わたしだけにキスして





「トゥルーオーシャンの新しいCMみた?」




「みた!キセリョ出てたよね〜!」







彼との待ち合わせ場所に来ると
他校の制服を着た女の子達が話していた。





涼太くん、CMまで出てたなんて。





しばらく会話に耳を傾けていると





「私もあんな風にキスされたいー!」


「まずは相手探しでしょーが」




「お待たせ〜!」





ともう一人やってきて
彼女達は立ち去った。







ートゥルーオーシャン


あなたの髪に潤いをー





ふ、と見上げると
ビルに備え付けられている
巨大なエキシビションにそのCMが流れる。







愛しい彼が
女性モデルの髪にキスを落として
最後は二つの影が重なった。










タイミングを見計らったようで
とても哀しく、情けなくなった。







待ち合わせ場所から離れようとした時
ぎゅっと後ろから抱きしめられた。







「待たせちゃったっスね、遥っち」






黙っていると
サングラスを掛けた彼が覗き込んできた。







「何かあった?」





いつになく真剣に
不安そうな顔をしたのが分かった。






首を横に振るけれど
涙が溢れてくる。






『涼太くん…キスして?』






ようやく出た言葉に
彼は笑顔になって、サングラスを外した。








周りにいた人達が気付き始める。






それにはお構いなしで




「大好きっスよ」






と、唇を重ねてきた。








わたしだけに
キスしてー









「あのCM、実際にはしてないっス。まぁ可愛い遥っち見れたし、俺としては良かったけど」








そう言って
意地悪く笑う彼を許せてしまうのは
大好きだから。









end







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