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▼ 舞田類と再会する

 大学卒業後に勤めた会社に、アイドルグループ、S.E.Mのファンだと公言している同僚がいた。確かに、少しひやっとした。けど、別に構わない。まさか私が、過去に舞田類くんと関係が一度だけだとしてもあったことを知るすべはないのだから。

 ある日、その同僚はS.E.Mのライブのチケット選考抽選にて、見事当選した。先行抽選がどうとかで、アイドル周りには明るくない私にはさっぱりだが、ともかく、人気だからチケットが争奪戦になるところを、運良くその権利を勝ち取ったと言うのだから、めでたいことなのだろう。同僚にはお祝いの言葉を添えた。
 S.E.Mのライブが近づいてくると、同僚は突然顔を青くし出した。どうやら、一緒に行く予定だった友人が急用で来られなくなったというのだ。上京してきた彼女には、件の友人の他にあてになる知り合いはいないらしく、チケット代は払わなくてもいいから、とにかく同行者を探しているという。今時はインターネットで同行者を探すという手もあるらしいが、見知らぬ人と行くのはいささか不安があるそうだ。酒の席でこぼしていた。

「一生のお願い! アイドルとか興味ないのは知ってるんだけど、後生だから一緒に行って!」

 同僚は懇願してきた。
 運の良いことに、いや、生憎、その日は予定が入ってないのだ。同僚にも同情しなくはない。が、問題は、この私が、舞田類くんの所属するアイドルグループのライブに、行ってしまうことだ。
 同僚にとっては、私と舞田類くんとの過去のとある接点は知る由もないし、教えるべきことではないが、私は、一度だけではあるが、彼と体を交わらせた仲なのだ。どんな顔して観に行けばいいのか。セックスした相手だぞ。テレビのように画面越しで顔を見るとはわけが違う。気まずい。絶対に嫌だ。絶対に行かないからな。


***


 私は負けた。屈してしまった。来てくれたら焼肉一回奢るから、という魔の契約に。胃袋の誘惑には勝てなかった。
 勿論、同僚はわかっていない。私がライブに行くのをこんなにも渋るのは、決してアイドルに興味が無いという理由ではないということ。その方が良い。話を聞いていたらわかったことだが、彼女の推しは舞田類くんだ。

 ライブに行く一週間前程から、同僚にS.E.Mの曲を知っておいた方が良い、と過去に発売したCDを全て貸してくれた。多分歌うのはこの新しいやつ、と言われはしたが、取りあえず全曲あるよ!と親指を立ててくれた。ファンの鑑か。
 何気なく耳にしていたテレビのCMや、ドラマや映画の主題歌などで使われていた曲もいくつかあって、曲名はしらないものの、サビは聞いたことがあるものも何曲かあった。私はベストゲームという映画の主題歌となった曲が好きだ。
 あと、古い順に聞いていったら気付いたことがある。三人共、どんどん歌唱力が上がっていっているのだ。なるほど、と感心した。元々は教師だというおじさんたち、アイドルデビューしてから歌を歌うようになって、最初よりもどんどん実力が着いていくのだろう。これは、古いファンとしては、成長を見守っていく側面もあるのかもしれない。興味がない、と頑なに触れてこなかった世界だが、確かに魅力的な部分が大いにあることには納得だ。

 S.E.Mの曲は、オリジナリティの塊だった。類を見ない略歴から織りなされる、元教師だからこその目線の歌詞。社会人として働いていた経験があるからこその、言葉の重みや説得力。そもそも彼らが所属している315プロダクションという事務所のアイドルたちは、揃いも揃って前職に何かしら就いていた大人たちも多いと聞いた。テレビには色んな人が出演しているが、こうも尖ってる人たちも珍しいのだろう。興味が沸いてしまった。

 舞田類くんの歌声は、とてもポジティブだ。笑顔で歌っているのが目に浮かぶ。
 自分が彼と親しくしたのは一夜だけだが、こんなにも鮮明に彼の表情が浮かぶのだ。きっと、彼にはそもそもアイドルという職業に必要不可欠である、人を惹きつける素養があったのだろう。


***


 ライブはすごかった。アイドルを全身で浴びた。一晩のみの行為をし、悦楽に溺れる材料としてしまった男を眼前に拝むことは、酷く気まずいものだと思っていたが、実際にライブが始まってみればそんなことは頭の外へと飛んでいった。硲さんがとても良かったですファンになりました。

 私の楽しみ具合は同僚も満足のいくものだったらしく、また誘うねと親指を立てられる始末。これが幸と出るか否か……。


***


「次はこれに行こう!」

 同僚が私に差し出した次の切符は、バラエティの公開収録というものだった。テレビで放送される番組は、お客さんを募集してスタジオで観覧してもらいながら収録するものも少なくないらしく、S.E.Mがゲスト出演する番組に応募したらしい。そして当てたらしい。倍率高いんじゃないのかよ。よく当たるね。
 同僚曰く、硲さんが気になるのならバラエティの現場はオススメらしい。どうやら、まじめすぎるが故に頓珍漢な回答をして笑いを誘ったり、何かと可愛い様子が見られるという。
 そう言われると正直興味は出た。だから、私は何も考えず、何も心配せずに、同行を承諾していたのだ。

 しかし、よく考えてみて欲しい。バラエティの公開収録ということは、スタジオなどのセット内で出演者と閲覧者が集まるということだ。そして、今回観に行くのはトークが中心になる番組だと言う。即ち、そこまで広いセットではない。
 そう、会場の規模が違う。ライブでは一人一人の顔の判別など難易度が高いが、トーク番組の閲覧者内の顔の判別は、どう考えても容易い。要は、ライブ会場では舞田類くんに見つかる可能性など皆無だから、私も安心して参加できたけども、今回は私を見つけられる可能性があるために、そんなおちおち硲さんを観に行くわけにもいかないのだ。
 残念なことだが、これに気付いたのは収録前夜である。仮病を使って休むことも考えたが、同行者が居なくて奔走していた同僚の様子を見ていただけに、流石にそんな心無いことはできなかった。
 次に、マスクをして顔を隠す作戦を考えた。風邪はひいていないし、今は夏だから暑い上に予防のためという大義名分も使えない。急に風邪をひいたと説明しても、同僚とは平日中顔を合わせる仲なのだから、見え透いた嘘を吐くのも自分の首を絞める結果になりそうだった。
 ここは無難に、いや無難でもなんでもないけど、口の周りにできものが現れたと嘘を吐こう。誰も傷付かない嘘だからいいよね……。


***


 大学時代には絶対やらなかった色合いでメイクをし、少しでも大学時代の自分から遠ざけようと労力を割いた。目元しか出ていないが、気休めでもなんでも良いから、とにかく『これなら気付くはずはない』という安心が欲しかった。
 でも、まぁ、よくよく考えればの話だ。顔を合わせたのはたったの一度。親密になったわけでもない。私が彼を覚えていたのは、彼との行為が記憶に残り続けたということと、数年経ってからテレビ越しではあるが強烈な再会を果たしたこと、この二つがあったからだ。
 では、彼から見て私はどうだったのか。当時の彼も遊んでいたのならば、私は有象無象の女の一人にすぎないだろう。性行為の技巧が優れているわけでもなく、容姿が端麗でもない、何も目立った行いをしていない私が、超絶キラキラアイドル様の記憶の片隅にでも残っているのだろうか。……可能性は、ゼロに決まっている。
 だったら、別に変装めいたことをする必要はないのでは? 私、自意識過剰過ぎない?
 そうぐるぐる考えたところで、結局冒頭に戻る。バレるバレないの問題ではなく、自分の気休めになるか否かなのだ。

 観覧者がスタジオに通され、スタッフにいくつか説明を受けて、収録が始まった。
 内容としてはトークが主体の番組だ。ゲストとして呼ばれた人らがどんな人なのか、プライベートは? 最近の仕事でのエピソードは? と色んな質問でトークが展開され、最後にゲストたちの何かしらの宣伝をして終わる。
 私と友人は真ん中ほどの列に座っていた。最前列というわけでもなく、最後列でもない。
 観覧者が入り、少ししてから番組の司会者が現れた。テレビでよく見かける芸人さんだ。司会として見ることの多い人だし芸人さんだし、常に賑やかなイメージを持っていたが、カメラのまわっていない時は普通に、普通の人だった。……当たり前だけども。
 なにやらの下準備が終わったらしく、撮影はすぐに始まった。勿論、カメラは私たちと同じものを映しているので、私たちが映されているわけではないのだけど、何故か緊張して肩に力が入った。
 そうか、この緊張は、撮影が始まったことに対してではない。
 これから、私は、舞田類くんと再会するのだ。たとえ、向こうが私を認知していなくても。私は知っている。彼が、普段テレビの中やファンの前では絶対に見せないであろう、動物としての雄の顔を。今では決して見ることのできない、数年前の少しあどけなかった彼を。
 周りの人間は、みんなS.E.Mのファンなのだろう。隣にいる友人のように、三人の中で特に舞田類くんが好きだという人もいるはずだ。中には、彼に恋愛感情を抱いている人だって。
 この中で、私だけが知っている舞田類くんがいる。そう自覚した時、私の心臓は、高揚とも言える高鳴りをした。……これが、優越感というやつなのか。私は、周りの人間よりも勝っている、と浸っているのか。
 自分の浅ましい感情をまざまざと見た瞬間、悲しくなった。自分を高尚な人間だとは思わない。優れた人間だと思ったことはないに等しい。なのに、私は、今、周りを下げて自分を上げた。そうしてだれかを攻撃したわけではないのに、自分の汚い感情を見つけたことに、嫌になってしまった。

 ああ。私は、ここに来るべきではなかった。
 ライブでは、会場の規模や初めて体験する空間そのものに圧倒されて、私は自分の胸の高鳴りが卑しいことに気付かなかった。しかし、余裕が出た途端のこれだ。
 アイドルだって人間だ。アイドルではない時のその人がある。ならば、その人の友人は確実に存在するはずで、その人たちは一体どうやってアイドルではないアイドルたちと接するのだろうか。私の知り合いに芸能人はいない。強いて言うなら舞田類くんがそれだ。だが、そのくくりにするにはおこがましいにもほどがある。私と舞田類くんとの関係は、全く対等ではないのだから。
 いつの間にか、収録は始まっていた。
 会場は瞬く間に歓声に呑み込まれる。耳にその音は届いているが、どうも遠くに感じられた。目の前には、芸人さんとS.E.Mの三人。今日のお客さんは勿論S.E.Mファンだろうから、彼らの登場に歓声くらい上がるのだ。
 トークは面白かった。観客は作り物ではなく笑っていた。隣にいる友人も楽しそうだった。私も、空気を読んで笑っていたのだが、心からの笑顔ではなかった。マスクで顔が隠れていたことが、こんな形で役に立つとは。嬉しいやら悲しいやら、だ。
 あんなにもこちらの姿を見られることを躊躇していたのに、そんな気はどこかにいってしまっていた。だからか、収録中何度か舞田類くんは観客席に目を向けていたことにも、私の顔もその瞳に映していただろうことも、大して気にならなかった。私の顔など到底覚えていないだろうに、私は何を自意識過剰になって認知されるつもりでここに来ていたのか。ばかばかしい。急に飽きれが大きくなって、何も怖くなくなった。
 収録が進むにつれて、自らを攻めたてるとげとげしい気持ちはだんだんと丸くなっていった。
 先日行われたライブの裏話、舞台裏でのハプニング、実はあの時衣装が解れただの、レッスン中に硲さんが頓珍漢なことをし出しただの、笑いの話題には事欠かないらしく、終始朗らかな空気に包まれていた。


***


 私は番組収録の後、同僚に打ち明けた。舞田類くんと数年前に会ったことがある、と。流石に肉体関係を結んだことには触れなかったし、今の連絡を知っているわけでもないので、ただ大学生時代に合コンで一緒になったということしか伝えなかったが、同僚は驚いたのちに「でもなんか、アイドルではない時の類くんを一ファンなだけの私が知るのは、なんか少しズルした気分になるから、何も聞かないね!」とアイドルファンシップに則ったようなどえらいお言葉を賜った。同僚のこういうところ好き。
 かくして私は『昔の知人に金を払って会いに行くのは、なんか気分が乗らない』とかいう、それっぽい言葉を並べて同僚からのお誘いを全面的に断る旨も伝えた。せっかく前より仲良くなったのに……、と同僚は寂しそうにしていたが、無理強いはしなかった。これ以降、仕事のお昼休みによくランチを食べに行くようになった。アイドル様々だ。

 
 さて、こうして私と舞田類くんとの関係はまた無に戻った。勿論テレビでお目にかかることはあるし、同僚の話の中で登場もする。でも、それだけだ。もう自らライブに行ったり何なりはしない。これでいい。そもそも、こういう距離感だったじゃないか。

 季節は過ぎた。でも、一年は経っていなかった。
 ある日、仕事から帰って自室でくつろいでいる時、携帯電話の連絡アプリに、久しく連絡をとっていなかった大学時代の知り合いからチャットが飛んできた。
 何事か。まさか高い壺を売りつけられたり、宗教の勧誘じゃあるまいな? と、身近な人間に久し振りに会う人間には気をつけろと助言されたのを鵜呑みにして戦々恐々とした。
 フタを開けたら、まぁ拍子抜けの一言だ。

『久し振り! 急で悪いんだけど、アンタの連絡先知りたいって男がいるんだけど』

 なんだ? ナンパか?

『久し振り。急なのもあって怖いんだけど、その人、私知ってる人?』
『知ってるはずだって、その男は言ってる。私も友人の友人の知り合いくらいの間柄だから詳しくは知らないんだけど、別に悪い評判は聞かないよ』
『ふーん……? 知り合いなら名前知ってるかな、誰?』
『えっとねー、ちょっと待って』

 そう言うと、友人からの連絡は一度更新が途絶えた。
 流石、直接の友人じゃないから名前までは知らないらしい。というか、そんな遠い縁の知り合いって本当に知り合いなのか? ますます怪しく感じてくる。
 少ししたら、また友人からの連絡が来た。

『なんでか知らないけどフルネームは教えてくれなかった。なんか、るいって名前だって』

 るい? 下の名前だろうか。というか、そんな友達いたっけ。
 大学時代の交友関係を順に記憶をたどっていくが、そんな名前の友人に心当たりはない。でも、そもそも知り合いの知り合いの……みたいな、もっと先の交友なんだから、名前がわからないのも仕方ないことなのか? 名前を知らないけど、その人の言う通り知り合いなのかもしれない。
 すっごい遠い人だけど、わざわざ人づてに連絡先を聞いてくる労力を割いているわけだから、自分に何か用があるのか……?

『うーん……。全然覚えのない名前だし全然目的がわからないけど、取りあえず連絡先教えていいよ』
『マジで? まぁいいなら教えるけど……。別に変なやつじゃないっぽいけど、何かあったら言ってね。紹介の片棒担いだ手前、夢見が悪いから』
『うん。ありがと』

 そういう経緯で、とあるアカウントが転送されてきた。
 表示されてる名前は『RUI』。言われた通り、るいという名前に間違いはないようだ。

『こんにちは。いきなりですけど、私に何の用なんでしょうか?』

 すぐに既読はついた。読んだらしい。
 つい、こちらも相手のメッセージを待つ。

『Hello! その様子だと、俺のことは覚えてないみたいだね』

 えっ、英語…………? なに、日本語で話してるけど、どうして……?
 そして即座に私は血の気が引いた。気付いてしまった。純日本人ではあるけど英語交じりの不思議な言葉を話している、大学時代に知り合ったことが確かにある男。そんな人間はわたしの知る限りじゃ一人しかいない。なんで今まで察しなかったのか。るいって名前までわかっていたのに。
 この人が相手だってわかっていれば、連絡先を教えるなんてことはなかったはずなのに。
 でも、もう全て遅いのだ……。

『この前、番組収録観に来てくれた時、随分sadな表情をしていたのが気になってたんだ。それからどう? energy?』

 呆けて彼とのメッセージ欄を開いたままにしていたから、既読は瞬く間についてしまった。構わずアプリを閉じる。
 ど、どうする……? なんか、向こうも、これは、番組収録の時に私に気付いたらしいぞ? でも、どこまで? いやでも、気付いたってことはあの夜を……あの時のことをやつは覚えて……うーん頭が痛い! 忘れていて欲しかった!
 勢いで消したものの、それだけ気になる。どうしよう、それだけ聞くか? 流石にこのまま放置もしてはおけない……。
 意を決してまたアプリを開く。ついさっきメッセージが来たから、ruiというアカウント主は一番上に表示されている。

『私とあなた、友達でもなんでもないのに、どうして連絡先を聞いてきたんですか?』

 こうやって聞いたら、何て返ってくるのか。ゆさぶりをかけたつもりだった。
 また、すぐに既読はついた。そして、こう続いた。

『WOW! 覚えてないかい? 結構刺激的なnightだったと思っていたのは俺だけだったかな?』
「うわぁぁぁぁああああぁぁぁぁ…………!」

 夜だろうが関係ない。そんなこと気にする余裕はなかった。
 携帯を布団に投げつけ、布団につっぷす。顔を布団に埋めても状況は何も変わらないけど、そうするしかなかった。
 覚えている。やつは、確実に、私と、あんなことがあった、夜のことを覚えている。
 なんてことだ恥ずかしくて死にそう。恥死ってある? あるよこんなにも恥ずかしい。

 結局このあとは何もメッセージを返せなかった。
 数日経っても、特に新しいメッセージが届くわけでも、電話がかかっていくることはなかった。


***


 しかし、この件はこれで終わりではなかった、恐ろしいことに。

 また数週間は経ち、私も金輪際考えたくも思い出したくもなかったからか、一切を頭から消去していた。そういう気持ちで過ごしていた。
 そうして、仮初の平穏を手にしたと勘違いし始めた頃、仕事帰りに事件は起こった。

「Hey! Long time no see! 元気かい?」
「人違いです失礼します……!」

 男性にしては小柄な身長、お洒落なハットと眼鏡、覗く金髪、そして何より英語交じりな独特な喋り方。
 誰なのか、今の私には一瞬で判断がついた。こんな街中でさえない女の人に声をかけて色々と大丈夫なのかと気になりはするけど、そんなことより自らの保身が先だ。
 他人のフリをしたところですぐにバレてしまうだろうけど、会いたくない姿勢を見せるのが大事なのだと、顔を合わすこと3秒ほど。即座に足を動かしてその場を去ろうと試みた。

「Lieは寂しいなぁ。ちょっとだけでもお話しない?」
「しません。話すことないので」

 こっちは必死に足を動かしているというのに、やつは涼しい顔して横に並んできた。
 周りには仕事帰りの色んな人が歩いているというのに、こいつは芸能人の自覚がないのか? バレて騒ぎになったらどうするつもりなのか。
 というか、何故私の仕事先と退勤時間を把握している? こわ。

「んー、どうしてそんな頑ななんだい? 確かに繋がりは一瞬だったけど、俺はもっと君のこと知りたいのになぁ」
「結構です。もう昔のことですし、私は貴方との接点を持ちたいをわけではないので」
「…………。OK、無理強いをしたいわけじゃないから、今日はもうgo homeするね」

 そう言うと、舞田類は手を振り去っていった。
 …………なんだったんだ一体。そして何がしたいのか、もうよくわからない。

 しかし、忘れないで欲しい。私はやつに連絡先を交換してしまっているし、何故だか勤務先もバレた。
 相手の思惑も結局わからず、しかし完璧に突っぱねることもできないでいる。
 多分この調子で、どんどん懐柔されてしまうんだろうなぁ。
 同僚にバレたら、なんて説明しようか。





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リクエスト『舞田類に奉仕された話の続き』



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