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▼ 高校生ローに迫られる

――ガタリ。
トラファルガーが椅子から立ち上がる。その表情は強張っていた。私を見つめて逸らさない瞳は、どこか苛立ちを感じる。それでも私は、そんな彼に対して謝罪を入れるだとか、ご機嫌を取るだとか、そういうことはしようとは思わなかった。否、したくなかった、という方が正しいかもしれない。
何はともあれ、私が今、徐々にトラファルガーに壁へと追い詰められていっていることには変わりはない。放課後。教室。男女。二人きり。そんなワードが羅列するそんな状況。その中で、やましい気持ちが芽生たとしても、それは健全な高校生なんじゃないだろうか。

「何故、曖昧な断りをした」
「……そっちこそ、昨日は随分激しい夜を過ごしたそうじゃない?」
「今質問しているのは俺だ。答えろ」

窓を背中に椅子に座ったままの私と、それに覆いかぶさるトラファルガーの姿は、どこか真面目さに欠ける。そもそもその体勢は端から見れば、男が盛って女を押し倒しているような図にしか見えない。真面目も何も、不健全の塊だ。
トラファルガーは私の左手首を強く掴み、頭上の壁に押しつける。かなり、痛い。細い腕を袖口から見せるのに、その力は確かにそこからやってくる。あまりに痛さに顔をしかめ、尚且つ静止の意を込めてトラファルガーを睨み付ける。しかし、彼は楽しそうに顔を弛ませるだけだった。

「フ、いいなその顔。たまんねぇ」
「……っ、変態っ」

罵りを放っても返ってくるのはトラファルガーの深くなった笑みだけだった。そして、トラファルガーは更に愉快そうに口角を上げ、

「そんな変態に惚れたのは、どこのどいつだ?」

と、ゆっくりと顔を右耳に近付けた後、耳の輪郭を焦らすように舌で弄びながら言うのだ。思わず顔に羞恥が現れる。認めたくない事実だが、トラファルガーとは恋仲であり、私はこいつに恋している。

「ほら、早く答えろ。犯すぞ」
「……っ、っ、ぅ、んぅ」

絶対に、絶対にトラファルガーの思い通りにはさせたくない。そうやって私が素直になれないから、他の男から告白されても完璧な断りは入れないし、トラファルガーもわざと私に判るように他の女を抱く。互いが互いを嫉妬させようとし、結局は自分が嫉妬する。周りから見ればキチガイにしか見えないのはわかっている。が、これが私達にとっての愛情確認なんだ。他の男に告白される度、トラファルガーならもっと私の心臓が頑張っちゃうようなことを言ってくれる。他の女を抱く度、キスする度、私との情事を思い出し、気持ちが高ぶる。二人とも、変態なのだ。
トラファルガーの舌は止まらない。わざと自分の艶やかな呻き声を混ぜながら私の耳麻痺させる。毎回そんなことをさせられたお陰で、私の耳の感度は常に絶好調だ。

「ん、…はぁ、雫…」
「う、ん、…ろ、ぉ、……ん」

いつもは呼ばない名を紡げば、唇同士は合わさる。この瞬間が、―――甘美。
仄かに香る女が使うようなリップの匂いが香って、私はローの唇をねっとり舐めた。









こんな高校生は嫌だ 110406



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