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涙なんか止まってしまった
今胸に詰まっているのは
いっぱいの不安と少しの怒り

分からない
恋なんて、愛なんて曖昧なもの
皆持っているものだからこそ
境界線が、どこまで拒否していいのか分からないよ


「名前」


佐助を振り払うように学校から出てすぐに声をかけられた
ぽんっと肩に触れられて、振り向く


「…慶次」
「って、また泣いたのかよ」
「えっ」


やだ、ちょっと前に佐助と話していて泣いてしまったけど
それが分かるくらいに赤くなってた?


「少し話あるんだけどいいかな、すぐ終わらせるから」
「うん、別にいいよ」


今までもやもやしていた感情が、すっと軽くなった気がした
最近は佐助と先生のことでいっぱいいっぱいで
慶次とちゃんと話すことも無かったし
昔から一緒に居るだけ少しほっとする


「俺ってさぁ、名前のこと好きだったんだ」
「うん………………熱でもあるの?」


『何言ってんだよ』とけらけらと笑う慶次の表情はどこか切なくて
胸がきゅんと締め付けられて
こっちが、なんで笑いながら何言ってんだよって言いたくなった


「竹中にさ、俺も名前のこと好きだって言ったんだ」
「もしかして昨日の放課後?」
「あぁ、でも竹中にはかなわねぇな」


泣きじゃくる名前を抱きしめた竹中
必死な顔はそれ以外に見たことが無くて、名前を大切にしているからこそできる姿
俺だって名前の為に必死になれるけど
名前が幸せそうな顔見てたらその幸せを壊したくなくなったんだ
好きな女が幸せだったら、って飾りすぎた言葉だけどそうしか思えない


「だから俺は名前を応援する」
「…ごめん」
「謝るなって!別に俺は悲しんでなんかねぇよ、名前が笑ってるんならな!」


ねぇ、目元に擦って赤くなった跡があるのは気のせいだよね
私が周りを不幸にしてるんじゃないよね
ありがとう
ありがとう慶次


「っこんのいい男!」


ばしっと慶次の厚い胸板を平手で叩くと、見事にむせてくれた慶次


「っなにすんだよ」
「ありがと!」


絡めた指
いつから手を繋がなくなったんだろうね
小さい頃はよくこうして手を繋いだ


『慶ちゃんが迷子にならないように!』
『俺が名前を守るんだ!』
『違うもんっ雪那が慶ちゃんを守るんだもん』


結局守られてるのは私ね
小さい頃も、大きくなっても、私の手を安心で包むのは慶次だけよ


「ありがと、慶次」
「……ああ」


だから今日だけは甘えさせて
切ないけど、優しい顔をした貴方に

今日だけは黙って手を繋いでいて
私が迷子にならないように


私が笑ってるなら、いい
慶次はいつもでそうだったね
気付かなかったよ
好きって言ってくれてありがとう
心から思う


私は慶次を不幸にしていない?
私は皆に迷惑かけてない?
居ないほうがよかったのかな、なんて思ってみたけど


「なに言ってんだよ、名前が居たから俺は恋できたんだ」


やっぱり君は優しいね






優しい、好き

(君が私の隣に居てくれて、本当に感謝してるよ)

(お前が俺の隣に居てくれて、本当に幸せだと思う)















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