ソファに座って、本を読みふけるイザークを後ろから見つめる。構ってもらえなくてさみしい、わけではない。ただ手持無沙汰なのだ。
切りそろえられた綺麗なプラチナ・ブロンド。こういう髪の色やこういう髪型は、もとの顔立ちが美しくないと似合わないのだと実感する。
そのとき目についたのが、誰のだかは知らないが、ひっかけてあった帽子だった。
「!? な、何をする!」
「あ、ごめんなさい。驚いた?」
いきなり帽子をかぶせられれば誰だって驚くだろうが、と頭にのっかった派手な帽子をおさえて、イザークが切り返す。それはそうか。
何だかんだで帽子を脱がずにそのままでいてくれるイザークを、じっと見つめてみる。
「………なんだ」
「………ううん、なんか似合うなぁって……ふふ」
そう言いながらも思わず吹き出してしまったのだが。
羽飾りがでかでかとついた、紫色のビロードの帽子。中世の貴婦人あたりがかぶってしゃなりしゃなりと歩いていそうだ。イザークの美貌と相まって、男であるにも関わらず、何だかとても似合って見えてしまった。
「お前、それは笑って言う台詞か!?」
「ご、ごめんなさい…ふふ、でもイザーク、紫が似合うわね」
今度は違うのを買ってみるから、またかぶってね。
そう言うと、イザークがにやりとして、かぶっていた帽子をつかむと私の頭上におしつける。
「ほう、似合わんな」
「……率直すぎる感想じゃない?」
「だったらお前にもちょうどいいのをくれてやる」
間違いなくかぶれよ? と言われて何だか背筋が少し寒くなった気がした。
数日後。
「ねえ、お揃いってどういうこと?」
「嫌なのか?」
「嫌、じゃないけど……似合うのかなぁって」
「似合うにきまってるだろう、俺が見たてたんだからな」
まあ頭が寒くないし、イザークが言うのならきっと真実だろう。
二人の頭の上に、同じ色のあたたかな毛皮の帽子を乗せて、手をつないで外を散歩できるのは、もう少し先の季節。
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