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「うーらーめーしぃやー」
「あっお疲れ様です」


白い着物を着て、頭によくある幽霊の布を巻いた男子に軽くお辞儀をすると
横から聞こえた溜息に視線を移す


「仮にもお化け屋敷なんだ、お化け役に挨拶しなくてもいいだろう」
「見て見て、コンニャク吊るしてあるよ。古典的ー」


竹中先生の話なんてまるで聞く耳を持たなければ再び聞こえた溜息
古典的にも紐に吊るしてあるコンニャクに腹を抱えて笑いそうになった

この完成度が皆無すぎて笑いが出てくるお化け屋敷は文化祭の出し物の1つ
どうしてそこに先生と一緒に居られるかって?
そりゃあ、アレですよ

見回りと言う名の堂々デート

ですよ。
私自身の仕事もサボれるし、先生と一緒に学校周れるし最高じゃないですか


「早く出ようか、ここの生徒があまりにも不憫だ」
「先生が面白いリアクションしないからー」
「君の頭が一番不憫みたいだね」
「失礼な」


お化け屋敷風な教室から出ると、明るい廊下をゆっくりと歩いていく
一緒に歩いてるだけなのに
あちこちから女の子の小さな悲鳴が聞こえるのは気のせいとしておこう


「さてと、次はどこに行こっかな」
「残念ながら僕はそろそろ仕事があるのだが」
「はっ!?見回りだけじゃないの!」
「僕だって忙しい身なんだ」


なんてこった!
ささやかなデートがこんなにも早く終わってしまうなんて
思ってもみなかった!


「そんなぁ…」
「そういう声をださないでもらえるかな」
「えっ、もしかしてもしかしなくてもちょっと可愛いとか思った?まじ照れるー」
「激しく否定しよう。オヤジみたいな照れ方をしないでくれ」


不意に
視界が暗くなった、と思えば
廊下の角で体を覆いかぶせられていて
耳を熱い吐息と唇がかすめる


「でも、僕が居ない間に狼に着いて行っては駄目だよ」


人通りが少ないからって、
只でさえ注目集める美形さんが大胆な行動とらないでほしいよ半兵衛君!

心構えなんてものが存在しなかったため
無防備な私の心臓は高鳴って顔を一気に赤に染めた


「赤い頭巾が必要かな?」
「……先生も狼でしょ。あっ間違えた、先生は狼を撃ち殺す狩人の役がピッタリだね」
「顔が赤いね、照れているのかい」
「さっさと仕事に行ってください」


自分から先生を遠ざけようとぐいぐいと背中を押したらふわりと笑顔を浮かべて
廊下を歩き出してしまった
本当は行かないでって言いたかったけど、そんなこと言えない
先生に迷惑かけたくない
ううん、
単純に恥ずかしくてそんなこと言えねぇよ!


「彼女ほったらかしで仕事って、教師は忙しいねぇ」
「ホントだよ、まだ周りたい所いっぱいあったのに」


やれやれと呆れたような声に小さく同意の溜息を一つ
そしてその声の持ち主は最近話していなかったクラスメイト


「さっ佐助!?」
「やっ、久しぶり」


やっ久しぶりじゃないよ!
一応まだ警戒解けてないんだからね


「なにしてるの」
「気になる?」
「別に」
「えーなに、名前ちゃん冷たいなぁ」


ぷーとワザとらしく頬を膨らませる佐助は
あの怖かった佐助を知る前の佐助で
もしかしたら告白された放課後が只の私の夢だったんじゃないかって思っちゃう


「先生仕事行ったんでしょ?じゃあ俺様と周らない?」


だって今は只の友達で全然怖くない


「……チョコバナナ買ってくれるなら」
「安っ」
「うるさいやい」







狼を狩るのは狩人のお仕事
("狼"には着いて行かないよ)
("友達"には着いて行くけどいいよね)
















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