居酒屋『九州男』と中華店『黄金屋』

前スレであった居酒屋『九州男』と中華店『黄金屋』のリスペクトです。『九州男』中心。
創作要素強めです。苦手な方は注意。
そういえばこのスレじゃ居酒屋と中華店あるんだよなあ
→あれどっちも中の曲消えるじゃん
→じゃあこれらの店ってどうなるんだろう
→そういえばヨシタカ四姉妹(特に長女)が店欲しがってたような
→これ繋がるんじゃね?ちょっと書いてみよう
そんな勢いだけで書きましたすいません。
誰得だなんて言わないでください。俺得です。
文章力ない上口調が安定していません。
蝶々喫茶はほとんど出てきません。コナオリ派の方すいません。
おまけにやけに長いです。9000文字近くあります。
それでもおkならどうぞ。

【登場人物(曲)】
・メッセンジャー
・ゴールデンハウス
・纏
・今
・エバンス
・エアレ
・アルビダ
・フラワー
・ジョマンダ

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 「……これでよし、と」
 メッセンジャーことMusical Messengerが彼の経営している居酒屋『九州男』の扉を閉め『閉店』と書かれた紙を貼ったのは、今日の開店時間が過ぎた後のことだった。
 「寂しくなるなあ」
 誰に向けるでもなく、メッセンジャーはそう呟いた。店から毎晩のように漏れていた明かりは全て消され、ちょうど今荷物の整理を終えて、鍵も閉めたところだ。そして扉には『閉店』の文字。
 居酒屋『九州男』は、次作で経営者であるメッセンジャーが削除されることから、今日を境に完全に閉店となったのだ。

 「あ、メッセンジャーさん……そっちも閉めちゃったんですね」
 ハウスことGolden Houseが、既に闇にかかった建物の前に立つメッセンジャーに話しかけた。手と背には多量の荷物。彼女が経営していた中華料理店『黄金屋』も、メッセンジャーと同じ理由で今日閉店となったのだ。『黄金屋』は昼、『九州男』は夜、と時間帯を変えて、共に筐体内の曲たちが食事をとったり談話したりどんちゃん騒ぎする場所となっていた。トラブル(レベルの高い曲が騒いで店内のものを壊したり等)があったり、後からオープンした蝶々喫茶に立場を奪われそうになったりしながらも、なんだかんだで今日まで愛されていた。
 もちろんそんな場所だからこそ、閉店パーティーも盛大に行われた。『黄金屋』では、名物である八宝菜がしばらく食べられなくなるから、とエアレがやけに沢山八宝菜を注文し、おまけに開店時間中ずっと満席になるほど客が来たため、ハウスは今までに無かったような忙しさに追われた。
 『九州男』の方も、これまた大変だった。『黄金屋』のような客入れ替えはほとんど無かったが、やはり席はずっと埋まっていた。皆、酒やつまみをどんどん注文してくるため、やはりメッセンジャーも今までになく忙しかった。だが、どっちかといえば客とあれこれと話している時間の方が長いような気もした。酔ったエバが大暴れして備品を壊したりもしたが、
 『ええよええよ。どうせ最後やし、どんちゃん騒ぎしようや』
 と、メッセンジャーは軽い調子で流したのだった。

 それが、ほんの数時間前のことだ。客を全て帰らせ、備品の整理をして、壊れたものを片づけ、そして鍵を閉めた。普段していた作業だったが、どこかに寂しさを覚えられた。
 「もうじき取り壊しかのう」
 「……そうでしょうね。多分、ソーサーにアップデートしたときに同時に消されるんでしょう」
 寂しくなるな。メッセンジャーはさっきと同じ台詞を、今度はハウスに聞かせるために呟いた。ハウスは声を上げず、小さく頷いた。風が吹き、『閉店』と書かれた紙が音を立てて揺れた。夜は既に深く、あと数分で日付が変わろうとしていた。
 「さて、帰るか。明日からは羽を伸ばそうや、ハウスちゃんよお」
 うーん、と軽く伸びをして、メッセンジャーはハウスの方を向いた。ハウスはまた頷いた。さっきより少し深めに。メッセンジャーがひょい、とリュックにまとめた荷物を背負う。それにつられてハウスも背の荷物を背負い直した。
 メッセンジャーは一度自分の店に背を向け、そして振り返った。看板には『居酒屋 九州男』の文字。目で文字をなぞり、しばらく自分が長い間生活を共にした店を見つめ、入り口の『閉店』の文字を見て、そしてまた背を向けた。ハウスは横目で店を見て、歩き始めたメッセンジャーについていくかのように足を動かした。

 風が吹きだした。ハウスのシニヨンから垂れる髪がなびいた。と、メッセンジャーの足が止まった。道の先から、誰かが大声で彼のことを呼んでいたからだ。
 「おーい!オヤジー、オヤジー!」
 纏だった。メッセンジャーのことをオヤジと呼べるような外見ではないが、彼もまた『九州男』の常連客の一人だった。隣には今、エバの姿もある。三人は駆け足で二人のところへと来た。
 「どうやら、俺の弟がオヤジに用があるみたいだぜ」
 今がメッセンジャーに説明する。曲調の違いのせいか、三十代にも見えるかどうか微妙な今の弟には見えないほど背が高く顔も老けている纏が、
 「ああ、オヤジも兄貴も次引っ越してまうからなあ。ワシにも何かやれるこたあないかと考えとったんやけど、これぐらいしか思いつかんかったわ」
 と言った後に付け足すように、なあ兄貴、と今の方を向いた。
 「いや、俺は知らんぞ?お前がいきなり『メッセンジャーのオヤジんところ行こうぜ!』とか言い出すから連れてきただけだけど」
 今以外の四人がずっこけた。
 「言ってなかったか?これ準備してたんや」
 纏は持っていた鞄から一枚の紙を出した。そしてそれをメッセンジャーの目の前に広げた。そこには、印刷の字でこう書かれていた。

 『誓約書 私は九月二十五日のjubeat saucerの稼働より、居酒屋『九州男』の経営を纏に依頼する。 居酒屋『九州男』代表者 Musicai Messenger jubeat copious初出曲 纏』

 メッセンジャーの名の横には空欄がある。そしてその横にはまた空欄があり、印刷の字とは真逆の汚い字で『纏』とサインがされている。
 「……何や、これ」
 「簡単に言えば、オヤジの店をワシに譲ってくれんか、ということや」
 纏は、皆に自分の秘めた思いというものを話し出した。コピオスになってから蝶々喫茶の開店までタイムラグがあったことから初めて来た店がここの『九州男』だったこと、何も分からないまま入って最初に来たのがそこだったから初めて話した先輩の曲がメッセンジャーだったこと、金も持っていなかった纏に
 『ええで、来たばっかりやろ?サービスや』
 と言って、無料でたらふく食べさせてくれたこと、コピオス最初の客だから、と言ってよくサービスしてくれたこと、この場所が彼にとって最高の場所になっていたこと。
 「そんな場所が無くなるんは、悲しいんや。だからせめてワシが形だけでもここを残してやろう、って思うてな。お上サンにダメ元で頼んでみたらOK貰ったんや」
 「メッセンジャーさん……」
 ハウスはメッセンジャーの顔を見た。突然のことに目を見開いている。そんなメッセンジャーの顔を纏は今一度見ると、にっ、と笑った。
 「後は、オヤジがここにサインするだけや。この店は残す。形だけでも、ワシが残してみせるわ」
 「……纏…………」
 風が強く吹いた。ちょうど店の方を向いたエバからは、扉の『閉店』と書かれた紙が剥がれ、今にも飛びそうになるのが見えた。同時に時報が鳴った。日付が変わった音だった。

 時報が止んだ直後だった。
 「馬っ鹿もん!!」
 メッセンジャーは纏に声を上げた。はっ、と纏は真顔になった。怒りの表情を露わにしたメッセンジャーは、纏の前へと足を進めた。
 その場にいたメッセンジャー以外の誰もが、この瞬間メッセンジャーが纏の持つ誓約書を破ると思った。纏は身構えた。他の三人も心の準備をした。
 だが、メッセンジャーの行動は四人の予測とは正反対のものだった。
 「そんな嬉しいこと思うてたならもっと早う言わんか!!」
 メッセンジャーは纏の持っていた誓約書を奪い取り、ズボンのポケットから伝票書きに使っていたボールペンを取り出すと、ノックし、そこに文字を書き加えた。
 「ほら、これでいいんか?」
 ボールペンを直しながら、纏に誓約書を見せる。そこには、達筆な字……纏にはよく見覚えのある『九州男』の手書き伝票の字で、彼の名の横の空欄に『Mussical Messenger』と書き加えられていた。纏、今、エバがそれを見たのを確認して、メッセンジャーはもう一度声を発した。
 「形だけでも、ってワシが半生を共にした店をそんな形で受け継ぐことをワシが許すと思うてるんか?ワシの名を受け継ぐんやったら、それ相応の覚悟はしてもらうで」
 「……分かっとる、そう言われると思ったわ」
 「纏……」
 今が纏の方を見た。まんざらでもない表情をしている。こうなるのを見越したような表情だ。今の口角が緩んだ。
 「ハウスちゃん、すまんのう。やっぱり明日も明後日も……saucer稼働までずっと店は開けるわ」
 「メッセンジャーさん……」
 メッセンジャーの顔にも、ハウスの顔にも笑顔が生まれていた。メッセンジャーはUターンし、店の方へと歩きだした。四人はそれに続いた。

 「いいか、纏よう。今日から徹夜は覚悟しとけよ。ワシがここにいられる期間は短いが、無いわけじゃねえ。その間にワシの全てをお前さんに叩き込んだるからな」
 そう言いながら、もう風で取れかけていた扉の『閉店』の文字をはぎ取り、裏に『仮営業 営業時間は通常と同じです』とだけ書いて、テープを剥がして貼り直した。風なんかでは取れないように、さっきよりも頑丈に。
 「おうっ。よろしくな、オヤジ」
 纏の返事にエバが反応した。
 「纏、今日からあんたはメッセンジャーの弟子でしょ?これからはね」
 「そうだな、これからはアレだな」
 今もエバに続いた。纏は言葉を直す。
 「よろしくお願いしやす、師匠!」
 貼り直しが終わったメッセンジャーが後ろを振り返って、そう言って一礼する纏に
 「何か、そんなこと言われると変な感じだな」
 と、力の抜けたような笑顔を浮かべた。
 他の四人も、その言葉に力が抜けて、しばらく声を上げて笑っていた。

 「あ、そうそう。私からもお願いがね」
 そう言ってエバも自分の鞄……なんてものは持っていないので、今の鞄からまた一枚の書類を取り出した。纏がメッセンジャーに見せた書類とほぼ同じものだった。勿論、そこにはヨシタカ四姉妹の名前がサインされている。
 「中華店『黄金屋』を、あなた達姉妹に……?」
 「そうよ、まあ纏みたいな高尚な理由なんて掲げてないけど。単に皆の拠り所が無くなったら駄目かしらってだけで。それとあたしが店やりたいから」
 そうですか、ちょっとそれ貸してください。あ、うん。言葉を交わすと、ハウスはメッセンジャーにボールペンを借りて、躊躇わずにそれに自分の名前をサインした。
 「……やっぱり、考えることはメッセンジャーさんと同じですね。理由があるにしろ無いにしろ、遅すぎです。メニュー教えきれませんよ」
 「……それもそうね。徹夜は覚悟しないと」
 「私ちゃーんと睡眠とらないと体鈍っちゃいますー」
 と言いながらも、顔は活気に満ちていた。何時間でも起きていられそうな顔だった。
 「夜行性でよかったー」
 「もー!」
 冗談混じりでそんな会話を繰り広げる女二人、早速今日のプランを練る男二人。今はなんとなく取り残されてたりした。とりあえず、纏に声をかけた。
 「……纏、大変になったら言えよ。準備ぐらいなら俺も手伝ってやるから」
 「おっ、そりゃ助かるわ!」
 「こーらー、準備まで他の奴に頼ってたら一人じゃあ何も出来んくなんで?今君よお、弟が愛しい気持ちは分かるが修行中はしばらくほっといてやってくれや」
 「そんなあ、師匠ー!」
 「あ、あはは……頑張れよ」
 「兄貴ー!」
 今はやりきれなくなって、今度は女二人のところに向かった。
 「明日なんか手伝えることとかあるか?」
 「あーうん、私はもう店閉めちゃってリニューアルオープンさせる予定ですから、その片づけに入るまでは何もないです」
 「そうか、忙しかったら呼んでくれよ」
 「どさくさに紛れてセクハラしたら発狂投げるわよ」
 「誰がするか!」
 そう言ったら、女二人はまた二人だけの相談会議に入った。
 五人程度のグループだったら、残念ながら大抵の場合二人二人になって一人が余る。一人が頑張っても、大体どちらかの二人グループに入ることは難しい。今もこの状況だった。

 「…………わーからないことが多すぎるー!!」
 今の、突然の悲哀の叫びに、残り四人が驚きの表情を向けた。


 今日は遅いから、男組の修行もメッセンジャーの部屋ですることになった。女組は肌の健康の為に睡眠である。帰り道、メッセンジャーが口を開いた。
 「そういえば、店の名前は何にするんや。どっちもメンバーが違うんやし、さすがに変えなあかんやろ」
 「あ、ワシに案がありまっせ!」
 居酒屋サイドの纏が手を挙げた。
 「居酒屋『ET-KING』!」
 その場の纏以外の全員がずっこけた。
 「居酒屋感が……居酒屋感が……」
 メッセンジャーの口から声が漏れた。纏はきょとんとした顔で
 「いや、オヤジさんのアーティスト繋がりで、これでええんやないすか?」
 「それはそうだけど……」
 ハウスもまた口から声を漏らした。
 「没」
 今が駄目押しをした。纏はちょっとだけしゅんとした。
 「そうだ、中華料理店サイドで何かあるかな?」
 調子をようやく取り戻したハウスがエバに聞く。
 「んー……あたしは特にないわね。語感もいいし、あたしとしては『黄金屋』でいいと思うんだけど」
 「アレか、お前が毎年正月今日チャレ、ハウスが正月の曲だから通じるものがあるのか」
 「いや、そういうわけじゃないと……」
 「まあそういうことね」
 今度はエバ以外の全員がずっこけた。
 「じゃあ『黄金屋』は『黄金屋』のままで」
 メッセンジャーがそう言うと、
 「賛成!」
 「了解です!」
 「そうするの。まあいいけど」
 「んー、まあいっか」
 と、他の四人が答えた。

 その夜五人がどう過ごしたのかは、五人だけ……saucerで残った二人だけの秘密となっている。


 「纏ー、ビールおかわりー!」
 居酒屋『ET-KING(仮)』がオープンしたのはその次の日のことだった。『九州男』を纏が継いだ店として、そして皆の居場所が次作も残るという喜びもあって、やはり店は大繁盛だった。纏は慣れない手つきでレジを操作し、酒を注ぎ、つまみを作った。店の仕事は彼の予想以上に大変だったが、当然ながら纏はそれでもこの店をやめるつもりはなかった。
 saucer稼働までは、纏はメッセンジャーに付いてもらいながら経営の全てを行っていくということになった。元からそういうセンスはあったようで、経営の仕事は優にこなせた。しかし、肝心の料理は全然だった。
 「こらー!纏!つまみ焦げてんで!!」
 「あーっ!!」
 本日何回目か分からないメッセンジャーの怒号が飛んだ。同じく本日何回目か分からないつまみの焦げたものを纏が泣く泣く片づけていると、客の一人、エアレが彼に声をかけた。
 「相変わらずだな、纏。あと一週間無いぜ?出来るのか?ここの仕事」
 んー、としばらく悩んだ後、纏は
 「分からんわ。でも、やるって決めたからにはやり抜いてみせるわ」
 と言って、照れくさそうに笑った。店の忙しさを全然気にしていないような顔だった。

 「おい、纏!談笑もいいが注文入ってんで!早うせんかい!」
 またもやメッセンジャーの怒号が飛ぶ。纏はすいやせーん、と慌てながら、また別の客のところに向かった。
 もたもたすんなや、とかヘタクソ、とか散々怒号を浴びせながらも、その声のどこかに柔らかい何かを感じて、エアレはふとメッセンジャーを見た。彼のその表情が見えた。そしてエアレはふっと呟いた。
 「あれ、おやっさん楽しそうじゃん」

 「もう、何やってるんですか!火が強すぎますよ!!」
 「中華料理って何か強い火でボーってやるもんじゃないの!?」
 「違います!確かにそんなのもありますけど、ここは弱火で作るんですよ!」
 ヨシタカ四姉妹の共同部屋のキッチンで、ハウスがエバに中華料理の定番メニューで『黄金屋』の看板メニューでもある八宝菜の作り方を教えていた。元から頭の回転のよかったエバ含む四姉妹は、あっと言う間に……午前中だけで大体のことを覚えてしまった。知識はあっても、実践は初めてである。当然ながら失敗続きで、既に皿には変な味の八宝菜(アルビダ・ジョマンダ調べ)が五個ぐらい並んでいた。
 「あのー、やっぱり僕が……」
 「フラワーは接客だけしてればいいの!ほら、マニュアル貰ったでしょ?しっかり目を通しといてよ!」
 「えっ、でも……」
 「いいから!」
 エバがわざわざ様子見に来たフラワーを無理矢理キッチンから追い出した。
 「はあ……」
 フラワーはもう一度ハウスが店を開いてる間ずっと使っていたそのマニュアルを開いた。中国語だ。何を書いているのかさっぱり分からない。
 「あのー、ハウスさん……これって何て……」
 「ごめん、今は忙しいから後でね!」
 「…………」
 仕事を無くしたフラワーを、アルビダとジョマンダがじとっとした目で見ていた。

 「おーい、ハウスいるか?」
 今だった。フラワーが代わりに応答し、彼を部屋の中に入れた。
 「どうだ?調子」
 「いいといえばいいですけど、微妙と言えば……」
 そう言ってハウスがちらっと失敗作の山を見た。
 「あなたはどうしたんですか?弟さんは……」
 エバから事情を聞いたらしいフラワーが言うと、今は、
 「メッセンジャーのオヤジが会ったらモチベが下がるだとか言って、会わせてくれねーんだよ」
 と少しばかり困ったような顔をした。
 それと同時ぐらいだろうか。あ、そうだ、と言いながら、エバンスがぽんっ、と手を打った。
 「ちょうどいいタイミングに来た。あんた、ちょっとこれ処理してよ」
 「処理……処理!?」
 アルビダとジョマンダがじっと見ている、外見だけは普通の八宝菜。え、ちょっと……と今は焦りの表情を見せた。
 「いいじゃん、別に食ったら死ぬ訳じゃないし」
 ジョマンダが今に少しばかり不機嫌な表情で言う。
 「いや、キツかったわよ。きっとあんたにしか食べられないと思う」
 アルビダが続いた。今の額の汗が一層増えた。
 「え、え、ちょっと……」
 「お願いします、捨てるのはもったいないので……今日の昼食、まだ食べてないでしょう?」
 フラワーが困った表情で二人に続くと、今はもう、
 「お、おう」
 と返すしかなかった。
 「はいじゃあけってーい。ほら、強制ね。割り箸ならあるから」
 アルビダが割り箸を袋のまま今に投げた。条件反射でそれをキャッチする今。突きつけられる三人の視線。今は覚悟を決めた。割り箸の袋を開ける。割る。そして、意を……胃を決して箸を右手でつかんで、
 「いただきまーすっ!!」
 と涙混じりの声で叫び口にそれをかき込んだ。
 数秒後、今の悲鳴が居酒屋『ET-KING(仮)』にまで響いたのは言うまでもない。


 saucer稼働、ほんの数日前。
 筐体の中では、少しだけ変化が起こっていた。


 END




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【後書き】

 なっげえよ。なぜ長くなった。知らんわ。
 前書き後書き合わせたら9000文字とか。これ前書きでも書きましたね。長いわ。
 これを書き終わる頃にちょうど新曲が発表されました。
幕開け以外のライセンス10が来るとは思ってなくて、このスレもどうなることやらと今から少しわくわくしてたりします。
 最近ではもう閉じこめスレブームは去ってますよね。やっぱりツイッターの普及とかでこういう「皆が作り上げる曲達の世界」は薄れつつあるんでしょうか。
 私もツイッターで曲擬人化をやっています。最近は(まだ何も更新してませんけど)サイトも始めました。しかし、それとこのスレとはまた別ジャンルと考えております。
 このスレの前スレが始まった初期は、恋ネタについてあれこれ討論されていました。私も実際過剰な恋ネタには反対です。あくまでもここは「このスレの住人達が作り上げる曲達の世界」で、誰かによる恋愛ネタ含む過剰なキャラ付けはあってはならないものだと考えております。さっきも言ったように今ではツイッターやサイトも発達しているので、そちらで活動すれば同志も沢山いるのでこことはまた違う楽しみが生まれると思います。
 そのような「個人個人の曲擬人化」にも個人の設定を詰め込めたり、人によっての違いを見比べたりするというこことは違う面白さがあります。私は皆さんに「ここでの曲擬人化」というものについて考えてほしいのです。
 ここ、2chには曲擬人化の概念を知らなかったり、嫌悪感を持ったりする人も少なからずいます。当然ながら、このスレが発展することに嫌悪感を感じたりする人や、曲への冒涜だとここを否定する人もいます。じゃあそのような人たちに「まあ、いっか」と言わせるためにはどうすればいいのでしょうか。それは、ここがどのようなスレなのかを書き込みをするときに一人一人が考えていくことが重要なのではないか、と私は思います。
 ここは、「皆が作り上げる曲達の世界」です。書く人だけではなく、見る人……「個人個人の曲擬人化」を知らない人、嫌悪感を持つ人たちにも「あ、曲達がこんな会話してたらいいな」と言わせられるような、そんなスレにしたいと私は考えております。
 といっても、それほど気にする必要もありません。ただ単純に、過剰なCPネタや恋愛ネタ、根拠のない関係ネタなど、曲擬人化に対する好き嫌いで差が出るようなものをできるだけ控えるだけでいいのです。全て控える必要はありません。ここは皆が作り上げる世界ではありますが、キャラクターや口調を同じ曲で統一したりする必要もありません。「皆が作り上げる」ものではありますが、曲への思いや目線は人によって異なりますし、それでキャラが異なってしまうのは仕方がないことです。絵も同じです。
 ここは「皆が作り上げるもの」です。さっきは読む人も「皆」だ、とは言いましたが、書く人がいなければ何も始まりません。最初は二文程度の、書きあがってる話に対してのレスでも構いません。リクエストでも構いません。文章力とか画力とかまず問題外です。ROM専の人、このスレを読んで楽しんでる人がいるならば、どうかレスしてみてください。傲慢ではありますが、ここが誰か一人の独壇場にならないことを願っております。


 だから長いよ。読みとばしてくれて結構です。
 最後に一つだけ。

 このスレを見た誰かが曲擬人化という概念に興味を持ち、小さなネタでもいいから投稿し、そしてこのスレが少しずつでも発展していきますことを、このような拙い文章でありながら願っております。


 平成24年9月22日
 とある指の版権曲厨

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