ヒカリが家出して森で迷子になった時、俺が見付けて、一緒に手を繋いで家に帰った。俺が湖に落ちた時はヒカリが必死に俺の腕を引っ張って、岸へ上がらせてくれた。二人で親父のアルバム写真に落書きして怒られた時は涙目になりながら二人で必死に謝った。

二人でいる事が当たり前のように過ごしていたら近所でちょっと噂されるぐらいになって、ヒカリがそれをよく気にしていたけれど、俺はいつもどうりにヒカリと接した。何て思われようが別に良かったし、何よりヒカリと一緒に居るのが好きだったから、噂なんか二の次だった。





「…ジュン」

「ん…」

「ジュン!!」

「…っわ!なんだってんだよー!ヒカリ、いきなり脅かすなよな!」

「ごめん。でもこんな所で寝てたら風邪引くよ、もう夕方だし」


思い出した。母さんにマサゴで買い物頼まれた帰りに、シンジ湖でちょっと休憩しようと思って……て、

「夕方!?ちょっやばい寝すぎた!」

頭についた草も払わずに飛び起きて立ち上がろうとしたが、急ぎすぎたのか俺はバランスを崩してまたさっきと同じ草っぱらに尻餅をつく。

「いっ…」

「大丈夫だよ、今日ジュンと私のお母さん近所でお呼ばれされて今二人とも家に居ないから」


もう少しゆっくりしていけば、と俺の頭についた何枚かの草を取りながらヒカリはにこりと笑った。


まったく相変わらずマイペースな奴だ、と思いながらもう一回きちんと座り直す。やっぱり旅をしたからって小さい頃からの性格は変わらないんだなと思った。まぁそれはヒカリと正反対のせっかちな俺が最も当てはまるんだが。

旅を続けてもう1年以上たとうとしている。ヒカリは晴れてシンオウチャンピオンになり、俺もタワータイクーンである親父に挑めれる様になってきた。
夢の夢であった憧れの父への背中に、一歩ずつだけど近づいて来たことが確信できた。

お互い別々の旅だったので当たり前だがヒカリと一緒にいる機会もかなり減った。(今までは毎日会っていたせいでもあったが)それが寂しくない、と言えば嘘になる。強いポケモンに会った時、珍しい場所に着いた時、ヒカリの顔が浮かぶ。

俺がヒカリが好きだと自覚したのはつい最近の事だ。正直、俺は自分の気持ちにかなり焦った。俺は今の関係が好きだった。幼馴染み、ライバル、親友………この関係で満足出来るはずだった。だけど、
いつからだろう。



「…ヒカリ、そういえば実家に帰って来たのか?」

「うん、最近はずっとコンテストで急がしかったんだけど急に帰りたくなっちゃって」

「ふーん…そういえば最近全然会ってなかったもんな俺達」

「うん…だから、ジュンに会いたくて。今日シンジ湖に行ったらジュンに会えそうな気がしたんだ。」


そう恥ずかしげもなくとんでもない事をさらりと言ってにこりと笑う幼馴染みの顔を照れ臭くて上手く見ることが出来なかった。


真っ赤な顔を必死に顔をそらして隠す俺を不思議そうにきょとんと見る幼馴染み。

くそ!自分の気持ちに気付いたのはいいけれどまだまだ先が長そうだ。

ジュンはどうしようもないこの気持ちを何だってんだよ!と声に思わず出してしまった。







title スタート

ジュン→ヒカリ片想いジュンヒカです。ジュン君がちょっと女々しいです。

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