「ナマエ!」

「えっ?!え、ソー?どこから?鍵開いてた?」

「裏口が開いていた。不用心だぞ」

「げ、さっきゴミ出ししたときに忘れてたかも。ん、てことはさっきの妙な雷……ああ、またうちの庭にミステリーサークルが」

「何をしているんだ?」

「これ?クリスマスツリーの飾りつけ」

「クリスマス……ユールのことか」

「北欧ではそう言うんだっけ?アスガルドにもあるの?」

「似たようなものはある、はっ、ということは……ごちそうだな!?」

「ん!?うーん、ソーが夜までいられるなら、ちょっと豪華に作ろうかな。これ終わったら買い物行こっか。普通の服に着替えといて」

「わかった」


「――うまい!!」

「はいはい、お粗末様です。ケーキも冷やしてあるよ」

「いや――、ナマエ」

「うゎっ、え、なにどうしたっぎゃ、手!どこ触ってんの」

「……ナマエは、寂しいとは言わないんだな」

「ぷっ、服の中に手つっこんでる状況で、そんなこと言う?」

「俺が前回来たのは、半年も前なのだろう」

「あー……そういえば、夏だったかも」

「……人間の"時"は、早すぎる」

「……、…………ソー」

「俺は、っ、」

「……それ以上は言わないで」

「ナマエ……」

「好きよ」

「俺は、……愛してる」


ヒンメリが揺れる

ゆらりゆらりと、ツリーに飾られたモビールが、ライトの光を反射して瞬く。流れ星が消える間際のように。 ナマエが望むと望まないとに関わらず――、手に入れて、しばりつける方法なら、それこそ星の数ほどあった。俺は、ナマエという人間を愛してる、……愛し、すぎてしまった。もぞもぞと、胸に顔を埋めてくるナマエに口づけて、ほんの少し外気に晒されただけですぐに冷えてしまう、脆く柔らかい体をしっかりと包んだ。今は、この体が、羨ましかった。