▼ 桜庭薫と夕立
「わぁ急に降ってきましたね!」
「折りたたみ傘が入っている鞄は全て宿か…タイミングが悪いな」
「とにかく撮影所まで走りましょう!」
「待て、戻ると言っても距離が長いぞ」
「でもスタッフを待たせるわけにも…」
「どうせこの雨では撮影も中断だ。それに、季節柄と時間帯からこの土砂降りは一時的なものだろう。少し待てば止む」
「そうか、確かにそうかも!」
「取りあえずしのげる場所まで来たが…」
「服びちょびちょですね」
「貼り付いて気分が悪いな」
「はっ、桜庭さん風邪ひいちゃう!私のジャケットで良かったら肩にかけてください!濡れてるけど何もないよりはマシですよ!」
「僕の体はそんなにやわじゃない。この程度の雨にあたったくらいで風邪などひかない」
「うるさいです!どうぞ!」
「……はぁ。うるさいのは君だろう」
「はいはい。袖は流石に通らないと思うので、ちゃんと羽織ってくださいね!」
「そう何度も言わなくともわかっ、………」
「ん?どうしました桜庭さん。取りあえず上着どうぞ」
「…………おい」
「え、なんで急にそんな怖い顔するんですかなになになに」
「無自覚とは、とんだ鈍感だな。とにかく、その上着は君が着ていろ」
「なんでですか!?さっき受け取りかけたでしょ!?」
「いいから着ていろ。みなまで言わせるな」
「なんですか!?気になるから言ってくださいよ!!」
「…………透けているんだ君の下着が」
「……はっ!」
「だから早く着直せ。それでは痴女だ。しまえ。男の視界に映すな」
「桜庭さん、顔赤いですよ?」
「顔を見るな」
「ブラ見ただけでそんなに赤くなっちゃうんですか?初心ですね」
「黙れ」
「……もっと見ますか?」
「辞めろにやけながら近づいてくるんじゃない君は本当に痴女か!?」
「あはは面白いですね桜庭さんもしかして童貞?」
「童貞ではない。人並の経験はある。いいから離れろ」
「あははは!」
「あ!輝さん!薫さんとプロデューサーいましたよ!」
「おっ、あんなとこで雨宿りしてたか。早く傘持って行こうぜ」
「……輝さん、やっぱりストップ」
「ん?どうした翼、早く迎えに行かないとあの二人風邪ひくぞ」
「待ってください輝さん。よく見てください、あの二人、距離がとても近くないですか?」
「……確かに。めっちゃ密着してるな。なんだぁ桜庭も隅に置けないな、まさかのプロデューサーとスキャンダルかぁ?」
「ふふ、少し、二人きりにさせましょうか」
「だな。あと五分くらい経ってから迎えに行っても、風邪ひかねぇだろ」
「ですね!」
そのロケ中、桜庭とプロデューサーが二人でいると、天道と柏木はそわそわニヤニヤとしていて、桜庭は頭をかしげるのだった。
180513 企画提出
180611 加筆