ナルトとサクラ 少し未来の話


そう言えば口説き落とす、概念が無かったな、と思い経った訳で。
その思い経ちの所為で春野サクラの人生が大きく変わろうなどと、思いもしていなかったのだ。このトラブルメイカーは。





「愛してるよ、サクラちゃん」

突拍子もなくその瞬間は訪れた。しかも昼時で賑わう大通りで、だ。
この木ノ葉の里に限らず、各国で名を馳せる男、うずまきナルトは生きる伝説と詠われており、この里でも英雄としてその人気を誇っている。おまけに歳を重ねる毎に両親の美形を今更ながらに受け継ぎ増す男前を、世の女性は放っては置く筈も無く。そんな男が人で賑わう昼下がりの大通り何ぞに現れれば、人は老若男女問わず群がる。
その様子をサクラは遠くで眺めては、他人事の様に感心しては昼飯を買いに向かう筈だった、のだけれど。状況は急変した。
人の波を掻き分けて、サクラの元へとナルトは歩み寄るなり、熱烈な愛の言葉を囁かれた訳だ。勿論、大衆の視線も同じく一点に集まる訳で。
状況が整理出来ないサクラとそのサクラを一心に見つめるナルト、と言うのが出来上がった。

「本当は泣き虫なくせに強がりな所も凄く可愛いと思ってたし、照れ隠しに重い一発を喰らうのも愛の裏返しだと思えば耐えられたし、気丈に見せて実は繊細な所は守ってやりたくなる。けど、守られるだけなのは嫌だって守られるだけじゃ終わらない所には正直惚れ直した。素性の知れた仲間にしか見せない笑顔も堪らなく好きで、でも笑顔はどんな野郎にも向けるからライバルが増えちまうってハラハラ為せらたけど。早くオレが捕まえねぇーとな、って気になる。で、今に至る訳なんだけど」

止めど無い溢れる秤りの言葉に、サクラは徐々に頬を高揚させて、あ、う、と言葉に鳴らない声を発する事しか出来ず。そんな二人ね行く末を道行く人も立ち止まり視線が集まる。だが、とうのナルトは変わらずサクラから目を離さずに見詰めるもんだから、二重の意味で恥ずかしさは加速して行く。

「つーか、自覚してない見たいだけど案外ライバルは其処いらに居たんだよ。気付いてなかったみたいだけど。鈍感な所も可愛いと思ってたけど、心配でもあった。知ってたか、サクラちゃん凄いモテんだよ。それに焦っちまって裏で手を回したりもしたし。ああ、大丈夫、ちょっと脅しただけだから。サクラちゃんが想い続けてるサスケになら、って思う所もあるけど余所の奴にサクラちゃんを掻っ攫われるのだけは我慢成らなかったんだ」

まるで演説の様に続けらる言葉にサクラは一言一言、追いかけるだけで精一杯で、本来の目的でもある昼食は既に遥か彼方へとすっ飛んで居た。

「オレは将来火影になる男だし、腹ん中に相棒も飼ってる。忍って言う身の上だし、正直何時死ぬか分からない。きっと問題は後々山積みになって返って来るかもしれねぇ。そんな事で引き目を感じて中々踏み出せなかった。でも、何もしないでこうしとけば良かったって思うのはもう沢山なんだってばよ。何時か訪れるサクラちゃんの結婚式に後悔して泣き入りするなんて真っ平御免蒙りたい」

だから、と続けてナルトはサクラの手を取り、地に膝を付けた。

「オレの全部を掛けて幸せにするって約束する。忍道に掛けたって良い。だから、お願いです。結婚を前提にお付き合いして下さい」

漢、うずまきナルトの渾身の口説き文句にサクラは何時しか涙を流して頷くしかなった。
結果、粘り勝ちで長く険しいナルトの初恋は見事に成就し、サクラの運命を大きく変える事になったのだ。
一つの思い付き、で。


後にうずまきナルトが口説き落としの神だと称えられたのは言うまでもない。



∵ ナルトが口説けば案外あっさりとサクラちゃん落ちそうじゃね?と、妄想した結果こうなりました。
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