「悪い、待たせたか」

「いや全ぜ……バッキー?」

「あ、ああ」

「え、何、めっちゃさっぱり」

「スティーブが、デートなら髪を整えたほうがいいってうるさくて。…………まさか、もやしにそういう指南をされる日が来るとは」

「……、…………」

「…おい、ナマエ?……やっぱり、変か?」

「っ、んなわけないでしょっ」

「そ、そうか」

「……記録写真で知ってた。絶対モテるだろうなって思って、私が生まれる前のことだけど、こうしてクリスマスに女の子と出掛けてたとか考えちゃって、……ムカつく」

「……っ、は、くくっ」

「……なんで笑うの」

「ははっ、拗ねなくても、残念なことにあの頃はスティーブとあいつの母親と過ごした記憶しかない」

「…………(それはそれでムカつく)」

「……、…………、ナマエ、」

「?!膝、そんなことしたら汚れ、」

「ナマエ」

「う……、はい」

「今の俺は、ナマエといたい」

「……うん、」

「70年前ほどスマートにはいかないだろうが……、精一杯、エスコートする。だから、」

「わかってる。……過去に嫉妬しても、仕方ないよね、ごめん」

「いいや、嬉しいよ」


おなかいっぱいミンスパイ

俺が浮かべられたのはぎこちない笑みだったろうけど、膝をついているおかげでナマエの顔が真っ赤になったのがよくわかった。
差し伸べられた手に掴まって立ち上がれば、苦笑気味のナマエが、スラックスを払ってくれる。
実際、あの頃の俺は、女といるよりもスティーブと過ごす時間のほうが大切だったから、軽い気持ちで誘ってた。
不思議なもので、どの子もみんなそれを見抜いてくるものだから、長続きしなかったが。
もちろんナマエに言う言葉はいつでも本心だし、それをわかってる彼女が、俺の言葉ひとつで、拗ねたり、照れたりすることが、可愛くて仕方ない。
……ナマエとなら、俺は、過去も含めて幸せになれる気がするんだ。