「ーーナマエ」
「んー、ぅえ、くさっ」
「ああ゛?」
「任務明けにしろ、シャワーぐらい浴びてこいし」
「うるせえ。……たく、お前どうしてこんな時間まで仕事してんだよ」
「……メイクに髪の毛ばっちりで出勤してきて、夕方が近づくにつれてソワソワしだす部下たちが可愛すぎて」
「お前は」
「帰ってもよかったんだけど、どうせ暇だしねえ」
「……もはやからかう気も起きないな。このワーカホリックめ」
「るっさい。…バートンこそ、明日休暇申請出してたでしょ。1日しかない家族水入らずなんだから、さっさと寝て備えなさいよ」
「へいへい。……ほら、これ」
「なに?」
「どうせケーキも買ってねえんだろうと思って」
「!……シュトーレン。しかも私の好きな店の。ナターシャね?」
「…………肩、震えてんぞ」
「っぷっ、くく、だっ、だってバートンがそんな顔してケーキ買いに並んだかと思うと……!」
「ちっ、返せ」
「いやでーす。いただきっ」
「あ、」
「おいひ、ありがとバートン。ひとりで並んだの否定しないとこが好きよ」
「……は、調子のいいやつ」
「メリークリスマス。プレゼント用意しといたから、ちゃんと渡してよね」
「ああ、おやすみ」
「おやすみ」
「……その優しさが、辛いのよ」
ほろ苦シュトーレン
子供達どころか、妻にまで。
毎年毎年、どんな顔をしてプレゼントを選んでいるのかと、思っても仕方のないことを考えてしまう。
あいつと共に歩むという選択肢は、いつの間にかこの手の中からなくなっていた。
さく、ほろり、そんなふうにあっさりと。
好きよ、だなんて言うな。
親しい友人の顔をして、傷つくのは、お前だけじゃないんだから。