「なあ、まだ結べないわけ?」
「ちょっと待ってよ。……うーん、と、…はい、結べました!」
「自分で靴ひも踏んでこけるとかありえねー。寒いし」
「だから、先に行って店入ってていいよって言ったじゃん」
「………そんなことしたら男が寄ってくるだろ」
「ん、なにか言った?」
「別に?ほら、行くぞ」
「何よう、ちょ、引っぱるなって、……あ、」
「あーあ、ナマエがもたもたしてっから、雪降って来たじゃん」
「予報より早かったねえ。今年もホワイトクリスマスか」
「……っ、くっ、ぶえっくしょい!!」
「うっわ、きたなっ!!だからちゃんと上着着ろって言ったじゃん」
「どうせ動いたらすぐ暑くなるしぃー」
「もう……、はい、マフラー。貸してあげる」
「はあ?別にいいって」
「いいから!ほら頭下げて、巻けない」
「…………ん、」
「そりゃさ、ピエトロの早さで走れたらすぐあったかくなるだろうけどさ、隣にいてくれないとわたしの手が寂しいでしょうが」
「……、……」
「はい巻けぶっ」
「…………これであったかいだろ」
「鼻ぶつけたし!あんたの無駄にかたい胸筋のせいで!それにここ外なんですけむ、んっ、ピエっ、…」
「……は、っ、もー、なんなのお前っ、ほんとにさあ……」
「な、に」
「好き」
「ばっ」
スノーボールを投げた
顔を真っ赤にしたナマエは、何も言わずに、俺の手を引いてずんずん歩いていく。繋いだ手はあったかくて、鼻先を埋めたマフラーからはナマエの匂いがして、幸せだ、なんてつるっと思ってしまった自分が……はずい。
次の日、ナマエとワンダが、積もった雪を見て飛び出してったのを追いかけたら、顔面に特大の雪玉をぶつけられて、雪合戦の開始。 鷹のおっさんが混ざったらあとは芋づる式で、いい年した大人たちが雪にまみれて笑うなんてあほくさいけど、ちょっと楽しかった。もちろん俺含め男どもは負けたけど。昼から俺の部屋に入り浸ってたナマエは、疲れてたらしく寝落ち。運ぼうと抱え上げたら、首に抱き着いてふにゃっと笑って、好き、だなんて、もうだからさあ……っ。お約束ですやすやと寝息を立てたナマエに、後で覚えておけよ、と静かに囁いた。