>「友情」読んだ

武者小路実篤の代表作「友情」を読みました。

読み始めてすぐ、野島は実篤本人で、大宮は志賀直哉じゃないか!と思いました。そして野島のあまりにも盲目な恋心にちょっと引く…というか、うわぁ…とも感じました。誰かにこんなに愛されてみたいなあ!そして確信したのは、杉子は大宮に惚れるであろうこと、そして大宮と杉子はデキる…ということでした。当たりでした…

野島自体、恋に恋をしているというか…まさに仲田が言ったように「恋は画家で相手は画布」というのが当てはまると思います。野島はそれを否定し自分の恋愛を正当化しようとしましたが…
野島の恋心に気づいていなかった杉子に結婚の申し込みの手紙を出しただけで「私と云うものをそっちのけにして勝手に私を人間ばなれしたものに築きあげて、そしてそれを勝手に讃美しているのです」と言われてしまうほどに杉子という画布に自分の理想の線を引いて、色を乗せていたことが明白ですよね。野島の結婚の申し込みの手紙は必死さにあふれていて、私にはいつか仲田の家を訪ねたときの"文士の卵"が杉子に送った手紙とそう変わらないように思えました。

私は杉子の手紙も大宮に理想を抱きすぎていると思うんですが…大宮は確かに、本当に素晴らしい人だと読んでいて思いました。自分のずるさにも気づいていましたよね。杉子に対して冷淡で、なるべく接触しないようにと気遣いをしているのを、大宮、イケメンやんけ…と私は呑気に読んでいたわけですが。女だったら気づいちゃいますよね、大宮の優しさに… 昔の人のラブレターってなんでこんなに熱烈なんだろう…すごいなあ

まず読み終わってすぐ思ったことは野島に救いがないじゃん!
信じきっていた友に裏切られたこと、更には愛していた相手は自分をひどく嫌っていたこと…いっぺんにその事実が突きつけられた野島はハラワタが煮え繰り返るような気持ちになったんじゃないかなあ…でも野島は手紙には怒りや悲しみのことは書きませんでした。なんて強い人なんだろうと思いましたが、同時にこれは強がりなんだということが最後の一文でわかります。神に頼る他ないのはなんだか寂しい気がしますが…すごくやるせない気持ちです…


このお話の面白いところってそれぞれがキャラクター性に富んでいる人物なところかなと思います。特に主人公の野島なんて自分のことでいっぱいで都合の良い解釈をしたり、少しでも自分と価値観が違うなと感じるともう話したくない!と思ったり、とても人間らしく描かれているんですよね。海岸で話してるときに杉子が思いっきり大宮の話を振ってるのに、杉子と話せて嬉しい!という感情しか抱かないところ…無垢というか盲目というか…言ってみればかわいい一面なのかもしれませんが、違う見方をすれば残念な人だな…といったところでしょうか。

杉子もまだ16ということもあり、大宮を前にすると顔を赤くしておとなしくなったり、手紙の直球さといい、若い!と思いました…笑 実にかわいらしいんですが、野島のことを…今風に言うと生理的に無理!になるんですかね!?思いっきり嫌ってることを大宮に伝えてしまうのもヒデェ!って笑いました

大宮はもうイケメンですよね!?これは…自分のほうが先に杉子を好きだったかもしれないのに友を思って、外国にまで行くの本当にすごいですよね…なかなかできないですよ…でもその友を思った行動の節々には杉子のことを思った行動というのも隠れていたんですよね。っていうか野島が風邪で寝てたとき「杉子さんからお大事にとことづけがあったよ」しか言わなかったの超引っかかってたんですけど、杉子の手紙で「いつかあなたと海岸で二人で散歩した時」って書いてあってお前!!!!!って本を投げそうになりました。ずるいぞーーーーーー!!!!!!!


この結末、どうなんでしょうか。わたしはエーーーーー!?こんなのって…という気持ちでいっぱいになったんですが…野島がかわいそうなのはもちろんですが、大宮が悪いわけでもないんですよね。杉子も悪いわけではないのです。杉子は自分のことを見てくれていた大宮を選んだのは正解なんだと思います。少女漫画ではありがちな、お前が惚れてる人間よりサポートしてくれてる人間のほうがいい奴やんけ現象で大宮がめちゃくちゃイケメンに見えますし…恋と友情、難しいですね。野島と大宮の友情はずっと続いてきたものですし、恋って一時的なものなんだと思うんですけど、ここまで人の感情を揺さぶる恋の力ってすごいなあ。

















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