夏休みは永遠に





※学パロ注意!



「うああああぁぁああぁああぁああぁぁぁああぁあぁあああ!!」
「叫ぶなうっとおしい」

目の前に広がる膨大な紙束を見て机に倒れこみながら叫ぶと涯に頭を叩かれた。
挙げ句、さっさとやれとばかりにグイグイとペンを握らされる。

「もう嫌だ!無理だよ出来ない…!」
「いいから黙ってやれ」
「うぬぅおおおおおお…何故私がこんな目にぃ……」
「阿呆か」

呆れたように息を吐き、「お前が夏休みの宿題を溜め込んでた事がそもそもの原因だろ」ともっともな事を言った。
的確な…というか本当にその通りなので何も言い返せない。

8月31日…それは夏休み最後の日にして、一部の学生にとって地獄と絶望を味わう日である。
本当はいのりや集くん達を巻き込んで海に行く予定だった。のに、私がその“一部”の学生に入ってしまった為にその輝かしき予定は儚くも消え去り、代わりとして辛い人生の壁と鬼教師がやって来た。
………つまるところ、溜め込んでいた夏休みの宿題の清算時期が来たのである。

「っていうか何で涯何だよおおおおお!」
「満場一致で適任だと指名されたから、だな」
「むー!」

しかし確かに監督官・涯は適任である。優しい私の友人たちは何だかんだで手伝ったりと助けてくれる。というか、見逃してくれる。
が、この男、恙神涯はそうはいかない。
授業のように事細かに時間割を決めるし、ノルマも課す。そして何より、そのノルマを達成する為に厳しい監視と鬼畜な授業があるのだ。
つまり何が言いたいのかというと勉強が嫌ということだ、極論だが。

「もう絶対終わらないってば!終わらないものをやってもしょうがないし、諦めて遊びに行こうよっ!」
「発想の転換をしてみろ。終わらないと決めつけず、かつ、せめてやれるところまでと考えれば終わるだろ」
「そんなん考えらんない」
「そもそも、俺が組んだこのスケジュール通りにやれば終わらない訳がない」
「このスケジュール鬼畜すぎるんだよおおおお!」

頭を振って「無理!」という気持ちを全身で現すが涯はそれを適当にあしらい、数学の説明を語り始めた。彼には悪いが、正直呪文にしか聞こえない。
とりあえず、涯の言う通りの数字を書き列ねてはみるが、やはり頭の中には入らず、今頃海ではしゃいでいるのであろう友人達の姿を思い浮かべた。

「海…」

行きたかった、などという言葉を(一応自業自得なので)飲み込んで我慢したが、やはりしょげる。いや、むしろ私のせいで自分までも行けなくなってしまった涯に申し訳ない、鬼畜だけど。

「…ごめんね、涯…」
「……そろそろだな」
「え?」

掛け時計を見た涯がふと微笑んでそう言った。
そろそろ?

「何が…―――」
「名前ー!!ちゃんと宿題やってるー?」
「え、ツグミ…!?」
「あら、意外と進んでるのね。やっぱり監督官は涯で良かったわね」
「あ、ほんとだ…っていうか、名前モナカで良かった?一応無難なの選んだんだけど」
「え、綾瀬と集も…え?」

続々と部屋に入ってくる、海にいたであろう友人達の姿に呆然とする。何でここにいるの?
涯に助けを求めるように視線を合わせると笑ってはぐらかされた。

「?涯…話してなかったの?」
「あぁ、その方が面白いと思ってな」
「面白い!?え、ちょ…誰か説明プリーズ!」

いのりの問いに楽しそうに答えた涯は集から小豆モナカを受け取った。
綾瀬が曰く、私と涯を残して海に行くのもつまらないのでいっそ宿題と闘う私の家で集まって遊ぼう!という話になったんだとか。そして彼らはその準備として買い出しに行っていたんだとか。「っていうか、一番楽しみにしてた名前を置いてく訳ないでしょう?」
「!綾瀬ぇ…!!」

アイスを手渡されながら笑う彼女が輝いて見える。ああ…本当になんていい友達なんだ…!

「とりあえずアイス食べてさ、宿題もさくさくっと終わらせなよ!で、皆で借りてきたホラー映画見よ?」
「名前、昼ごはん適当に作るから台所借りるね。宿題も頑張ってね」
「応援する」

綾瀬に続いてツグミ、集、いのりもそう言う。
そして涙腺崩壊ギリギリの私に追い討ちをかけるように、

「お前はやれば出来るだろ、頑張れ」

滅多に誉めない涯のその台詞にとうとう私は泣き出したのだった。




(ふ、ふえぇぇぇぇ…)
(!?ちょ、涯が名前泣かした!)
(待て集!それは語弊が……)
(涯サイテー(笑))
(見損ないました(笑))
(名前、可哀想(笑))
((笑)ってなんだお前ら!)


title by 月希の夕方



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