「ただいまー、って、……あれ?」

「……、何故そんなに驚く」

「いや、………てっきりいないもんかと」

「…………フン」

「えーなんで不機嫌モード突入?ってか、くっつかないで。コート脱げない」

「……おい、」

「んー?」

「一つしかないじゃないか」

「ちょっと勝手に箱開けないでよ。それは、この前3丁目にできたばっかのパティスリーの新作ショート。一個買えただけでもラッキーで、」

「待つのが嫌いなくせにわざわざ並んで買うほど、欲しかったのか?」

「……………………うるさいな」

「ナマエ、」

「あーもう!並んでたら時間潰れるし!誰もいない家に帰りたくなかったからに決まってんじゃん馬鹿!!」

「す、まん」

「……帰ってくるなら連絡しろよもおぉ……」

「お、おい、泣くなっ悪かったから、」

「今日は抜けられないパーティーだって言ってたじゃない……」

「あー、その、ペッパーが、予定より早く戻ってきてくれたんだ。彼女はその、私が家にいたほうが喜ぶと。私も今年は空いていたんだが、……君はクリスマスについて何も言わないから、その…………ムカついた」

「そこ拗ねるとこじゃないだろ!去年もその前も、クリスマスに香水つけて帰ってきやがって!そりゃ諦めるわドテナスビ!!」

「ドテッ……、泣くか怒るかどっちかにしてくれ!私が悪かったよ!あー、もう!君ってやつは!」

「むぐ、ふっ……ぅう、ず、る、もぅ、」

「は、……おかえりナマエ、メリークリスマス」

「…………ただいま」


にぶんのいちショートケーキ

おいしい!と、ようやく顔を輝かせたナマエにほっとする。
一緒に食べる人がいるから余計においしい、とか。トニーがそばにいてくれるのがクリスマスプレゼント、とか。
打算なしに放たれる言葉は嬉しいけれど、少し、困る。
寝室に山のように積み上げられたプレゼントを、どうやって切り出そうか、あれこれと考えを巡らしながら、ナマエの唇についたクリームを舐めとった。