俺の目の届く範囲にいてくれ
「栗宮はどこいった?」
練習試合に相手校まで来て
彼女がいないことに気づく。
4月にマネージャーとして入部したばかりだが
一人一人に気を配れる優秀な子だ。
だが、どこか危なっかしくて
目を離すとこうだ。
「俺、探してくるっス」
と言う、黄瀬を引き止め
携帯に連絡してみる。
《笠松先輩…ま、迷いました。》
涙声の彼女に近くに何が見えるか聞き
急いで向かう。
「栗宮…俺の目の届く範囲にいてくれ」
涙目の彼女の頭を撫でてやり
急ぐぞ!と手を引いて相手校へ向かった。
彼女の顔が赤かったことには気付かず
恋から愛に変わるのはまだ先のこと。
end