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「 」
嫌な夢を見た。
私があの害獣と契約したときの夢。
舌打ちをしながら体を起こすと視界に入る美術館の部屋。
今はここの館長であるジェリコと契約を交わしているから、契約中はここに住まわせてもらっている。
ベッドから起き上がり服を整える。白銀色のソウルジェムを手に持つ。
前の世界で死んだ私は死ぬ間際に時間を呪った。
そのせいか私は今時間の国に生まれ変わる事になった。
最初はこの世界の人間だったのに、徐々に覚醒し、目覚めた今ではきちんと心臓を持っている。
不思議だ。
「おはよう、ジェリコ」
時間が狂っているからそれで正しいかは分からないけれど。
「ああ、アンタか」
人の良い笑顔を浮かべる墓守頭はマフィアのボスには見えない。
まぁ帽子屋もマフィアには見えないんだけどね。
「今回の契約は、分かってるな?」
「分かってるよ」
出来るだけ愛想良く笑ってみた。
ジェリコが微妙そうな顔をしている所を見ると失敗したみたいだ。残念。
「じゃあいつも通りグリーフシードは貰っていくから」
「ああ、それはアンタが持っていってくれて構わない」
ジェリコに別れを告げて美術館の中を歩く。
ジェリコ=バミューダ。
死人の男。
ああ、羨ましいなぁ。