どうぞ、よろしく。(真壁+真言)

『嘘からでたまこと』
真壁+真言


こちらはifストーリーであり、本編とは関係ありません。ちょっと艶っぽい表現があります。


‐‐‐‐


「じゃ、入れよ、真言」
「お、……お邪魔します」



真壁先輩に導かれ、おずおずと俺はその部屋に入る。



今はちょうど春休み。進学を控えた真壁先輩と、進級を控えた俺の、ちょっと不安と期待に満ちた短い休みだ。



付属である耶麻台大への進学ではなく、外部受験を選んだ真壁先輩には、大学受験は大変だったと思う。でも先輩は、見事志望大学に合格し、長年の夢を果たした。それを素直に喜ぶと、『お前の手作り夜食が効いたんだろ』なんて言ってくれたけど。



でも、外部受験ということは、もう真壁先輩は近くにいないということで。……恐れ多くも、真壁先輩の恋人、なんてポジションを得た俺ではあったが、その事実に一抹の寂しさを感じていると、卒業式の日、俺は先輩からひとつ鍵を渡された。



――俺んちの新しい鍵だ。ま、男子学生の一人住まいだから、大したもんじゃねぇが、



そう言いながら、先輩はその鍵ごと俺の手を包みこんだ。



―――たまには、俺んちで飯でも作ってくれ。勉強も、良ければ見てやるからよ。



―――!



真壁先輩から渡されたその鍵は、ちょっと大きく、真新しいもので。……真壁先輩の卒業と、合鍵をもらえたという二つの事実に、俺は思わず泣いてしまったのはちょっと恥ずかしい思い出だ。



―――まあ、それから色々あり。高校も春休みになって、風紀の仕事に一段落ついたことを確認し、俺は真壁先輩に連絡をした。



―――いつか、お暇な日はありませんか、と。卒業されたとわかってはいたが、やはり真壁先輩がいないこの高校は寂しくて仕方ない。だから少しでも会えれば、と思ったのだ。



すると真壁先輩からはすぐに答えが返ってきた。――なら、泊まりでこれないか、と。



……泊まり。その単語に、俺は思わず赤面する。高校時は、寮生活だったし先輩はカリスマ的人気があったから、キスはしたけどそれ以上のことはなかった。でも、……もう真壁先輩は卒業して、……寮のみんなに気がねすることもなくて。



……と、いうことは。やっぱり、そういうことなんだろうか。



俺は期待半分、不安半分で真壁先輩にOKの返事を出した。……そして今、俺は真壁先輩の部屋の前にいる。緊張にコチコチになりながらも、ちら、と先輩を見ると、先輩はいつものように余裕たっぷりな顔をしていた。



………うぅ、俺が自意識過剰なのかな。



緊張を悟られたくなくて、俺は手土産代わりの食材を真壁先輩に見せ、笑いかけた。



「ま、真壁先輩、お腹空きましたよね?俺、夕食と朝食用に色々買ってきたんです。…真壁先輩、ハンバーグお好きでしたよね?今日はメインはそれですから」
「そうか、……お前の飯も久しぶりだよな、楽しみだ」
「はい、腕によりをかけます!」



……何気ない会話、普通の会話。真壁先輩に変わったところは見られない。恋人なんだから、当然、そういうことをするんだと思ってたが、……それは俺の先走りだろうか。先輩は至って普通だし、……いやまあ、それでもいいんだけど、――そんな事を思いながら真壁先輩は鍵を開け、俺を中に入れる。そして俺が玄関に入ると、背後でカチリ、という音がした。……ああ、真壁先輩が部屋の鍵かけたんだな、なんて呑気なことを思っていると、背後から先輩が俺を抱きすくめてきた。



「……え、」
「……真言、」



俺がびっくりしていると、真壁先輩が低い声で俺の耳に色っぽく囁いてくる。それに思わず体をびくつかせると、真壁先輩は少し笑い、俺を自分の真正面に向かせると唇を押し付けてきた。



「……ん、」



……久しぶりのキス。先輩が卒業してから、会えなかったからキスなんてできなかった。少し厚い真壁先輩の唇は、俺の唇を覆って、繰り返し、繰り返し俺の理性を奪っていく。もうそれだけで俺は頭がなんだかぼうっとしていたが、ふと、真壁先輩はどんな顔をしてるんだろう、と思った。で、薄目を開けると、



「……、」



真壁先輩は、いつになく怖い顔をしていた。さっきまでの余裕な、いつも通りの先輩はどこへ行ったんだろう、と思うくらい余裕のない顔をしていた。それに俺が少しびくつくと、先輩は俺に気づいたのか、自嘲めいた笑みをもらした。



「悪いな、真言、怖がらせちまったか」
「い、……いえ、」
「けどな、……俺ももう、限界なんでな」



そう言うと、真壁先輩は俺の両足を左腕で、そして右腕で俺の上半身を持ち上げる。かなり荒い動きだったせいで、俺は持ってたエコ袋を取り落とす。……ああ、食材が、なんて思ったが、真壁先輩はずんずん俺を抱いて部屋の中に入っていって、とある部屋の扉を開けると、俺を静かにそこに下ろした。



――それは、一人用には大きすぎるベッドで。俺が俺を包み込むその柔らかさにびっくりしてると、真壁先輩が俺の顔を覗きこんできた。



「……悪いな、真言。俺は、お前の飯もいいが、今はお前を食いたい」
「……え、は、」
「……寮じゃ、人目もあったしな?お前に手ぇ出したくてもできなかったし、……それに、」



そう言いながら、真壁先輩は俺の耳たぶを軽く噛んだ。



「……っ、」
「『頼れる先輩』って、無心に俺を慕うお前に、あんまり無体はしたくなかったからな、……卒業までは、お前にはなにもしねぇ、……そう決めてはいたが、」



――頭のなかじゃ、お前を何度抱いてたかわからねぇ。



先輩はそう囁く。その言葉に、なんだか背筋がぞくりとした。



「せ、せんぱ、」
「……けどな、もう『物わかりのいい先輩』はやめだ。……なぁ、」



……俺も、男、だからな。そう言いながら、真壁先輩は俺のワイシャツのボタンをプツリ、プツリとはずしていく。そして露になった首筋に唇を寄せると、俺の肌を軽く噛んだ。



「……いっ、」
「……、」



軽く噛まれた後、舐められた首筋が少し痛い。でも、怖いとか、不安だとか、そんなのを通り越し、なんだか胸がドキドキして、俺は先輩の背に手を回す。それに気づいたのか、真壁先輩は苦笑した。



「……がっつくような真似して、……悪いな」
「いえ、……むしろ、安心しました」
「……ん?」
「……先輩でも、余裕がなくなることがあるんですね」



俺がそう言うと、真壁先輩はバツが悪そうに言った。



「………こんなん、……初めてだからな、…俺は」
「……俺もです」



だから、……よろしくお願いします。



そう言うと、真壁先輩は目を丸くして、



―――全く、お前にゃ、かなわねぇ。



そう言い、今度は優しく、俺にキスをして、



………その日の夜。俺は真壁先輩と、互いのすべてを知り合って、……同じベッドで、朝を迎えたのだった。



・END・
お題・真壁先輩×真言でパラレルでラブラブ(エロ有)

エロの詳細がなくて申し訳ありません
真壁先輩ですとやはりほのぼのになるかな?と思いつつ、初夜(の手前)の話でした。

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