角を曲がったところで、アベンジャーズの2人組と出くわした。

 「こんちゃーす」

 ロリンズの隣にいたナマエは呑気に挨拶しているが、ロリンズは無表情で頭を下げる。

 「やあ」
 「しばらくね」

 顔見知りであるロジャースとロマノフは笑みさえ浮かべてナマエに挨拶を返した。しかしロリンズは、アホの子ことナマエがうっかり失言でもするんじゃないかと気が気でない。

 「会わないに越したことないじゃないですか。アベンジャーズが出てくるほどの事件、いつも起きたら困りますよ」
 「それもそうだけど、休みの日にどこか出かけない?」
 「おーけい」
 「いつの間にそんなに仲良くなったんだい?」

 ぽかんと口を開けていたロジャースの言葉に、ほんとそれな!とロリンズは言いたかった。普通に会話をしている、まっとうなことを言って。これ本当にナマエ?と内心の動揺を必死で抑えていたのだ。

 「女同士いろいろね」
 「ねー」
 「何してる」

 珍しくもスタークまで登場し、いよいよロリンズは逃げたくなる。

 「やあ、トニー。珍しいね」
 「フューリーに呼び出されたんだ」

 まったく人使いの荒い…などとぶつぶつ呟いていたスタークだが、ナマエに目をとめて、笑った。

 「この前は助かった。礼を言う」
 「いえいえそんなー」
 「今度ラボに来るといい。バナーも私も歓迎するぞ。ああ、君の好きなドーナツも用意しとく」
 「うはあ、楽しみにしときます」
 「その前に私と出かけるわよね」
 「ま、しばらく休み無いんですけど」

 ロマノフとスタークが双方笑みのまま火花を散らしたり、ロジャースが羨ましそうに見つめていたり。
 ロリンズが強引にその場を辞するまで、茶番は続いた。


 「俺、お前コワイ」
 「え、なんで?わたし先輩コワくないよ」
 「てめっ、この野郎」

 小突けば、ナマエはけらけらと笑う。
 ブレーカーの話に戻るが、ナマエは直せないわけじゃないのだ。むしろなんでも直せる。ナマエが手を加えると、電化製品にしろ、武器にしろ、その後誰も修理できない複雑な配線が作られるというばかげた理由で。
 ……冗談めかして言うが、たまに、ロリンズはナマエが恐ろしい。が、普段の言動を思い返すと、それも癪だ。


 バカと天才は紙一重

とは、言うけどな。