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「あー…眠」
「おはよう名前ちゃん」
「んーおはよう」
「おはよう名前」
「ん?」


あれ?今のお母さんと、……誰?

まだ覚めていない目を擦って無理矢理頭を起こし
もう一度、今度は視界をはっきりさせて前を向けば
そこには居ないはずの人が優雅に椅子に座ってコーヒーを口にしていた


「早く用意をしないと学校に遅刻するよ」
「………なんで、半兵衛居るの?」
「昨日お父さんが半兵衛さんにお酒飲ませちゃったから泊まってもらったの」
「車で来ていたしね」
「歩いて帰ればよかったのに」
「ん?」
「すんませーん、朝だから頭が起きてないんですぅ」


この糞眠い時に半兵衛の黒いオーラなんて気にしていられない、と
洗面所に向かって冷たい水、じゃなくて生ぬるいお湯で顔を洗えば再び睡魔に襲われそうになった


「あら半兵衛さん、もう行くの?」
「えぇ、一度家に戻って着替えなければいけませんから」
「そう…これからはこういう機会がなくても遊びに来ていいのよ」


顔を拭いて、お母さんと半兵衛の居る玄関を覗くと
まるでお母さんと息子みたいな光景
なんだか自分のお母さんと彼氏なのに、妙に微笑ましくて
じっと見入ってしまっていた


「はい。ではお邪魔しました」
「ちょっと待って」


そう言い、玄関の扉を開ける半兵衛にお母さんが声をかけて
半兵衛は再び振り返る
名前にも疑問符が浮かんだ


「お邪魔しましたじゃなくて、行ってきます。よ
もう自分の家みたいに思っていいんだから」


一瞬、私と半兵衛の時間が止まる
まるでドラマのワンシーンのような展開に思考がストップしてしまったのだ

その後、ふわりと綺麗な笑みを浮かべた半兵衛を見て
名前も口を開いた


「行ってらっしゃい」


お母さんにあった半兵衛の視線が私に向いて、アイコンタクトのように視線を合わせると
もっともっと綺麗に笑って踵を返す


「行ってきます」















いつもは置き勉で満杯の教室はすっからかんで
暖房の切られたいつもより静かな学校は寂しく感じた


「名前、帰らないのか?」
「んー」
「あぁ…竹中か」
「違っ!…くはないけど」


終業式の日に荷物を全部持って帰ろうとしている私より計画性のない慶次に声をかけられる
もう終業式もHRも終わり皆帰ってしまったから教室に残っているのは私と慶次だけ


「そういえば今年は旅行に行くんだろ?おばさん達がうちに来てたけど」
「はっ!?なんて行ってた?」


まさか半兵衛と2人きりで暮らすなんて言ってないよね!


「なんか知り合いに誘われてパリに行って来るから時々名前のこと頼むってまつ姉に言ってたぜ」
「そっそれだけ…?」
「まだあるのか?」
「いやいやいやいや!何もないよ、そっか…じゃあいいや」
「変な奴」
「何だと」
「さっきからぼーっとしたり青くなったり赤くなったり」
「赤く?」
「あぁ、熱でもあるのか?顔赤いぜ」
「ううん」


冷たい手のひらを頬っぺたにつけると慶次の言うようにすごく熱くて
手がほんのり熱を帯びた


「あー…分かった」


なんで顔が熱いか
明日を考えたからだ


「私も大概重症だなぁ…」













同棲ってなんて恥ずかしい響き
(ねぇ慶次、最近私の若干毒舌のキャラが崩れつつあるんだけど、どう思う?)
(此処いつ相談場になったんだよ。)


















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