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今から40年ほど前、とある国に飛行船の技師がおりました。
幻緑と呼ばれる大木のある土地。技師はそこでとても美しい人と出会いました。
緑人と呼ばれる美しい人。
技師はその美しい人に恋をしました。
国に戻った後も技師はその美しい人の事が忘れられません。
その後何度かその土地に戻っても、美しい人には出会えませんでした。
恋に狂った技師は、やがて1つの思考に捕らわれました。
そうだ、自らの手であの美しい人を造りだそう。
技師は飛行船の造船の傍ら、人工人間を作る研究を始めました。
何体、何十体、何百体と失敗を繰り返す内、1つだけ、成功に近づけました。
けれど、それも失敗作。
両足と右腕が腐り落ちてしまったそれは、ただ1つ風の魔法に優れていました。
技師は言いました、君のその素晴らしい魔法で僕の作った飛行船を守って欲しい。
それは言いました、もちろんいいとも。僕に出来ることなんてそれくらいだろう。
それはただただ、技師の言いつけを守り飛行船を守りました。
やがて、飛行船は忘れ去られ、それもまた眠りにつきました。
時は流れ、誰かがそれを目覚めさせました。
飛行船を守って欲しい。
それにとって覚えていたのはそれだけ。
それは飛行船を奪いに来たニンゲンを殺し始めました。
そうしていく内にそれは飛行船の動力が切れている事に気付きます。
大変だ、このままでは動かせない。
それは風魔法が使えるニンゲンを狙います。
風魔法があればまた飛行船は飛ぶことが出来る。
まず一日。一ヶ月。十年。
それはニンゲンを殺しました。
やがてそれを聞きつけたニンゲンに投獄されるまで、それは創造主の命令を聞き続けたのでした。