頭のてっぺんからつま先まで、神様がきっと丹念に設計図を書いて何年も何年もかけてやっとできた最高傑作。美しいなんて言葉でかの方を表せると思うのなら、それこそ窓から見える尖った電柱の柱に喉を突き立てて死ぬべきだ。生命の躍動を感じさせる赤色。スター・ルビーすらも屈服して頭を垂らす瞳は、その実「死」というものすら司る。それを眼窩に嵌めこむことを許されたのは、この世でただ一人。
 導きを示す指先の肌や、爪や、その色味から間接の位置まですべて計算づくの黄金比率。最も正しいものは、正義や規律や法という装飾で濁った目的を、純粋に圧倒する力。
 この世に正義なんてものが存在すると仮定するのなら、あの方以外にありえない。
 だから磨かねばならない。もとより磨けども大した宝石にならぬこの身なれど、石ころのまま主の前に姿を見せるなど言語道断である。使えず光らぬ石など塵ですらない。

「自らの姿を掴めない存在は虫だ。姿を掴もうとする姿勢さえ見せないものは生きる価値がない」

 その鉄槌を持ってどうかこの身体を貫いてください。その法悦だけでこの私は、露すらも口にせず幸福に包まれたまま生きられる。あなたは頭を使わず思考を停止させるものは害悪であるとばかりに、自分の教えを書いた経典などを持たない。さすればこの崇高な信仰心を示すため、やはり主のお役に立てる術を見つける他ない。私は虫ではない。私は虫であってはならない、そう言い聞かせる声の寒々しい健気さよ。

「さて、お前は私の好まぬ虫ではないな?」

 ああ、DIO(我が神)よ!
 ただ確かめるような響きに、感激は言葉にも声にもできない。
 声を失った哀れな虫けらにかかる息吹は極楽鳥のさえずり。色は失ってないのに、盲目と呼ぶべきその瞳からは熱い涙が次から次へとこぼれていく。主の心に全身全霊を持って応えるための服従。狂信者は床に額をこすり付け、主人の靴音が聞こえなくなるまで微動だにしなかった。

置いてけぼりの楽園



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