赤司征十郎
『征十郎さん、お疲れ様でした』
「あぁ、遥」
そっと彼女の手を取り、会場を後にする。
「今日もお手柔らかに頼むよ」
自宅に戻り、彼女と対面する。
彼女、遥は女流棋士だ。
彼女が指す姿につい見惚れてしまい
負けるなどあり得ない僕でも
いつも負けてしまう。
『ふふ』
遥はいつもの様に
ごめんなさいね、と微笑む。
今日は我慢出来なかった。
「遥」
キュッと手首を掴み引き寄せる。
『征十郎さん…?』
「もっと、楽しいことをしよう」
意地悪く笑うと
遥の顔が引き攣るのが分かった。
「こんな気持ちにさせるのは、遥、君だけだよ」
END