かたり、というかすかな音に振り返る。

「おかえり、ジェイソン」

鉈を置いたその足で、私をまるで子供みたいに抱き上げて、あぐらを組んだ足の上に座らせた。
背後から抱きしめられて、マスクに覆われた口元が、す、と耳に近づく。
囁くように落とされた言葉に小さく笑んで、また本を読み始める。今度は、彼も一緒に。
窓の外では、風の音とともにいつの間にか雨音が混ざっていて、遠くでは雷鳴。
今夜は嵐かもしれないね、と言えば、私を抱きしめる腕に、ほんの少し、力がこもる。

何だって怖くないよ。
静かに私を包む、あなたがいるから。



"ただいま"