きっと夢中にさせるから




「栗宮さん、教科書忘れたみたいなんで見せてもらっていいっスか?」





隣の席になった
大人しくて控えめな栗宮さん。





メガネのレンズの奥に
綺麗な瞳があるのを知ったのは最近で
興味があった。






『…はい』





こくっと頷きくっつけた机の間に
教科書を広げてくれた。







自然と距離も近くなるのに
意識してるのは自分だけのようで
栗宮さんはいつも通りだった。







ふ、と眼鏡を外し
レンズを拭き始めたのに気付いた。





「栗宮さん」




控えめな声で呼ぶと
真っ直ぐ大きな瞳がこちらを向いた。







「っ…か、可愛いっス」




突然の言葉に唖然として
すぐに眼鏡を掛けた。







『あ、ありがとうございます』





たった一言、小さな声で返ってきた。





授業が終わる頃
ノートの端にペンを走らす。







ー今度の土曜日
練習試合、観に来て。






トントン、と軽くノートを叩き
栗宮さんに見せる。







読み終わった途端
首を横に振り


ー行けないです。


と一言書かれた。







ー用事があるんスか?


ーあります。



ーいつか来てもらいたいっス




と、そこまでやり取りしていると
号令が掛かった。








机と机が離れる。




二人の距離もひらく。







「栗宮さん、きっと夢中にさせるから」








と、言うと
栗宮さんが微笑んだ気がした。








君に夢中な今日この頃。










end





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