
「……」



……朝。窓際の僕の席に着こうとすると、ミーハーな連中が窓にへばりついて何やらギャーギャーと喚いていた。僕の机を椅子代わりになんかして。ここで一言言ってもやりたいが、僕のような陰キャが何か言ったところでこいつらが堪えるわけはない。むしろ、その次にくるだろう光景のストレスの捌け口にされることが簡単に予想できたから、僕はそっとその場から離れる。……すると、



「あっ、……ギャー!またあのオタク……!守くんにぬけぬけと……!」
「きいぃい!関賀くんに馴れ馴れしくすんじゃないよクソアフロ!」
「い、いやぁああ!門田くん、あんな奴に近づくなんて!け、汚れる!やぁあぁ!」
「沢谷くーん、逃げてー!あんな奴に構わないでー!」



……さっきまでの黄色い歓声が一気に薄汚い罵声に変わるのを聞いて思わず僕は嘆息する。……ほらね、やっぱりあの人たち、またあのオタクに絡んでるんだ。特に守くんと関賀くんが。ギャーギャー騒ぐ奴らからちょっと離れたところから僕も窓から外を覗くと、一年ヒエラルキートップにいる五人が、いかにもさえない、でも背だけはやたら高い男と楽しそうに話しながら登校してくるのが見える。完璧王子様の守正義、ちょっとヤバめなセクシー系、関賀霞。一年の二大モテ巨頭は目下、一学期にやってきた転校生に夢中だ。それだけじゃない、寡黙武士系で人気の高い門田桜、万能スポーツマンで気さくな人柄からみんなに慕われてる沢谷爽、ここにはいないけど一年では一番の美少年として名高い石川類まで、そいつの取り巻きと化してる。それが面白くなくてクラスの連中、特に守くんと関賀くんのファンたちは転校生の事をクソミソに言っている。正直、その主張には納得してしまうところもある。……だって、転校生が憧れの彼らに負けないくらいの美貌の持ち主ならともかく、ぐちゃぐちゃの汚い髪、目が見えないくらいの分厚い眼鏡というわけのわからない容貌なんだ、文句のひとつも言いたくなるだろう。背丈だけは人並み以上にあるからそこだけはプラスポイントだろうけど、……とにかく転校生に対する一般生徒の評価は、『人気者たちにうまく取り入った不細工なオタク』だった。それは言い過ぎなんじゃ、と思わなくもないけど、正直、一年でも人気者であるあの四人、……特に守くんに近づけるのはちょっと羨ましい、と思った。彼には、一度困っていたところを助けられた事があったから。いつも優しく公正で、性欲とか独占欲のかけらもなさそうな王子様。……そんな彼に微笑みかけられた転校生はきっと天にも昇る気持ちなんだろうな、……なんて下らない事を思いながら、僕は、僕の席で騒いでる彼らがいなくなるのをじっと立ち尽くして待っていた。


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