■■■■■■■■■
■■■■■■
■■■
■■
爪痕が滲んで
図書室の扉を開く。
その部屋の奥に君がいると思うとワクワクしてたまらない。
さあ。
今日は何して遊ぼうか?
++爪痕が滲んで++
部屋の一番奥、隅の机に、セブルスは沢山の本を積み重ねて熱心に調べものをしていた。
図書室にはセブルスの他に誰も居らず、絶好のシチュエーションだと僕は思った。
僕は気が付かれないようにそっと背後にまわるとビッシリと文字の書かれた羊皮紙を覗き込んだ。
どうやら課題を片付けていたらしい。
僕の存在にはまだ気が付いていないようだ。
そのセブルスは本当に無防備で、思わず僕はクスリと笑いそうになった。
「やぁ、スニベルス。元気?」
途端に振り向き机に置かれていた杖を掴もうとする。
いっそ条件反射のように素早い反応を見せるセブルスに、また笑ってしまう。
僕はその杖を一瞬早く掴むと、そのままセブルスの喉元に食い込む程強く杖を付きつけた。
「残念でした」
セブルスの顔が悔しさに歪んだ。
相変わらず、良い表情をしてくれる。
「……何の用だ、ポッター」
「ちょっと君の顔が見たくなってさ」
「ならもう満足だろう?帰れ」
「生憎だけど僕はそんな言葉に従うような人間じゃないから」
「……っ」
グイっと今までよりも深く食い込むように強く杖を突き立てると、セブルスは苦しさに息を飲んだ。
楽しくてたまらない。
「いい加減にしろ」
「ああ、口の利き方には気をつけるべきだね」
杖をセブルスの喉元から離すと僕はその杖を少し離れたテーブルの上に投げ捨てた。
圧倒的に僕が有利な状況だとセブルスの動きも制限されてしまう。
それではあまりにつまらないと僕は思う。
別に抵抗しなくなることが楽しいのではなく、抵抗する相手を従わせるその過程が楽しいと思うからだ。
「さて、スニベルス」
そう僕が言った途端、スネイプは急に立ち上がって走りかけた。
恐らく僕が投げ捨てた杖を取りに行くつもりなのだろう。
僕はとっさに手を伸ばすとセブルスの髪を掴み自分の方へ引っ張るようにして机に引きずり倒した。
「い、っ……」
僕はセブルスの髪を掴んだままで、セブルスの頭と肩を押しつけて机に固定した。
「はい、これも残念」
ニッコリと笑う僕をセブルスは睨みつけたが一瞬、ニッと口を歪めて笑った。
セブルスは机に大量に積まれていた本の中でも特に分厚いものを掴むと僕に向かって投げつけた。
「うっ」
その本は見事に僕の額に角から命中して、僕の足元に音を立てて落下した。
本の衝撃と傷の痛みに僕はセブルスから手を離して、セブルスはその隙に杖の方へと走った。
僕は自分の杖を取り出すと、丁度杖を構えたセブルスに向かって呪文を唱えた。
「エクスペリアームス!」
セブルスの体は杖ごと吹っ飛ばされて、背後の机に背中から突っ込んだ。
相当の痛みがあったようでセブルスは小さく呷いて動かない。
僕はそれを見て軽く微笑すると、警戒しながらもゆっくりとセブルスに近付いた。
僕がセブルスに触れようと思い手を伸ばしたときに、セブルスは飛び起きて杖を構えようとした。
そんなものは僕は当然予測していた為に、伸ばしていた手でセブルスの腕を素早く掴むと捩りあげた。
「うぁ……」
セブルスは小さく声を上げると手を震わせて杖を力なく床へと落した。
僕はセブルスの杖を蹴って手の届かないところへ転がすと、平手でセブルスの頬を強めに打った。
静かな図書室に、乾いた音が響いた。
セブルスは唇を切ったらしく口の端から鮮血を流した。
それでもなお、セブルスは強い目をして僕を睨み続ける。
それは、たんに加虐心を加速させるだけなのに。
「本当に、君は……」
どうしてこれほどまでに、僕が期待した通りに動いてくれるのだろう。
おかげで君への愛しさは増すばかりだ。
「愛してるよ」
僕はセブルスの顎を掴むようにして固定すると口付けた。
少し開かれた隙間から舌を滑り込ませると、僕の口内に鉄の味が広がった。
「やめっ……」
セブルスは何度キスを重ねても一向に上手くならない。
苦しそうに顔を歪めると僕の腕に縋りついて食い込む程強く爪を立てた。
少し長めだったセブルスの爪は僕の皮膚を薄く裂いて血を滲ませた。
僕はセブルスの上唇に強く噛みついて、僕の腕と同じ様に皮膚を薄く裂いた。
傷口を軽く吸い上げると、キツく瞑ったセブルスの瞼が小さく震えた。
「……っん」
わざと音をたてて唇を離すと、紅く染まった唾液が糸を引いて直ぐに切れた。
僕はセブルスの首筋を吸い上げて朱い痕を残すと、ネクタイに手をかけて外した。
セブルスは肩で息をついて、相変わらず僕を睨み続けていたが抵抗をやめた。
「もう、終しまい?」
からかうように耳元で囁いたら、セブルスの肩がビクリと震えた。
寮に戻ると、シリウスが珍しく本を読んでいた。
「お前、また傷増えてるぜ」
「うん、だろうね」
シリウスは部屋に入ってきた僕の顔を見るなりそう言った。
思い当たる節はむしろありすぎる程にあったので適当に返して笑っておく。
「またセブルス関係か?」
「大正解。君も鋭いね」
「鋭いもクソも、お前が怪我するのセブルスか俺相手だけだし」
「まあね。よく解ってるじゃないか」
シリウスはさして興味もなさそうに足を組み直すとまた読みかけだった本に目を落とした。
その分厚い本に目をやると、最近までリーマスが読んでいたものだと解った。
そういえば面白いからと僕も読むように勧められたが、生憎読書は趣味じゃないんだと断った記憶がある。
あの本は、こんなところに回ってきていたのか。
シリウスもそれほど読書が好きではないが、愛しい恋人のお勧めの本ならばと読む気になったのだろう。
「お前もよく飽きねぇな」
「惚れた弱味って奴じゃない?たぶん」
「よく言うぜ」
「あれ?君は身に覚えないの?」
「何が言いたいんだよ」
怪訝そうに眉を寄せるシリウスに、僕は別に?と言ってへらっと笑ってみせた。
シリウスはそんな僕の様子を見ると呆れたようにして溜め息をついた。
僕は、今度セブルスが僕に投げつけたあの本を借りて読もうかと思いふっと笑った。
「そういえばさ、お前何で毎回わざわざ怪我してくんの?」
「避け切れなかったから、かな」
「嘘つけ」
「あ、バレた?」
「バレバレだ」
シリウスには隠せないね、と声をあげて笑う。
だから幼馴染みという奴は厄介なんだ。
知らなくていいことまで直ぐに伝わってしまうしどうでも良いことにまで遠慮なく突っ込んでくる。
それでもシリウスは権力を持ちながら強制をしなかったから友達の中では一番好きな存在だった。
僕は仕方なく口を開いた。
「だってさ、ぞくぞくするじゃない」
「はぁ?」
「ほら、どうせ僕に逆らえないのに、必死で抗おうとして」
僕は先ほどの事を思い出して笑った。
必死で僕の手の内に落ちるまいと爪を立てて逆らって。
君が僕に逆らおうとすることも、作戦の内の一つと知らないでそうする様は滑稽以外のなにものでもないのに。
そうして、酷く愛しいのだ。
「ねぇ、力で抗う相手を力で捩じ伏せるのって快感じゃない?」
「俺には解らないな」
「精一杯の抵抗を肌で感じるとさ、凄いぞくぞくする」
「お前、ドSだろ」
シリウスは吐き捨てるようにそう言った。
僕はその台詞に思わず大声で笑ってしまった。
笑った拍子にセブルスがつけた爪痕が疼くように痛んで、僕は明日は何をしようかと考えた。
滲む血液、加虐心。
抗がう相手を手中に貶める快感。
「そんなの今更だろう?」
END+++++
えっと……えっと……。
当初の予定よりジェームズが変態になりましたごめんなさい。
ジェームズは素で凄い事を考えちゃってるような変態だと思います。
しかもそんな妄想が幸せな変態だと思います。
って、そんな妄想をしている綾瀬が一番の変態だと思います。
SがドSキングに変貌した瞬間でした☆
多分このCPが一番R18に近い所にいます、うん。
(06.08.13)
- 3 -
[*前] | [次#]
■
■■■■
■■■■■
■■■■■■■■