「……チッ…まさかてめぇ、おれが弱ってるときに吐いた譫言を盗み聞きしてやがったな」

「盗み聞きとは人聞きが悪いぞ。貴様がうだうだとしつこく私に構ってきたから話を聞いてやっただk」

「くだらねぇ」

もういい。どうせこいつと口喧嘩したところで勝てるわけがないし、DIOのせいで眠気もふっとんだ。もう、好きにすればいい。うそ。好きにしてほしい。はやく

「続き、していいだろう?」

「………勝手にしろ」

向き合って寝た姿勢のままで急に指を入れてきたDIO。早く挿れたいがために早急になかをかきまわしてくる指が気持ちよすぎて、ふわふわとした喘ぎ声が出てしまう。恥ずかしい顔はDIOの胸に埋めて隠した。一際奥にあるそこを爪先が掠めた瞬間頭にチカッ、と閃光が走り、おれは簡単に達してしまった。

「ふあぁっ!……ぅ、ん…………」

「ほぉ……後ろだけででイけたか…続きが楽しみだなァ?」

「っ、は…どうせまたろくでもねぇことを考えてやがるんだろ?」

「承太郎、大正解だぞ」

自慢げにそう告げたDIOの表情からは嫌な予感しかしない。
この顔、ぜってえ恥ずかしいことさせるつもりだ。

「なぁ承太郎、『羞恥』というものは、『快楽』に比例していると思わないか?」

「………都合良さげなこと言うんじゃあねえぜ」

気持ち悪い笑みをひとつ浮かべたDIOはおれをひょいと持ち上げ、自分の腹に跨がらせた。
目が合う。数秒間、沈黙の妖精が飛び回った後おれの顔がさぁっと青ざめたのが自分でも分かった。なにかやばい。本能的に危険を感じて逃げようと思ったが時すでに遅し、DIOの両手がガッチリとおれの腰を捕まえていた。ケツになにか当たってる。

「やだ、やめろ、手離しやがれ、やだ」

「ふふ、最高の眺めだぞ承太郎。一度はやってみたかったのだ、騎乗位というやつをな。たまにはいいだろう?私の上に乗って御奉仕してくれるのもなかなかそそるしな」

ふざけるな、何がなかなかそそるだ。今すぐスタープラチナでこいつのお粗末棒をもぎ取ってやりたい所だが、実際おれにはそんなことできやしない。別にやろうと思えばいつでもできるし、最初からいざと言うときにもぎ取る準備はできていた。オーソドックスにハサミでちょんぎってやってもいい。
だが結局のところ、おれはこいつが好きだから反抗できない。認めたくないがむしろ期待しているのかもしれない。

どれだけ酷くされてもいい。
おれがはずかしいかっこうをしてはずかしいことをされていることに興奮するんだったらおれはいくらでもこいつの前ではずかしい声をだしてやれる。少々頭がおかしいようだがおれがこんなになってしまうくらいにDIOは魅力的なやつなのだ。DIOは自分の思い通りにならねえとすぐ不機嫌になるすごく面倒くさいタイプの吸血鬼だがその反面、自分の要望が受け入れられたときにはなんというかとても「イイ顔」をするのだ。DIOが喜んでいるときの顔がほんとうにすきだ。
また今日も性懲りなくおれは肯定してしまうんだろう。後に自分の身に降りかかることになる辱しめなんてすっかり忘れて。

「やるからには気持ちいいんだろうな?騎乗位ってやつは」

「貴様…気が狂っても知らんぞ」

「てめぇとこんなことしてる時点で気が狂ってるぜ、おれは。早く、はやくしろ………あっ!…んんっ……」

「面白いやつ」

既に頭がおかしくなりそうだった。自重で深くささったDIOのものが激しく動き、さらに深くささっている。ピンポイントでいいところに当たるそれはどうにかなりそうなくらい気持ちよくて、意識なんて必死に繋ぎ止めておかなくてはどこかへ飛んでいってしまいそうだ。

「あ、ああっ、でぃおっ!…あ、ふっ…りおっ、きもちっ、あうっ」

素面では言えそうにないこんな恥ずかしい台詞が口をついて次々と出てくる。DIOのほほがまっかになってて笑えた。

「はぁんっ、でぃお、とけちゃう…ふあっ、やあっあん…」

「っ…貴様っ、絞りすぎだ…イくぞ…」

「あ…もっ、おれも…いくっ、いきそうだからっ…たくさん、だしてっ…」

あたたかいものが腹ん中を満たしていく感覚。どくどくと脈打つそれが気持ちよすぎてイってしまった。ぱたっとDIOに倒れかかると間近にあったDIOの顔が見たこともねぇ色に染まっていた。おれよりも真っ赤なんじゃないかってくらい顔を染め、目を細めて快感に耐えるその表情はなんというか、すごく、とても

「かわいい」

「…!?貴様ッ、馬鹿にしているのか」

「ふ、てめぇらしくねぇ顔だったんでな」

「ふん…別に嬉しくない」

DIOに突っ込んでみたら結構いけるかもな、と考えてみる。今までずっと余裕の皮を被っていたが、案外DIOは快楽に弱いのかもしれない。

「………おれは善かったか?」

問えば、一瞬驚いたような顔をした後取り繕ったように口角を吊り上げ、キスをしてきた。頭をつかんでぐいっと強引に口づしてくるのはこいつのいつものくせ。そのしぐさがなんだか好きだった。こいつにぎゅっと捕まえられてるみたいで、独り占めされてるみたいですごく嬉しくて。何も考えられない中どっちのものだか分からない唾液が流れ込んできて、おれの頭をどろどろに溶かして、もうDIOから離れられないように頭が作り替えらてるみたいな気分になる。
しばらく正常な思考はできそうにない。おかしくなってしまって使い物にならないこの頭はおれにいったい何を言わせるか分かったもんじゃあねえ。僅かに残った願望は気持ちよくなりたい、という悲しいほどに単純で生理的な感情。少し腰を動かせばDIOはすぐに応えてくれた。二度目の律動が始まる。

「でぃおっ……あん、あっ、ひぅ……ああ」

「それで、私は善いか?」

仕返しだ、と言わんばかりにおれと同じ質問を投げかけてくるDIO。すこし黙ってろ、見れば分かるようにおれは今そんな質問に答えてる場合じゃあねえ。

「んっ……あっ、もっ、わかんなあっ……もう、むりっ」

「なにが無理なのかさっぱりだなァ。余裕のない自分が恥ずかしいか?悔しいか?」

やっぱりDIOから見てもはっきりと分かるほどおれは余裕がないようだ。むかついたから意地でも声を我慢してやる、あっ、無理だ。

「……んん……ふあっ!あ、ちくび…さわるなっ、あ、やめ」

てめぇエスパーか。急にちくびなんか触られたら声が出るに決まってる。これで何度目だ?また心を見透かされた。

「ふ、かわいい声が出るじゃあないか。やっぱりちくびがいいか?」

「ん"っ…よく、ねぇっ……ふ……やめろ、ぁ」

「うそつき」

ぐちゅっ。奥を抉られて耳を塞ぎたくなるような卑猥な音がした。おれがうそつきだってことを証明するかのように漏れ出た声、声、声。死にたくなるほど恥ずかしい。DIOから与えられる快楽はいつだって突然で、9割砂糖でできたチョコレイトみたいに甘ったるくて

「ふっ……ふふ、ふふはは、ははっ……」

急に笑い出したおれを見てDIOは固まった。阿呆みてえな面に覆い被されば、こつん、と額と額がぶつかる。
紅く輝き、恐ろしく壮麗なその瞳はおれの双眼のみを映していた。驚いているのだろうか、瞳孔がきゅうっと小さくなったのが分かった。
____急に笑い出したと思ったら貴様、何故ここまで顔を近付ける、近い、近いぞ、その可愛い顔をこのDIOに近付けるな。劣等感で死にたくなる。いやしかしずっと見ていたいよし世界だ、世界を使おう。
_____と、この変態はきっとこんなことを考えているに違いない。自惚れてなんかいねえぜ。おれには分かる。

「DIO………だいすき、たぜ」

そう、この顔。これが見たかった。見開かれた目が「驚いてます」と、実に分かりやすく説明してくれる。その馬鹿面をもっと恥ずかしく塗りつぶしてやるために唇を合わせた。感情に任せてきつく、きつく吸ったら舌が入ってきておれの口の中を我が物顔で荒らし始める。
恥ずかしくなったのは結局おれだった。与えられた甘いキスに尻尾を降って喜んでるおれは単純でまだまだガキ。
腰を突き動かされて意識が下の口に戻される。呼吸ができなくなりそうだ。
随分前にキスをしながらがつがつと掘られたことがあったが、あの時は息ができなくてマジに死ぬかと思った。またあんな風になったらたまらないからDIOの舌を軽く奥歯で噛んでから唇を離した。

DIOはおれのなかのぜんりつせんという所を知り尽くしてるようで、おれが女みてぇな反応ばかりするのをいいことにさっきからそこばかり狙って突いてきやがる。おかげで声が抑えられないし気持ちよくてとびそうだしでおれのメンタルとプライドはずたずたのぼろぼろだ。掘られてる時点でアウトかも知れない。

「ぅあんっ、はぁ、あ……あん、はっ…そこぉ、やらっ……」

「自分で動くのは好きか?」

「っ…ん、はぁん、やぁ、やら、すきじゃなっ… い、でぃおじゃねぇとっ
……イけない」

「承太郎…貴様も相当の変態だな…っ」

確かに。そうかもしれない。霞む意識と視界の中でDIOが薄く笑っていた。首筋に伝う二筋の汗が妙に色っぽくてこいつも実は必死だったのかも、なんて今更思う。

やばい、くる。いつものあれだ。
おれは、DIOとしてるとき必ず最後に気絶してしまう。どうしても止められないのだ。急に体の力がカクン、と操り人形のように抜けて、大体そのまま意識を失う。で、起きたらDIOのベッドの上でいつの間にか綺麗にされている。なんだか申し訳なくなるからやたらに気絶したくはないが、駄目だ。もう我慢できない
視界がぐらついて吐きそうになる。最早原型を留めていないぐんにゃりとしたDIOの顔が見えた。『またか、』みたいな顔をしていて少し頭に来たけどこの後DIOにからだを清められる、と思うと悪態もつけない。
くそ、ああ、待って
DIO______



***



______目蓋に鈍い痛みが走る。ゆっくりと目を開いてみると強烈な朝日がおれの眼球を殺しにかかっていた。光を受けて緩くなった涙腺から少量の涙が滲み出てくるのを感じ始めた後に襲ってきたのは強烈な腰の痛み。
声も出ない。思わず顔が歪む。なんだ、これ。奥の方がずきずきと痛み、ぴくりとでも下半身を動かそうものなら腰全体が鈍器のようなもので殴られているかのような激痛が走った。

かなりまずい。起き上がれないのだ。体がびくともしないし、これじゃあ隣で眠っているはずの痛みの元凶に文句の一つも垂れてやることができねえ。ましてや学校なんて。行ける気がしない。
とりあえず声を出してみる。

「……おい」

酷い。なんだこのヤバイ声。尚更学校に行かなくてもいい理由が増えてしまったぜ。

「DIO……いるんだろ?」

「なんだ」

「なんだじゃあねえ。どうしてくれるんだ、起きれねえぞ」

「老人ホームにでもいってきたらどうだ」

「死ね」

後ろでふっ、と鼻で笑う声が聞こえて益々腹がたつ。いつものパターンの繰り返しだ。

「こんなんじゃ学校行けねえぜ、責任取りやがれ」

「ふん、休めそんなもの」

「てめえとこんなこと繰り返してるお陰で出席日数が危ねえんだよ。残留で永遠の高校生だけは絶対に嫌だぜ」

背後から口元を塞がれた。これ以上喋るな、ということらしい。もぞもぞと動くDIOがおれにくっついてくる。こいつの温い体温はおれのやる気をなくすには充分すぎる材料だった。
もういい、学校なんてサボろう。
痛む腰と憂鬱な感情を抱えて、もう一度目蓋を閉じる。時計の音だけが静かな部屋に響いていた。




2015.12.12
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