ミホークが黒剣を外して立てかけて、椅子に腰掛ける。
すかさず背中から抱きつくと、身じろぎもしないで、どうしたと訊かれた。
「…何となく、じゃだめ?」
「いや」
だってミホークは背が高い。
座ってる時でもない限り、肩に腕を回して背中から抱きつくなんてできないのだ。
広い背中からは、潮の香りがした。
「ミホークって海賊なのね」
「今更何だ」
「だって、海の匂いがするんだもの」
海賊ってそういうものでしょう?
問えば、そうだなと返ってきた。
潮の爽やかな香りと、ミホークの男らしい匂いと、そしてもうひとつ。
「ミホークからは空の匂いがするわ」
「そうか」
「だって、鷹なんでしょ?」
ほんのすこし笑いを込めて言うと、一瞬の沈黙。
苦笑のような息と一緒にそうだなともう一度。
海と男と空と。
私の好きなものを彼は全て持っている。
いや、彼だから好きなのか。
心を奪うのは鶏か卵か。
「…わ、ちょっと…!」
「背中から煽るとはいい度胸だ」
背中から前面に抱きかかえられて、ニヤリとした顔が眼前に迫る。
同時に強くなる香りにくらくらした。
これこそ私を心底煽る。
「…ミホーク、キスして?」
「お前が先だ」
鶏か卵かなんてどうでもいい。もっとかき抱いて私だけを包んで欲しい。
意地悪、と呟いて口づけて、もっと酔いたいと腕を首に回した。
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