ようみんな!元気?俺ちゃんは超元気だぜ!
 ゲームのモブキャラが主人公の例の映画はチェック済みか?まだだったら、コーグと予告編にリアクションしてるからぜひ見てくれよな!

 そんな俺ちゃんは今、なーんと誘拐されてる!よくわかんねえけど、どこかに閉じ込められてるっぽい。ちな上半身と下半身はさよならしたまんまでな。うえー我ながらグログロ……。

 相手は恐ろしい敵だ。
 けどもうすぐ最強のスクワッドが助けに来てくれるわけよ。
 3、2、1のカウントでな。そしたら俺ちゃんは背後から近づいて明るくこう言うわけよ。

 「何してんの?」ってな。

 おっと、それはス―サイド・スクワッドの予告だったぜ。可愛いよなハーレイクイン。ちょっとイカれてるとこも含めて。つうか、足がなきゃ、背後から近づくこともできやしねえ。
 で、どうしたもんかね。現実逃避なんてしてみたけれど、俺ちゃんを助けてくれる頭のおかしい奴なんていない。コロッサスもネガソニックも自業自得だって呆れるのがオチだ。俺だって、何回かは世界を救ってんのにさ。

 俺ちゃんを捕まえる理由は大体決まってる。俺ちゃんのスーパー呪われてるこのナイスボディを研究したいとかいうやつだ。そんなに「死なない」って魅力的か?どうだかね。もう俺には一生わからない感覚に違いねえ。

 おおっと、なんだか俺ちゃん、感覚がないはずの足を触られてる気がするんだけど。
 ばきゅん、どきゅん、と小気味の良い音が音が近づいてきてる。まるで結婚行進曲だぜ。いいねー、みんなも是非流しちゃってくれよな。

 「――――あー、ウェイド?」

 ぎ、と扉を押し開けるようにして表れたのは、黒いタイトなスーツが超セクシーなちゃんねー。俺が上半身で床に立ってるのを見て、驚くでもなく眉をひそめたあたりもクールだ。

 「そ。ウェイドちゃんって呼んでくれ」
 「……はあ。ウェイドちゃん。聞くけど、これってくっつくの?」
 「いいや、無理だね」

 俺ちゃんの好みドタイプな彼女が引きずるようにして持ってきてくれたのは俺の下半身だ。残念ながら、あっちは死んでる。あ、俺ちゃんの俺ちゃんがって意味じゃないぜ。そこんとこはきっちり言っておかないとな。

 「抱っこかおんぶか、好きな方を選んでくれ」
 
 両手を差し出して言えば、彼女は心底嫌そうな顔をしてみせた。


 「――――んで、君の名前は?」

 結局彼女は、どこかにちょうどあった台車に俺ちゃんを乗っけて脱出することにしたらしい。密着できるチャンスだったのに、残念だ。立ち塞がる敵の頭を的確に撃ち抜く腕には惚れ惚れする。

 「ナマエよ。ウィーゼルに頼まれて来たの。ちなみに報酬の支払いはあなただけど」
 「うっはー、マジで、最高の友達だぜ」

 ちなみにいくら?と聞くのはやめておいた。野暮だからな。

 「報酬上乗せしたら、足が生えるまで面倒見てくれるか?」

 おっと、はじめての撃ち損じ。けど相手が体制を立て直す前に、ナマエはヘッドショットを決めた。くぅー、イカしてる。リロードしながら、ナマエは聞いてくる。

 「……ごめん。今なんて?」
 「足が生えるまで、同棲してくれよ。もちろん、その後も大歓迎」
 「……、……」

 俺ちゃんからベビーな足が生えてくるのは感動的な光景だと思うぜ。ウィーゼルのお墨付き。
 ナマエは返事をしてくれなくなったけど、俺ちゃんはもうわかってた。ナマエこそ、俺の運命だって。


有難迷惑アイラブユー

 完全に一目惚れ。