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「こんにちはナイトメア。相変わらず酷い顔色だね」
駅長室。
革張りの偉そうな椅子に座った子供に私は笑いかける。
まあ、私も見た目だけなら子供なんだけどね。
14歳で成長なんて止まってるし。
「君は相変わらず酷いな!」
「何でだろう、みんなそう言うんだよね」
世の中は不思議がいっぱいだよね。
「不思議・・・?君の場合は自分の胸に手を当てて考えてみたらどうなんだ?」
「うーん。そんなこと言われても無い胸に当ててもな」
驚くくらいの貧乳だ。まな板。
まあ中学生だしね。仕方ないよね。
ナイトメアがドン引きしている。
「あ、子供相手に変な話してごめんね」
「君も子供だろう!?」
肩をすくめる。
子供と言えば子供なんだろうけど・・・。
微妙だな。
「ナイトメアよりは大人だよ」
ある意味ではこの世界の大人よりも大人かもしれない。
何度も何度もやり直しているから、大人と言っていいのかも微妙。
どっちにしても中途半端なんだよね。
・・・あ、また事故だ。
「さて、事故が起きたら偉い駅長さんは仕事をしなくちゃいけないからね」
私は体を伸ばして踵を返す。
「君は次は何処に行くんだ?」
「行き先、決まってないの。暫く駅の領土で過ごそうかなって」
グリーフシードのストックはある程度溜まっているし、暫く働かなくても何の問題もない。
「死にたいんだな」
「そんなことはないよ?」
嘘。
死にたい。
でも自分で自分にかけた呪いは解けたりなんてしないから。
私は魔女になる絶望をいつも感じながら生きて行く。
「他の役持ち達が君を気持ち悪いと言うのが少し分かったんだが」
「あのさ、ナイトメア」
思っても口に出さない方が良いと思うよ。
「流石引き籠もり。女心が分からないはずだ」
「だ、誰が引き籠もりだ!」
「ナイトメアに決まってるでしょ」
流石に言っていい事と悪い事の区別くらいつけようよ。
死ぬよ?・・・まあ殺されかけたらグレイが助けるんだろうけど。
「ま、いいや。真面目に働きなよ?駅長さん」
事故の名残のような悲鳴を聞きながら私は駅を後にする。
次は何処に向かおうかな。
もう少しで始まる測量会を思うと少し気が重くなった。