もっと触って頭を撫でて
※さりげなく、短編「ダメだよ、そこは私の特等席」の続編だったり
to :桜満集
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ごめん、風邪ひいた(´・ω・`)
今日はいのりちゃんと二人で行って(^^;
というメールを打って送信ボタンを押した。暫く経って「送信完了」の四文字を確認したら顔近くに上げていた腕と手の中にある携帯を枕元にポトリと脱力するように置いた。
「やっちゃったなー…」
誰に言うでもなくそう発する。当然ながら返ってくる言葉はなく、小さく呟いたその言葉は静まりかえった自分の部屋に響いただけとなった。
今日は、集と映研部の買い出しに行く予定だった。っいっても、いのりちゃんも一緒だったけど。
それでも、常にいのりちゃんと二人でいて、他の人たちを寄せ付けない雰囲気を纏わせた彼に近づくには十分すぎる理由だった。
だった、のに………。楽しみにしすぎて髪を乾かさずに寝て当日に風邪をひいた、なんて滑稽すぎて笑えない。子供みたいなミスに自嘲しつつも止まらない咳に苦しくなる。
あぁ、今頃彼はいつも通りにいのりちゃんを横に連れて町を闊歩しているのだろう。
「会いたい、なぁ」
「え、誰に?」
「そりゃあ………ん゛ん゛!?」
独り言のつもりで発したその言葉に返答が返ってきたことに驚き、部屋の入口を見やるとそこには町中にいる筈の集がいた。
「な、なんで…!?」
「なんでって…お見舞いに。あぁ、ほら…起き上がらないで寝てなよ」
勢いよく上げた上半身を近づいてきた集はぐい、とベッドに戻した。
「え、だって…買い出しは!?いのりちゃんと行ってるんじゃ…」
「買い出しは颯太に行ってもらった。それより熱は?薬は飲んだの?」
「え…でも…いのりちゃん、は……」
「?だから、いのりは颯太といるって」
「そうじゃなくて!良いの!?彼女なんでしょう!?」
自分で言っておいて、ぐっと胸が締め付けられるような痛みを感じた。
でも、確かに言っておきたかったんだ。いのりちゃんに何か言われでもしたら、私はきっと息が詰まって何も言えずに崩れてしまう。
「私は、いいから!いのりちゃんのところに…!」
「何をどう勘違いしてるのか分からないけど…僕といのりは付き合ってないよ」
「…え?」
「大体、僕は…名前が……」
急に俯いた集は頬を紅く染めてボソボソと喋った。
そんな状態の彼が私の名前を出した事で私の顔も暑くなる。私は鈍感じゃない。この反応が何を示しているのかくらいは、一応、分かる。
「それって……」
「っいいから!早く寝てなよ」
軽食作ってくるね!
と早口にそう言って背中を見せた彼に私は焦った。
待って、行かないで。
そんな意味を込めて離れていきそうだった手をギュッと握った。
「え?名前…?」
「ご飯はいい、から…そこにいてよ」
貴方の隣に、居て良いのがまだ私なら……
「っ…うん」
隣に座った集が、私の頭をそっと撫でる。それが心地好くて、もっとと言わんばかりに彼の方に頭を傾けた。
title by 雲の空耳と独り言+α
◎オチが微妙とか言わないで!風邪ネタ多いとか言わないで!自覚はあるから!