次に生まれ変わるならアメリカ人に生まれるよ。女の子は簡単に足開くし、自分だって絶倫だし、それに正当防衛だったら拳銃撃ったって合法になんじゃん。
 究極の悟りを拓いた、とでもばかりにそんな馬鹿丸出しの発言をしたバイトの先輩、山崎さん(23)は、間違うことなき馬鹿100パーセントだった。
 23歳高卒で職歴なし、実家住まいでフリーターで、両耳にはピアスが合計9個プラス部族のような拡張ピアス1個ぶら下がっていて、髪はショッキングピンクのメッシュが入っていた。
 正直、見た目からして超馬鹿そうとは思っていたけれど、例えばギャルっぽいケバい子ほど、実は面倒見がいいとか真面目とか性格がいいとか。見た目と噂話だけで人格を決め付けるのは良くないことだ、と中高六年間で散々思い知らされてきたし、実際、山崎さんは悪い人じゃなかった。先ほどの発言でお分かりだろうが、大変気さくで陽気な人である。
 しかしそういうガンガンに弾けた外見の山崎さんは、コンビニでおにぎりを並べながら、4歳も年下の、しかもバイトに入ってまだ二週間経ったか経たないか、ほぼ初対面のオレに向かってそんなことを言うのだ。フランクすぎるというか、正直、空気が読めないと言わざるを得ない。
 ドン引きして、はぁとかへぇとかオレが明らかに気のない返事をしても、そんなのは全くお構いなしに山崎さんは更にヒートアップした。
 アソコに銃身を突っ込んで揺さぶったら、どんなに気持ちいいだろう。撃つかんじとイクかんじって絶対似てると思うんだ。イク瞬間に相手の頭を撃ち抜いたらどうなるんだろう。どんだけ締まっちゃうのかな、想像するだけで三回はヌけるね。兎にも角にも、たった今、山崎ワールドはセックスとピストルによって成り立っていた。なんと素晴らしき男子中学生スピリッツ。
 しかしそこは深夜3時だから仕方ないのかなと思い、話にちゃんと乗ってあげた。なんて優しいオレ。
「拳銃持ってたって、使う機会そんななくないすか?だってまず、撃たれなきゃ正当防衛にならないっすよ」
「使う機会なくなんかねぇよ。銀行強盗とかやっつけられんじゃんか」
 ……が、大真面目に更なる馬鹿発言を重ねた山崎さんに、正直言って鳥肌が立った。
 うあああ何言っちゃってんのこいつもう怖えーよ。小学生くらいの時、いきなり学校に入ってきたテロリストを好きな子の前で華麗に飛び蹴りキメてかっこよく倒すとか、そういう妄想に浸ったことがないとは言わないが。そんなレベルの話を超真剣に語っているのだ。12歳の頭で考えてもあまりに馬鹿丸出しだったから、口外しなかったというのに。惜しげもなく恥ずかしげもなく、むしろ誇らしげに23歳の山崎さんはそう言ってのけた。
 それでも新入りのオレは、円満なアルバイト生活を送るために、先輩の話に付き合うしかなかった。ため息を吐きながら、続ける。
「じゃあ次こそは、――ちゃんと男に生まれてこなきゃダメっすねえ」
 ――来世ではちゃんと立派なアメリカンサイズのちんこを持って、アメリカ人中坊に生まれ落ちてください。
 だけれどそれなのに、山崎さんははぁ?と心底疑問そうに首を傾げるばかりだった。
「なんで?また次も女に生まれてこないと意味ねぇじゃん」
 などと、いとも容易く一刀両断だ。
 ならばしょうがない。それならオレも次にアメリカ人に生まれ変わって、山崎さん(アメリカ人)に思う存分銃身を突っ込んで揺さぶってイかせてから、ぶっぱなしてあげよう。
 なんて、馬鹿丸出しなことをヤンジャンを並べながら考えた、深夜3時。




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