ぼけっと窓の外を眺めていれば、隣に気配が。

 「どうした」
 「…や、ちょっとね」

 膝を抱えてる私の隣で、足を投げ出して座るバッキー。私が見ていた窓の外を見て、首を傾げる。別にUFOがいるとかそういうんじゃなくて、何もない。ただ、

 「風、強いな」
 「うん」

 なんか、こう、風が強いと、不安になる。洗濯物を外に干しておくと、なんか落ち着かなくてじっと見つめてしまうし、風の音にいちいち反応してしまうし、外を歩くのも億劫になる。漠然と、何かが飛んでいっちゃうんじゃないか、とソワソワしてしまう。
 じ、と視線を感じて、バッキーを見る。

 「……なに?」
 「いや、」

 と、バッキーはどっか行ってしまった。
 …まあ、こうして座ってるんじゃなくて、別のことをすれば落ち着くのだ。でも、今はすることがない。
 皿を洗うは、さっきパッキーがやってた、洗濯、も、バッキーやってたなあ、掃除、といっても、昨日掃除機かけたばっかだ。バッキーが。
 うちに来る前、サムのうちで相当扱かれたらしい。バッキーには、悪いよ、と何度か言ったのだけど、俺がやりたいから、と言われれば、こっちも強く出にくい。だから、料理以外の家事は任せきりなのだ。
 苦笑していると、ふわり、と何かが被さってくる。タンスの匂いがしたから、多分ずっとしまっていたシーツ。おんぶお化けのように、背後にバッキーが座った。右腕だけでひょい、と抱えられて、胡座をかいた上に乗せられる。首を捻って彼を見上げた。

 「どうしたの?」
 「いや…」

 言い淀む様は、なんか困ってるようで、どうやら気を遣わせたらしい、とわかる。もぞもぞと動いて、彼の胸にもたれた。

 「ありがとね」

 笑えば、彼も目尻を和らげた。


君の笑顔の為ならば

 (なんだってする)


 「暑いね」
 「…ああ」

 汗をかいても離れがたいから、そのままで